先日も御紹介した「宇宙旅行」についてのニュースに続いて,ヤフー・ニュースで今度は商標について,コメントを担当させていただきました。次のニュース記事です。


ヤフー・ニュース/その「商標」登録,ちょっと待った!「こどもの日」や「ひなまつり」は登録できる?



(以下が記事の内容となります)



その「商標」登録,ちょっと待った!「こどもの日」や「ひなまつり」は登録できる?(弁護士ドットコム5月27日配信)



商標登録の際に,参照しておくべきガイドラインはどうなっているのだろうか?



日本でいえば,「こどもの日」を商標として登録するようなものか――。米のウォルト・ディズニー社が,メキシコや中南米の伝統的な祝日である「死者の日」について,商標登録のために出願したところ,「文化は売り物ではない」と非難が殺到。5月12日に出願の撤回を発表する事態となった。



CNNなどによると,ディズニーの子会社ピクサーは「死者の日」をテーマにした映画を今秋公開予定で,スペイン後で死者の日を意味する「Dia de los muertos」について,米特許商標庁に商標登録の出願をしていた。



商標を巡るトラブルは,国内でも度々ニュースになっている。2003年には,阪神タイガースと無関係の男性が「阪神優勝」という商標を登録して問題化(後に無効)。



また05年には,2ちゃんねるで長く親しまれてきたアスキーアートを基にしたキャラ「のまネコ」が商標登録申請され,騒動となった(後に取り下げ)。



無関係の人の「阪神優勝」登録がまずいのはわかる。おそらく「こどもの日」もダメだろう。だが実際には常識だけでは判断できないケースも多々ありそうだ。商標登録の際に,参照しておくべきガイドラインはあるか。作花知志弁護士に聞いた。



●一般的な言葉は,そのままでは「商標」にできない可能性が高い



「まず,商標とは『商品』の『標識』となるマークです。少しかみ砕いて言うと,商品に付いている『○○』というマークを見れば,『これはあの会社が製造したあの商品だ』とわかるものですね。これを『商標の識別機能』といいますが,そういう役割を果たして,はじめて単なるマークが『商標』として保護されるのです」



―「こどもの日」はどうか。



「もし,商品に『こどもの日』というマークを付けても,『あの会社が製造したあの商品だ』と認識・識別してもらうのは難しいですね。単に『こどもの日向けの商品があるのだな』と思われるだけでしょう。」



つまり,『こどもの日』のような,一般的・日常的に使用されている言葉は,マークとして商標にしても『識別機能』が働きにくいと言えます。その意味で『こどもの日』は,商標登録が認められない可能性が高いのです。



ところが『こどもの日○○』のように,他の言葉が加われば,他の商品との識別機能が生じて,商標登録が認められる可能性も出てきます」



―新しく商標を考えるときには,どうすれば良いのか?



「特許庁の電子図書館での検索が参考になるでしょう。ただし,商標として認められるかどうかというのは,このように微妙な問題で,専門家の判断が不可欠でしょう。トラブルを避けるためにも,弁理士や弁理士資格を有する弁護士など,専門家に相談をされることをお勧めします」



試しに検索してみると,「こどもの日」は無かったが,「ひなまつり」は既にある有名なメーカーによって商標登録がなされていた。確かにこれは,判断の難しい微妙な問題と言えそうだ・・・・。



[取材協力弁護士]

作花知志(さっか・ともし)弁護士

岡山弁護士会,日弁連裁判員本部,日弁連国際人権問題委員会,日本航空宇宙学会,国際人権法学会などに所属

弁理士資格も有している

事務所名:作花法律事務所

事務所URL:http://sakka-law-office.jp/





(ヤフー・ニュースは以上です)





商標は,その名のとおり「商品」の「標識」です。商品がどの会社が作ったかを一目で識別するためにつけられる「マーク」です。



確かに商標は,単なるマークではありますが,多くの人に受け入れられるマークを生み出すことができれば,そこから多くの利益も生み出すことができることになります。その意味で商標は,現在の経済社会において,欠かせない存在となっているのです。


では,そのような経済的な側面のみを見ると,商標とは単に利益を,そしてお金を生み出す手段にすぎない,という風にも思えるのですが,実は決してそうではないように,私は思っています。


商標も法により生み出された権利であり,法が紙に書かれただけでは決して動き出すことはなく,社会の正義感や思いに支えられないと動きだし始めないことからすれば,商標という権利も,やはり社会の正義感や思いに支えられて初めて,その社会的役割を果たすのではないでしょうか。



上のヤフー・ニュース内でも引用されている,アメリカのウォルト・ディズニー社が,メキシコや中南米の伝統的な祝日である「死者の日」について,商標登録のために出願したところ,「文化は売り物ではない」と非難が殺到し,結果的にウォルト・ディズニー社が商標の出願の撤回した事件は,そのことを象徴的に表しているように思います。