「三人姉妹」
(原題:Paura e Amore)
1988年公開。
イタリア・西ドイツ・フランス合作映画。
チェーホフの『三人姉妹』をモチーフに、それぞれの人生を生きる三人の姉妹を描く。
北イタリアの地方都市を舞台にした三姉妹を描く。
原作:チェーホフ『三人姉妹』
脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ、ダーチャ・マライーニ
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
キャスト:
ヴェリア:ファニー・アルダン
マリア:グレタ・スカッキ
サンドラ:ヴァレリア・ゴリノ
マッシモ:ペーター・シモニシェック
ロベルト:セルジオ・カステリット
フェデリコ:パオロ・ヘンデル
サブリナ:アニエス・ソラル
エリカ:ギラ・フォン・ヴァインターハウンゼン
あらすじ:
北イタリアの小さな大学都市パヴィア。
一年前の大学紛争の際に父親を射殺された三人姉妹の長女ヴェリア(ファニー・アルダン)は、父が学長をしていた大学で教鞭をとる女性解放運動家である。
彼女は同じ大学で天体物理学を教えるために10年ぶりに帰国した父の愛弟子マッシモ(ペーター・シモニシェック)に恋をしていた。
次女のマリア(グレタ・スカッキ)は喜劇俳優のフェデリコ(パオロ・ヘンデル)と円満な結婚生活を送っていたが、何か物足りないものも感していた。
18歳になったばかりの末娘サンドラ(ヴァレリア・ゴリノ)は、医学部入学を控え勉強に余念がない。
時が過ぎ、音楽家を志していたヴェリアの弟ロベルト(セルジオ・カステリット)は、恋人のサブリナ(アニエス・ソラル)と結婚し、銀行員になっていた。
ヴェリアの愛をマッシモは気付いてはいたが、彼の妻エリカ(ギラ・フォン・ヴァインターハウンゼン)を傷つけたくないヴェリアは、今以上の深い関係に踏み込めないでいた。
そのうちマッシモは、マリアと愛し合うようになってゆく。
ある夜マッシモの家を通りかかったヴェリアとサンドラはエリカと出会い、三人はすぐに意気投合。
エリカは生きることに対して自信を取り戻すようになる。
一方マリアもマッシモとの愛に人生の喜びを見い出すが、それを知ったヴェリアは彼女をエゴイストと罵った。
やがてそれぞれの人生を歩むことにした三人は、ロベルトに遺産分配を申し出るが、彼は全財産を投資に費やしていた。うまくいっていない妻との生活に悩むロベルトに、四人はいつしかそれぞれ異なった生き方をしていることに気づく。
サンドラは医字部の若い教師との間に愛を育むが、彼の自動車事故死であっけなく終りを迎える。
やがてマッシモも次第に明るくなってゆく妻のもとに帰っていった。
時の流れの中で、それそれが人生に幻想を抱き、幻滅を味わった。
それでも彼らは、また新たな現実に生きなくてはならないのである。
コメント:
原題の「Paura e Amore」とは、「恐怖と愛」である。
監督と脚本をつとめているマルガレーテ・フォン・トロッタは西ドイツの女流監督。
共同脚本をつとめたダーチャ・マライーニはイタリアの脚本家。
マルガレーテ・フォン・トロッタはドイツを代表する女性の俳優であり映画監督であり脚本家。
父親は画家。1942年にベルリンで生まれ、1960年代にパリに移り、女優としてライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『聖なるパン助に注意』や『悪の神々』、フォルカー・シュレンドルフの『ルート・ハルプファスの道徳』などに出演。また、
この頃から脚本執筆や短編映画の制作に携わるようになる。
1971年にはフォルカー・シュレンドルフと結婚し、1975年の『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』では共同監督を務めた。その後、1978年の『第二の目覚め』で単独での長編映画監督デビューを果たし、長編三作目の『鉛の時代』で1981年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。
名実ともにニュー・ジャーマン・シネマの仲間入りを果たす。
長女を演じたファニー・アルダンは、フランスの女優。
フランソワ・トリュフォーが、『隣の女』のヒロインに抜擢し、一躍脚光を浴びた。
続く『日曜日が待ち遠しい!』にも主演し、これが縁で、トリュフォーとはプライベートでもパートナーとなり、1983年に娘が生まれた。
イタリア語、スペイン語、英語も流暢なため、イタリア映画、スペイン映画、アメリカ映画にも登場している国際派女優である。
次女を演じたグレタ・スカッキ。
父親はイタリア人、母親はイギリス人。
イタリア・ミラノで生まれ、ロンドン、オーストラリアで育ち、18歳の時にロンドンの舞台に端役として出演しはじめる。1982年にドイツ映画に出演。『熱砂の日』などのイギリス映画や『コカコーラ・キッド』といったオーストラリア映画に出演した後、ハリウッドに移った。
知的でセクシーなブロンド女性を演じることが多く、『氷の微笑』は当初スカッキにシャロン・ストーンの演じた役のオファーがあったが、これを断っている。
1993年に私生活のパートナーだったヴィンセント・ドノフリオと別れたことを契機にロンドンを拠点に移し、アメリカ、イギリスやオーストラリアのみならず、母国のイタリア、フランス語やドイツ語に堪能であることから、フランスにおいて、映画、テレビドラマ、舞台、社会活動にと幅広く活動している。
1996年のHBO制作のテレビ映画『ラスプーチン』(ウリ・エーデル監督作品)ではアレクサンドラ・フョードロヴナを演じ、1996年度のエミー賞において、リミテッドシリーズ/テレビ映画部門の助演女優賞を受賞した。
三女を演じたヴァレリア・ゴリノ。
「子供は何でも知っている(小さな炎)」で有名になった。
イタリア・ナポリ出身の女優、監督である。
父親はイタリア人ジャーナリスト、母親はギリシャ人の画家。
イタリア語、英語、フランス語、ギリシャ語を話す。
イタリアのみならず、国際的に活躍し、カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭など多くの受賞歴がある。
作品そのものより、監督や、三人姉妹を演じた3人の女優たちの存在感がすごい。
1980年代になると、もうイタリア映画はイタリア人俳優が演じるという時代は終わって、世界中から好みの役者を招いて制作する時代になってきている。
また、イタリア人の俳優もどんどんハリウッドなどで活躍し出している。
欧州と米国との距離が一気に縮まって、映画界では世界は一つの様相を呈してきている。
日本人は言葉の壁を越えられず、令和の時代になっても、日本列島内でちまちまやっているが。
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