「教授と美女」
(原題:Ball of Fire)
1941年12月2日公開。
日本未公開。
ゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックの主演コメディ。
興行収入:$2,641,000。
原作:ビリー・ワイルダー、トーマス・モンロー『From A to Z』
脚本:チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー
監督:ハワード・ホークス
キャスト:
- バートラム・ポッツ教授 - ゲイリー・クーパー
- シュガーパス・オーシェイ - バーバラ・スタンウィック
- ガーカコフ教授(数学) - オスカー・ホモルカ
- ジェローム教授(地理学) - ヘンリー・トラヴァース
- マーゲンブルック教授(生理学) - S・Z・サカール
- ロビンソン教授(法律学) - タリー・マーシャル
- クィンタナ教授(歴史学) - レオニード・キンスキー
- オドリー教授(植物学) - リチャード・ヘイデン
- ピーグラム教授(文学) - オーブリー・メイザー
- ミス・トッテン - メアリー・フィールド
- 家政婦ミス・ブラッグ - キャスリーン・ハワード
あらすじ:
時は1941年。
8人の教授がニューヨークにあるダニエル・トッテン財団が所有する館にこもり、AからZまでの百科事典の編纂をしていた。
彼らの身の回りの世話は家政婦のブラッグが担当している。
既に9年が経過しており、さらにあと3年は掛かりそうである。
財政的支援者であるトッテン財団の娘と助手のラーセンが館を訪れ、早く事典を完成させるように強く要求する。
しかし、ポッツが「始めた以上は全力を尽くして仕上げます」と言うと、彼に好意を抱くトッテン嬢は語気を弱めてしまう。
2人が帰るのと入れ違いに、図書館か学校と勘違いした陽気なゴミ収集人が小遣い稼ぎ目的でチャレンジしているラジオのクイズ番組の質問の答えが分からないので教えてほしいと館を訪ねてくる。
彼は「マウス」(女)、「スマッカルー」(ドル)、「ホイトイトイ」(不明)といった教授たちが知らないいくつものスラング(隠語、俗語)を駆使する。教授の中でも最も若く、言語学を専門とするポッツは時代に取り残されてしまうと危機感を募らせ、スラングの調査を行うために一人で街中に繰り出す。
ポッツはナイトクラブでもスラングの収集にいそしみ、そこで出会ったバーレスク・パフォーマーのシュガーパス・オーシェイが用いるスラングの語彙に興味を持つ。
ギャングのボスで殺人への関与が疑われる愛人のジョー・ライラックに関する情報を聞き出したい警察に追われているオーシェイは彼の調査に非協力的である。
その後、オーシェイは、考えを改めて教授たちが生活と仕事をしている館に逃げ込み、調査に協力することに決めた。
教授たちはオーシェイの色仕掛けに夢中になり、彼女とすぐに仲良くなる。
オーシェイは7人の教授にコンガの踊りを教え、女性として意識したことがあると明かすポッツには「ヤムヤム」(キス)の語の持つ意味を実演して見せた。
ポッツは百科事典の編纂に集中出来ないので、彼女に館から去ってほしいと伝える。
百科事典を完成させたら結婚をしようと話し、去る前に「もう一回ヤムヤムをお願いします」と懇願するポッツにオーシェイもまんざらでもない様子を見せる。
その後にオーシェイはポッツがプレゼントしたリチャード3世の台詞の引用文が刻まれた婚約指輪を受け取り、館に電話を掛けてきたオーシェイの父親と偽るジョーの計らいで二人はニュージャージー州で急遽結婚式を挙げることが決まる。
ニュージャージーに向かう一行だが、30年ぶりに運転したガーカコフは誤って道路標識に車をぶつけてしまい、その晩は道中のホテルに宿泊することになる。
ネジが緩んでドアのルームナンバーの数字がひっくり返り、オドリーの宿泊する9号室と間違えてオーシェイの宿泊する6号室に入室したポッツは暗闇の中で自分の言葉で新婦に対する正直な気持ちを告白し、彼女を感激させる。
ジョーとその手下がホテルに乗り込み、オーシェイとジョーの結婚式のために今まで教授たちを利用していたと知らせる。8人の教授は再び百科事典の編纂作業に集中することでオーシェイを忘れようとする。
しかし、ポッツを本当に愛するオーシェイがジョーとの結婚を拒み続けたために8人の教授と家政婦のブラッグ、トッテン財団の娘、その助手、ゴミ収集人は館に突入したジョーの2人の手下、パストラミとアズマによって一斉に人質にされてしまった。
ここで老教授たちはダモクレスの剣とアルキメデスがローマ艦隊を撃退した故事にヒントを得た逆襲を開始する。
一転して囚われの身となり、ゴミ収集車のゴミ入れに入れられたパストラミとアズマはくすぐりの拷問の末にオーシェイとジョーの居場所を明かす。
ポッツはジョーとの「ボクシング対決」に勝利した後の最後のシーンで、他の7人の教授が羨ましそうに眺める中、再会したオーシェイと「ヤムヤム」を交わしている。
コメント:
ある財団の援助を受け百科事典の編纂をしていた8人の教授たち。
ひとりの教授が俗語を調べようと偶然知り合ったバーレスクパフォーマーが同居することになり、恋に落ちるが…。
ゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックが主演したスクリューボール・コメディである。
10年近く館にこもり、百科事典を編纂する8人の教授たちと俗世間の情報を伝えるために招かれたバーレスクパフォーマーの関係が描かれる。
このバーレスクパフォーマーというのは、バーレスクダンスの踊り子のこと。
バーレスクダンスというのは、音楽に合わせて女性らしさを強調する動きをしたり、焦らしながら衣装を脱ぐチラリズムのテクニックで魅せたりするパフォーマンスだという。
単なるストリッパーとは違うようだ。
館を図書館か学校と勘違いしたゴミ収集人がラジオのクイズ番組の質問の答えを教えてほしいと尋ねてきたことから物語が展開し始める。
そして、クライマックスでは宿のルームナンバーの9が緩んでひっくり返って6になったために間違った部屋に入るというドタバタになっている。
バーバラ・スタンウィックが演じるシュガーパス・オーシェイという変な名前のバーレスクの女王が教授たちにコンガの踊りを教えるシーンもある。
若いポッツ教授と七人の老教授に口うるさい家政婦。
この平和な世界に火の玉が飛んできてポッツの心に火がついてしまう。
「火の玉」とは、バーバラ・スタンウィック扮するバーレスクダンサーだ。
教授たちが行っている百科事典の編纂事業がしっかりその展開に生かされているあたりはさすがビリー・ワイルダーである。
とにかく、バーバラ・スタンウィックがバーレスクパフォーマーに扮して教授たちに対してさまざまな色仕掛けをして夢中にさせるシーンは必見だ!
バーバラ・スタンウィックは、「レディ・イヴ」での演技もよかったが、本作でもコミカルな色香を発揮している。
「AFIアメリカ映画100年シリーズ」のアメリカ映画スターベスト100でゲイリー・クーパーとバーバラ・スタンウィックはそれぞれ男優部門と女優部門でともに11位に選ばれている。
後日、当ブログサイトでハリウッド俳優の個別レビューを予定している。