谷崎潤一郎の映画 「堕落する女」 谷崎の戯曲「愛すればこそ」の映画化! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「堕落する女」

 

堕落する女

 

 

1967年6月28日公開。

上流階級のお嬢さんとチンピラとの不思議な愛を描いたかくれた名作の映画化。

 

原作:谷崎潤一郎「愛すればこそ」

脚本:新藤兼人 

監督:吉村公三郎 

 

キャスト:

桑野みゆき 澄子
細川俊之 山田礼二
田村高廣 三好数馬
高橋悦史 圭之助
水戸光子 牧子
神田隆 刑事
五月マリ 秀子

 

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あらすじ:

由緒ある家柄の橋本家の令嬢・澄子(桑野みゆき)は、大学教授である三好数馬(田村高廣)という婚約者がありながら、ピアノ教師の山田礼二(細川俊之)のもとに走ってしまった。

母・牧子(水戸光子)と兄の圭之助(高橋悦史)は呆然としてしまった。

しかし或る日、澄子が憔悴して戻って来た。

礼二の、なぐるけるの乱暴と女狂いにいやになって、逃げて来たというのだ。

圭之助は三好に妹を救ってくれと頼みこんだ。

澄子を愛する三好は、快よく澄子を許してやるのだった。

アパートにとり残された礼二は、窃盗罪で警察にあげられた。

すべては解決したかにみえたが、警察に礼二があげられたと知った時から澄子の態度がおかしくなった。

“礼二がかわいそうだ、礼二には私が必要なんだ”と、口走り、またもや礼二のもとに去っていった。

一年が経過した。

礼二は、ストリップ劇場のピアニスト、澄子は、浅草裏のバーのホステスになりさがっていた。

稼ぎは全部礼二がとりあけていた。

そんな頃、三好と澄子が偶然会った。

それを知った礼二は、三好をたらしこんで金を取れと澄子に命令した。

三好と澄子はたびたび逢い、やがては温泉マークに泊まるようになった。

澄子をそそのかしたものの、三好と澄子の関係がわかると、礼二は半狂乱になって澄子を痛めつけた。

初めて嫉妬にくるった礼二をみて、澄子はこの時礼二の本当の気持ちを知る思いだった。

澄子は三好をさけて、礼二と一緒に浅草を引っ越した。

しかし、その場所に三好が訪ねて来た。

澄子をカーテンの蔭にかくして、礼二が三好に会った。

三好は澄子と関係の出来たこと、それはまったく自分の罪であるが、心から澄子を愛していることを告げ、澄子を幸せにするためにも礼二に別れてほしいと頼んだ。

冷笑をうかべながら聞いていた礼二は、澄子が、君と僕のどっちを愛しているかみせてやろうと言い、澄子が三好と泊ったことは自分の命令でやったこと、外にも何人かの客をとっているかを話すのだった。

そして、信じようとしない三好の前に、澄子をカーテンの蔭から呼び出してみせ、それが事実であることを澄子の口から言わせた。

三好はがっくりとして帰っていった。三好の姿が消えるとそこには礼二と澄子の抱きあって泣く姿があった。

 

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コメント:

 

原作は、谷崎潤一郎の初期の戯曲「愛すればこそ」である。

 

これも「耽美主義」の一種だといってよいだろう。

 

由緒ある家柄のお嬢様が、よりによってチンピラのようなピアノ教師に夢中になり、暴力と浮気に嫌気がさして一時は実家に戻るが、その男が警察に捕まると、かわいそうだと男の元に戻り、完全に男の奴隷になってしまう。

 

これも「耽美主義」なのだ。

 

男女の愛というのは、見かけ上の地位や金や家柄などとは全く関係ない。

そんなものとは無関係で、男の色気に惚れてしまった女にとっては、その男から無理難題をふっかけられて、もっと燃えてしまうということもあるのだ。

 

やくざがなぜ女からモテるのかを知る手掛かりになりそうな作品である。

 

その秘密の部分を谷崎潤一郎は完全に理解していたのだ。

 

おそらく谷崎が東映の大人気シリーズ「極道の妻たち」のような作品を書いたら、絶対に素晴らしい作品になったであろう。

 

この映画は、残念ながらソフト化されていないようだ。

 

映画館での上映も数年前にシネマヴェーラ渋谷で上映されたことが確認できるが、その後は不明である。

 

今後動画配信されたらうれしいが。