東日本大震災により被害を受けられた皆様に,心からお見舞いを申し上げます。
6月18日(土)に,広島被害者支援センター主催のシンポジュウムに行ってきました。シンポジュウムでお話をされたのは,小林美佳さんという女性の方です。
小林美佳さんは,2000年8月に性犯罪被害を受けた方です。その被害の状況,その後の警察等で受けた対応,家族の受け止め方とその変化などを,2008年4月に『性犯罪被害にあうということ』(朝日新聞出版)としてまとめ,実名で発表されました。
その本の反響は大きいものでした。例えば,性犯罪を犯した被告人に弁護人が本を差し入れて,被害者の感情を考えてもらう弁護活動がよく行われるのですが,現在では小林さんの本はそこで用いられる代表的な存在となっています。
その後小林さんは,裁判員裁判が開始された際に,全国で初めて行われた性犯罪の裁判員裁判を傍聴された感想などを書かれた『性犯罪被害とたたかうということ』(朝日新聞出版)を2010年に発表されています。
今日の講演は,小林さんが性犯罪被害に遭った経緯から,お話が始まりました。
その後の警察で受けた対応からさらに傷つけられ,思い切って話をした家族からも,傷つく対応をされたそうです。
事件後の小林さんは,通勤の電車で他の人と一緒に乗っていること自体ができない状態となり,一駅ごとに電車を降りていたそうです。1時間くらいで着くはずの勤務先には,3時間以上かかって通っていたそうです。
そのような被害に遭われた小林さんでしたが,「性犯罪に遭った私は汚い存在なのか」と思い,もし社会に性犯罪被害者をそのような目で見る面があるのなら,自分がそのような社会を変えたいと思われたそうです。そして上でご紹介しました本を発表されたのです。
その本では,実名だけでなく,ご自身の写真も掲載されているのですが,その理由について小林さんは,「仮に社会に性犯罪被害者を汚い存在であるという目があるのなら,『小林美佳』という名前だけ出して写真を載せなければ,全国の小林美佳さんに迷惑がかかると思ったからです」と説明されたのです。
とても辛い思いをされたのに,自らの経験から,他の辛い思いをされている人を救おう,社会を変えようとされる小林さんの姿に,大変感銘を受けました。
人の心は,とても繊細で,とても傷付きやすいものです。でもその一方で,人の心は,人が思っている以上に,私達自身が思っている以上にとても強いものなのだ,ということを感じた講演会でした。