新しい夫婦別姓訴訟

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私が担当させていただく予定の夫婦別姓訴訟を,山陽新聞で取り上げていただきました(山陽新聞2017年7月27日付記事より)。

 

 

 

「別姓制度訴え,国を提訴へ,岡山,戸籍法の規定争点に

 

 

 

岡山市の事実上の夫婦が,夫婦別姓を名乗る戸籍法上の制度がないため法的な婚姻を結ぶことができず,精神的苦痛を負ったとして,国に約220万円の損害賠償を求める訴訟を起こすことが7月26日分かった。提訴は来年1月を予定している。

 

 

 

夫婦別姓を認めない民法の規定については最高裁が2015年に合憲と判断している。このため原告側は今回,戸籍法上の規定を争点化した。

 

 

 

代理人の作花知志弁護士(岡山弁護士会)によると外国人と結婚する日本人の場合は基本的に別姓となるが,1984年の戸籍法改正で同姓を名乗ることができるようになり,実質的に姓を選べる。

 

 

 

だが日本人同士の夫婦では姓を選べる制度がない点を問題視している。

 

 

 

訴状では「氏名権を尊重するための制度を日本人同士の結婚にだけ設けないことに合理的な理由はない」と指摘し「権利行使の機会を確保するために立法処置をとることが必要不可欠だ」としている。

 

 

 

作花弁護士は「民法ではなく,戸籍法の欠陥を論点にすれば,主張が認められやすいのではないか。夫婦別姓の潮流につなげたい」と話している。」

 

 

 

御紹介した記事は簡潔にまとめていただいていますので,少し敷衍してご説明しますと,実は「氏」には,民法上の氏と,戸籍法上の氏が,違っている場合があるのです。その場合の戸籍法上の氏を「呼称上の氏」と申します。

 

 

 

例えば,民法767条は,1項で結婚する際に氏を変えた者は,離婚する際に一旦旧姓に戻ることを規定し,さらに2項では,その者が離婚から3ヶ月以内に「戸籍法の定めるところにより届け出ることにより,離婚の際に称していた氏を称することができる」と規定しています。これは,民法上の氏は,結婚前の旧姓に戻るのだけれども,戸籍法上の「呼称上の氏」だけ,離婚の際の氏(婚姻の際の氏)に変えることができる,という規定なのです。

 

 

 

そのような手当を戸籍法が行ったのは,例えば大学教授の方が,結婚後に論文を婚姻の際の氏でたくさん書いた後で,離婚して旧姓に戻ると,婚姻の際の氏で書いた論文が旧姓では検索できなくなる等の仕事上の不都合が生じるために,戸籍法上は婚姻の際の氏を称することを認める,という趣旨です。氏名権に関する社会生活上の不都合を避けるための措置だということができます。

 

 

 

実はそのような氏名権に関する社会生活上の不都合を避けるための措置を,戸籍法は外に2つ認めています。それが,上の記事でも指摘されている,日本人が外国人と結婚した際に,民法上は夫婦別姓であるけれども,当事者が希望すれば戸籍法の氏を同姓にでき,さらには同姓にした当事者が離婚した後に,再び離婚の際の氏(婚姻の際の氏)を戸籍法上使用することができるという規定(戸籍法107条2項及び3項)なのです。

 

 

 

とすると,結婚と離婚についての場面は4つ考えられるところ(①日本人同士の結婚,②日本人同士の離婚,③日本人と外国人の結婚,④日本人と外国人の離婚),その内の②③④については戸籍法上の氏についての手当がされているのに対して,①日本人同士の結婚の場合には,民法750条で夫婦同姓にした後で,氏を変えた当事者が社会生活上の必要性から戸籍法上旧姓を使用したいと考えても,それを認める規定が設けられていないことになります。

 

 

 

それはまさに「法の欠缺」であります。憲法24条2項は,「離婚並びに結婚に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない」と規定されているのですから,②③④については戸籍法上の手当がされているのに対して,あえて①日本人同士の結婚の場合にだけ,戸籍法上の手当がされないことについて,何等合理的な理由はないように思います。

 

 

 

そのような観点からの主張が予想されているのが,今度私が担当させていただく予定の新しい「夫婦別姓訴訟」です。このブログでも,少しずつ同訴訟の詳しいお話をさせていただく予定です。