「終着駅」
(原題:Stazione Termini)
1953年4月2日公開。
大ヒットした米伊合作映画。
ローマ市内の駅を舞台にした愛の別れの名作。
これも、イタリアの監督が制作したイタリア映画。
脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ、ルイジ・キアリーニ、ジョルジオ・プロスペリ
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
キャスト:
ジェニファー・ジョーンズ:メアリー・フォーブス
モンゴメリー・クリフト:ジョヴァンニ・ドナーティ
あらすじ:
米国人の若い人妻メアリー・フォーブス(ジェニファー・ジョーンズ)は、断ち切りがたい想いを残してローマの中央駅にやって来た。
彼女は妹の家に身を寄せて、数日間ローマ見物をしたのだが、その間に1人の青年と知り合い、烈しく愛し合うようになってしまった。
青年はジョヴァンニ・ドナーティ(モンゴメリー・クリフト)という米伊混血の英語教師。
彼の激しい情熱に、メアリーは米国に残してきた夫や娘のことを忘れてしまうほどだったが、やはり帰国する以外になすすべもなかった。
妹に電話で荷物を持って来るよう頼み、午後7時に出発するミラノ行の列車にメアリーは席をとった。
発車数分前、ジョヴァンニが駆けつけた。
彼はメアリーの妹から出発のことを聞いたのだ。
彼の熱心なひきとめにあって、メアリーの心は動揺した。
彼女はその汽車をやりすごし、ジョヴァンニと駅のレストランへ行った。
ジョヴァンニの一途な説得に、メァリーは彼のアパートへ行くことを承知したかに見えたが、丁度出会った彼女の甥のポール少年にことよせて、彼女は身をかわした。
ジョヴァンニはメアリーを殴りつけて立ち去った。
メアリーとポールは3等待合室に入って、次の8時半発パリ行きを待つことにした。
そこでメアリーは妊娠の衰弱で苦しんでいる婦人の世話をし、心の落ち着きを取り戻した。
ジョヴァンニは強く後悔して、メアリーを求めて駅の中を歩きまわった。
プラットホームの端に、ポールを帰して1人たたずむメアリーの姿があった。
彼は夢中になって線路を横切り、彼女のそばに駆け寄ろうとした。
そのとき列車が轟然と入ってきた。
一瞬早くジョヴァンニは汽車の前をよこぎり、メアリーを抱きしめた。
2人は駅のはずれに1台切り離されている暗い客車の中に入っていった。
しばらく2人だけの世界に入って別れを惜しむのも束の間、2人は公安員に発見され、風紀上の現行犯として駅の警察に連行された。
8時半の発車時刻も間近かに迫り、署長の好意ある計らいで2人は釈放された。
いまこそメァリーは帰国の決意を固めて列車に乗った。
ジョヴァンニは車上で彼女との別れを惜しむあまり、動き出してから飛び降り、ホームの上に叩きつけられた。
列車は闇の中に走り去っていった。
コメント:
1953年に製作されたイタリアとアメリカの合作映画。
主演は、ジェニファー・ジョーンズとモンゴメリー・クリフトというハリウッドスター2人。
監督は、ヴィットリオ・デ・シーカ。
ハリウッドの映画プロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックが映画『逢びき』に匹敵するメロドラマを作ろうと、イタリア「ネオレアリズモ」の巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督を招いて作りあげた恋愛映画の名作。
日本でも大ヒットした。
キネマ旬報ベストテン第5位。
日本で初公開される前は、題名と同じ意味を表す言葉は「終点」ぐらいしかなかったが、この映画の邦題から「終着駅」という新しい言葉が生まれたという。
今ではこの映画の題名のみならず、日常でも使われている。
外国映画の邦題から日常語になった同じ例として、戦前のフランス映画『巴里祭』がある。
イタリア語での原題「Stazione Termini」は、物語の舞台となったローマ・テルミニ駅(イタリアのターミナル駅の一つ)だ。
ヒロインのジェニファー・ジョーンズの衣裳デザインはクリスチャン・ディオールが担当した。
映画が始まると、別れのシーンから二人の恋は描かれる。
恋愛映画が恋の疑似体験であるならば、もっとも甘美な部分を省略して、別れのシーンを集中して映画化している異色作だ。
別れざるをえない二人の恋を90分、ほとんどリアルタイムで描いている。
モンゴメリー・クリフトとジェニファー・ジョーンズ。
この二人のベストの演技が光る作品だ。
不倫の映画だからダメという意見もあるようだが、不倫だから映画になるのだ。
やはり、不倫は文化だ!
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