イタリアの映画 「カサノバ」 フェリーニによる性豪・カサノバの人生を描いた異色作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「カサノバ」

(原題: Il Casanova di Federico Fellini)

 

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「カサノバ」 全編

 

18世紀のイタリアを代表するプレイボーイの派手な生きざまと虚しい最後を描いた傑作。

 

脚本:フェデリコ・フェリーニ、ベルナルディーノ・ザッポーニ

監督:フェデリコ・フェリーニ

 

キャスト:

カサノバ:ドナルド・サザーランド

マッダレーナ:マルガレート・クレメンティ

ゼルダ:ダニエラ・ガッティ

アンナマリア:クラリッサ・ロール

デュルフェ候爵夫人:シセリー・ブラウン

アンリエット:ティナ・オーモン

 

Casanova de Fellini – Autour des Auteurs

 

あらすじ:

18世紀中盤のヴェネチア。

人々はカーニバルの喧噪の中で、水面に現われた巨大な女神モーナの頭像を驚異の目で見守る。

仮装して人々の中に交っていたカサノバ(ドナルド・サザーランド)は、見知らぬ女から手紙を受け取った。

それはマッダレーナ(マルガレート・クレメンティ)という尼僧からの呼び出しの手紙だった。

指定のサン・バルトロ島に着いたカサノバを、マッダレーナはフランス大使の別荘ヘと案内した。

彼女は、実は大使の情婦で、“のぞき”趣味の大使のためにカサノバとのセックスの情景を披露しようとしたのだ。

忠実な同行者である“黄金の鳥”を羽ばたかせ、期待に応えたカサノバは、大使の賞讃を得るのだった。

嵐になった海を帰途に向かっていたカサノバは、途中で宗教裁判所の審問官に逮捕され、邪悪な書物を保持しているという理由で鉛屋根の牢に留置されてしまう。

そこで伯爵夫人ジゼルダ(ダニエラ・ガッティ)やお針娘のアンナマリア(クラリッサ・ロール)との甘い昔の思い出に耽るカサノバ。

遂にその牢を脱出し、ヴェネチアからパリに向かったカサノバは、デュルフェ候爵夫人(シセリー・ブラウン)のサロンで、神秘的な降神術や魔術に興味を持つ人々と接触する。

2年後、彼は運命の女アンリエット(ティナ・オーモン)とフォルリの宿で出会い、最高の時を過ごすが、それも束の間のことだった。

ロンドンで、娼婦の母娘に屈辱を味わされ自殺まで考えたカサノバは、その瞬間に巨大な女の影を見る。

彼女の暖かさで気を取り戻したカサノバはそのままローマを訪れた。

そこでは御者と“性力”競争をする次第となるが、見事勝ち、さらに名を高めた。

スイスのべルンを経て、ドレスデンで彼は母親と再会するが、彼女は愚痴を言うだけで彼から去って行くのだった。

そして数年が過ぎ、冬のボヘミア。

老いたカサノバはドゥックスのヴァルトシュタイン伯爵の城に、図書室の司書としてわびしく寄居する身になっていた。

しかし、今も、彼は思っていた。愛し合った数々の女たちのことを。

そして、美しい人形といつまでも踊る自分自身の夢のような姿を……。

 

 

Fellini's Casanova | Il Casanova di Federico Fellini | Federico Fellini |  1976 | Moving image, Cool costumes, Elizabethan era

コメント:

 

18世紀ヨーロッパの歴史上の人物であり、晩年の大著〈回想録〉でも知られるジャコモ・カサノバの絢燗たる女性遍歴と頽廃した宮廷生活を描く。

 

晩年に自伝『我が生涯の物語』を残した、性豪として有名なジャコモ・カサノヴァの波乱に満ちた人生を、フェリーニ監督が映画化した作品。

 

ジャコモ・カサノヴァ(Giacomo Casanova、1725年4月2日 - 1798年6月4日)は、

ヴェネツィア出身の術策家(aventurier)であり作家。その女性遍歴によって広く知られている。

 

Histoire de ma vie I, II, III by Giacomo Casanova | Goodreads

 

彼の自伝『我が生涯の物語』(Histoire de Ma Vie)によれば、その生涯に1,000人の女性とベッドを共にしたという。

いわゆる「千人切り」だ。

 

ヴェネチア出身の伝説の色男カサノバの生涯を女性関係にスポットを当て、栄光と衰退までを描く。

作品中で驚くほどのバリエーションをもって、女性と体を重ねるカサノバ。

それは聖職者との行為、他人に覗き見られるもの、夜這い、熟女、何回性交できるかの競い合い、乱交、覗きなどなど。

しまいには美しい女性のからくり人形とも性交するほど。

 

この栄光時代のカサノバが終始滑稽に描かれている。

男根の象徴なのか、行為中に終始伸び縮みする鳥の置物などはその筆頭である。

だが、最後の人形との行為は、彼が女性に対して求めたもの、女性の「美」というものだけを抽出された人形に対する偶像崇拝に近いものであり、冷たい人形にぬくもりを求める様にはなにか物悲しさを覚える。


老後に衰退し、当時の栄光からかけ離れた姿となったカサノバは若者からの嘲笑の対象となり果てている。

しかし彼のきらびやかな服は彼の誇りがまだ生きている証拠のように感じられた。

 

彼の生きた18世紀のヨーロッパ各国の宮廷や貴族社会を絢爛豪華なセットや衣裳で描いているが、それが素晴らしいほど、逆に彼の人生の末路の寂しさを強調しているようである。

 

ラストで死の境で彼は故郷ヴェネチアの夢を見る。

その中でかつて逢瀬を重ねたと思われる女性の幻が現れるが、彼女たちはそろってカサノバのもとから走り去ってしまう。

その夢の中でカサノバの手を取る唯一の女性こそがあの人形であり、二人はよりそうようにくるくると踊り、映画は幕を閉じる。

 

フェリーニの映画は最後まで観てはじめて作品の真意が理解できる気がする。

彼の求めた愛は崇高すぎたのか、愛に生きたカサノバの悲しい物語であった。

 

これは、耽美主義を表現しようとした谷崎潤一郎の作品にも通じるものがある。

 

この映画は、YouTubeで全編無料視聴可能。