人生で初めて南半球に入った時、機内から見えたその海の青さを、まさに「真っ青」な青を、私は今でもはっきりと思い返すことができます。写真で見たままのグレートバリアリーフは、サンゴ礁がほのかに白く、太陽の光をうけ光り輝いていて、私の異国への訪問を歓迎してくれているような、そんな優しいほほえみのようでした。



オーストラリアのブリスベン空港に降り立った私たちは、そのまま大型バスに乗り込み、研修先の学校に向かいました。そこは小学校から高校までの、比較的裕福な家庭の子供たちが通う、プロテスタント系の私立学校でした。


日本で私たちが通っている学校の何個分あるだろうかと思うほどの広大な敷地の中に、立派なラグビー場や競泳プール、体育館や図書館などがあり、そのスケールの大きさに、日本人一同、心底たじろぎ、溜息と歓声が入り混じった変な声をあげてしまいました。




学校に到着して間もなく、ホームステイ先の家族とのご対面式がありました。

私を受け入れてくれたのは、娘3人とママ、パパの5人家族。8歳、14歳、16歳の子供たち全員が、研修先の学校に通っていました。一家の家は、学校から車で30分ほどのビーチに近い静かな住宅街の中にあり、プールはないものの、草木が茂った大きな庭と、リビングには10人座れる大きなダイニングテーブルがある、かなり大きな家に住んでいました。


ビーチに近いというだけあって、娘たちは朝起きると、一波乗ってから学校に向かいます。もちろんパパも同様で、サーフィンをしてから出社。エクストリーム出社もいいとこです。


学校での対面式からすぐに車に乗りこみ、家へ向かう私たち。運転席にには、ママ。助手席には一番上のお姉さんキャサリン(16)、後部座席には私、一番下の娘エルザ(8)、真ん中の娘リジ―(14)が乗っていました。


ママはとても明るい方で、がんがん話しかけてきます。私は、なんとか聞き取れはするものの、なんて返したらいいのか言葉が出てこず、しどろもどろ。笑顔を返すしかできません。


あれ、なんか違うぞ、
あれ、なんかイメージと違うぞ、

私は内心、かなり焦っていました。




あれ、話、よくわからないや。

なんて言ってんだ?なんて言えば良いんだ?


あれ、話、盛り上がらないぞ、何か話さなきゃ。
おもしろいこと言わなきゃ。笑わせなきゃ。

あれ、なんて言えばいいんだ?

てか、なんて言ってんだ?



ホストマミーだけが一方的に話し続ける車内で、私は一人、縮こまっていました。頭はまっしろ。娘たちは、なんだかけだるそうで、「あんたなんかに興味なし」といった風。私の脇からは変な汗がどばどば出てきていました。



ホストの家についた後は、マミーが一通り家の中を案内してくれている最中も、私の頭はまっしろ。ママの話をただ笑いながら聞いて、返す言葉もとくになし。ここでも、会話とは反比例して、汗だけがどばどば出てきていました。


あれ、私、自分が思っていたほど、うまくできないかもしれない。
自分が思っていたほど、社交的ではないのかもしれない。
いつもの勢い、どこへいったんだ、あれ。


その時、自分の実力に初めて疑問を感じたのでした。これは、やばいぞ、と。




そして、その後の2週間で、その疑問は確信に変わっていったのでした。





つづく。


~次回、「疑問が確信に変わるとき」







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