「最後の女」
(原題:L'ultima donna)
1976年イタリア公開。
日本未公開。
典型的なエゴイストの男を風刺した異色作。
1977年セザール賞主演男優賞ノミネート(ジェラール・ドパルデュー)。
脚本:マルコ・フェレーリ、ラファエル・アズコナ
監督:マルコ・フェレーリ
キャスト:
オルネラ・ムーティ:ヴァレリア
ジェラール・ドパルデュー:ジョヴァンニ
ミシェル・ピッコリ:ミケーレ
レナート・サルヴァトーリ:ルネ
ジュリアナ・カランドラ:ブノワ
ゾウゾウ:ガブリエル
ベンジャミン・ラボネリー:ピエリーノ
あらすじ:
技術者ジョヴァンニ(ジェラール・ドパルデュー)が働いていた工場が閉鎖されることになった。
彼はこの決定に憤慨し、同僚のレナードと議論したのち、託児所に自分の息子ピエリーノ(ベンジャミン・ラボネリー)を迎えに行った。
彼の妻は、男性優位論者でエゴイストの夫に愛想を尽かし、息子を置いて家出して、ウーマンリブの運動に参加してしまったのだ。
託児所で彼は、ヴァレリア(オルネラ・ムーティ)という女と出会った。
彼女は金持ちの愛人ミケーレ(ミシェル・ピッコリ)とヴァカンスに行く予定だったが、気が変わって、ジョヴァンニの家で過ごすことになった。
だが、ジョヴァンニは、嫉妬深くエゴイストである上に、飽くなき性的欲求の持ち主でもあった。
ヴァレリアは、彼の息子ピエリーノをかわいがったが、そのことにジョヴァンニは嫉妬する。
ヴァレリアが愛人ミケーレと連絡を取ったことを知ると、ジョヴァンニは逆上して彼女と言い争った。
そして、ヴァレリアがジョヴァンニと別れようとしたが、ミケーレにはもう新しい恋人が出来ていた。
こうしてヴァレリアとジョヴァンニは、もう一度やり直すことになった。
しかし、ピエリーノがヴァレリアになつき出し、ヴァレリアがなんとジョヴァンニの妻や友人たちとも親しくなると、ジョヴァンニだけが一人孤立してしまう結果となった。
ある日、ジョヴァンニは、裸のままで台所に立ち、ボトルのワインを飲み干して、「自分はもう存在しない家族の家長の一人である」と繰り返した後、調理用の電気ナイフで自らのペニスを切り落とした。
彼は痛みで叫び、泣き叫ぶ息子ピエリーノを抱えたヴァレリアも叫ぶ。
コメント:
もうあり得ないストーリーとなっている。
プライドが異常に高いエゴイストの男が、破滅に向かって突進し、凄惨な結末を迎えるという映画である。
エンドで、主人公が絶望のあまり、自分の急所を切断するショッキングのシーンが、こちら:
しかし、主人公・ジョヴァンニを演じたジェラール・ドパルデューは、この迫真の演技によって、1977年のセザール賞で、主演男優賞にノミネートされた。
ジェラール・ドパルデューは、1948年、フランスのシャトールー出身。
子供の頃は非行に走り、刑務所に入ったこともあった。
勧められて演劇の道に入り、16歳で国立民衆劇場に参加して学んだ。
1960年代末に舞台、TVなどに出演しはじめる。
1974年の『バルスーズ』で脚光を浴び、以後数多くの映画賞に輝いた。
日本では、『カミーユ・クローデル』のロダン役、『シラノ・ド・ベルジュラック』のシラノ役や、『1492 コロンブス』におけるコロンブス役などが有名である。
監督をつとめたのは、マルコ・フェレーリ。
マルチェロ・マストロヤンニ主演の「最後の晩餐」など異色作が多い。
とにかく、本作は日本未公開になったままであることが理解できる、異色中の異色のぶっ飛び映画である。
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