「家族の気分」
(原題:Un air de famille)
家族内のいざこざを描くファミリーコメディ。
受賞歴:
モントリオール世界映画祭 審査員特別賞、観客最高人気賞。
セザール賞 助演男優賞(ダルッサン)、助演女優賞(フロ)、脚本賞。
脚本:アニエス・ジャウィ、ジャン=ピエール・バクリ、セドリック・クラピッシュ
監督:セドリック・クラピッシュ
キャスト:
ジャン=ピエール・バクリ:アンリ
ジャン=ピエール・ダルッサン:ドニ
アニエス・ジャウィ:ベティ
カトリーヌ・フロ:ヨヨ
クレール・モーリエ:母
ウラディミール・ヨルダノフ:フィリップ
あらすじ:
“フランスのシリコン・ヴァレー”と呼ばれる、コンピュータ工場の中心地になった、ブルターニュ地方のひなびた田舎町のカフェ、“静かなる父”。
メナール一家の長男アンリ(ジャン=ピエール・バクリ)が継いで、嫁のアルレットとバーテンダーのドニ(ジャン=ピエール・ダルッサン)で維持している。
次男フィリップ(ウラディミール・ヨルダノフ)はコンピュータ会社エクサテック社の重役で、妻ヨヨ(カトリーヌ・フロ)と2人の子どもがいて、妹ベティ(アニエス・ジャウイ)も同じ会社に勤める。
毎週金曜日の夜は、母(クレール・モーリエ)を招いて家族で食事に出かけるのが習慣だ。
今週の金曜はヨヨの誕生日で、しかもフィリップが夜7時のニュース番組でテレビ出演することに。
アンリは時間になってもアルレットが帰ってこないので、心配でたまらない。
家族たちが店に到着した頃、アンリにアルレットからの電話がかかってくる。
あなたに愛想をつかしたので、家出して1週間ほど考えさせてという。
アンリはショックを隠して黙っていようとするが、やがてアルレットの不在の真相がわかり、一家はレストラン行きを取りやめて、ここで誕生日を祝うと決める。
最初は穏やかだった家族たちだが、時間が経つにつれて関係がギクシャクし、お互いに罵り合うようになる。
子ども時代のトラウマ、日頃の不満など……。
家族の間で長く溜まっていた膿が噴き出したのだ。
やがては、言い争いに疲れた家族はそれぞれの家に帰っていく。
コメント:
仲良し家族が毎週集まる食事会の中で起こった口喧嘩を描いたアイロニカルなコメディ。
「猫が行方不明」「百科店大百科」のセドリック・クラピッシュ監督の長編第4作。
パリで8ヶ月のロングランを記録した95年モリエール演劇賞で最優秀喜劇賞受賞した同名舞台劇の映画化で、クラピッシュにとって初の原作ものとなる。
出演者もすべて舞台と同じ俳優で固められた。
フランスの家族とはこんなものだという親族の日頃のごたごたをエスプリを効かせて創り上げた大ヒット舞台劇の映画化作品であり、決して暗くならないファミリー喜劇である。
「別れろ、切れろは芸者の時言う言葉」というセリフが邦画にあるが、フランスという国は、とにかく個人主義が発達しており、価値観も人それぞれ、男女の違いや年代の違いもあって、実態は複雑らしい。
もうLGBTは当たり前になってきているし、世界中からあらゆる人種が移民しているので、もう大変だという。
こういうどたばたは、日常茶飯事だという。
話はちょっと異なるが、フランスでのゴシップに日本人が巻き込まれている。
最近、アラン・ドロンが日本人家政婦に金を渡したことで、子供たちが問題提起したというニュースがネットやテレビを騒がしているようだ。
日本で流されたニュースはこういう表面的な出来事だったが、実は真相は違うのだ。
ネットで流れたフランスの情報を直訳するとこうなる。
「7月5日、アンソニー、アヌーシュカ、アラン=ファビアン・ドロンが、父親・アラン・ドロンの女性仲間に対して法的手続きを開始した。
それには正当な理由があります。」
これは、2019年からアラン・ドロンと同居しているヒロミ・ロリンをモラルハラスメントと弱みの虐待でこう告発しているのだ。
「彼女は彼の代わりに応答し、彼のふりをして彼の郵便物を傍受しようとした。
彼女は子供たちがこれまでのように定期的に彼に会いに来ることを妨げている」
まるで、家政婦がアラン・ドロンと同居しているが、親密な家族のように勝手にアラン・ドロンのプライバシーに入り込んでいるという表現になっている。
では、このヒロミ・ロリンという日本人と、アラン・ドロンとはどういう関係なのか。
7月14日にYahooニュースに掲載された現地紙FIGAROの情報には、以下のようなものだ:
「アヌーシュカ、アントニー、アラン=ファビアンの弁護士・クリストフ・アイエラによれば、アラン・ドロンが弱っているところにヒロミがつけこんだ節があるとのことだ。
アントニー・ドロンはその後、単独でも告発をおこなった。
理由はアラン・ドロンの愛犬の虐待、弱者への暴力、モラル・ハラスメント、虐待、監禁。
関係者によれば、66歳のヒロミが支配力を行使しはじめたのは、俳優が2019年に脳卒中で倒れた以降だそうだ。
俳優が1971年に購入したロワレ県ドゥシーの広大な地所でふたりは同居を始め、ヒロミは彼の世話をした。
当初はアラン・ドロンの家族との関係もうまくいっていた。」
最近の、ある英語のネットニュースによれば、以下の通り:
「87歳のアラン・ドロンは、2021年、テレビ局「TV5モンド」のドキュメンタリー番組で、「ヒロミは私の療養中ずっとそばにいてくれました」と語っている。
ふたりは1990年代からの知り合いだ。
1992年、アラン・ドロンが主演したエドゥワール・ニエルマン監督の映画『カサノヴァの最後の恋』でヒロミはセカンド助監督として働いていた。
また、テレビドラマシリーズ『アラン・ドロンの刑事フランク・リーヴァ』(2003年)の現場にもいたようだ。
オンラインデータベースのIMDbによると、ヒロミは1980年代から1990年代にかけて、フランス映画のセカンドやサードの助監督を務めていた。
たとえば『3人の逃亡者/銀行ギャングは天使を連れて』(1986年)や『弁護士デュナンの衝撃』(1993年)、『不倫の公式』(1995年)などの作品に参加している。
アラン・ドロンのアシスタントや、メイクアップアーティストも務めたという。
ふたりは友情を育み、それは次第に愛へと変わっていった。
2021年6月末、仏「イッシパリ」誌の取材に俳優と親しい関係者がふたりの関係について「長い間、ふたりは単なる友人でしたが、時が経つにつれて、気持ちに変化が訪れました。ヒロミはアランの回復にまぎれもなく貢献しただけでなく、心の平穏をもたらしました」と語っている。
2021年9月10日に行われたジャン=ポール・ベルモンドの葬儀に、ヒロミはアランと参列した。
今年の5月には、アラン=ファビアン・ドロンの新作映画のプレミアにも連れ立って出席している。」
また、2年前の情報(英語)では、こんな記事も:
「日系人で66歳のヒロミ・ロランは、アラン・ドロンが2019年に心血管事故を起こして以来、アランと人生を共にすることになる。2021年のTV5モンドのインタビューで、アラン・ドロンは彼女を「日本人の伴侶」と紹介していた。
「本当の回復期の間、私はある人、つまり日本人の同行者に助けられました。彼女は私の世話をし、何か月も治療してくれました」と彼はカメラの前で説明した。」
ということは、アラン・ドロンとヒロミ・ロランとは、数年前から事実婚の状態にあるのだ。
それが気に入らないアラン・ドロンの子どもたちが色々な手で二人を引き裂いて、アランの遺産をしっかり手中に納めようとしているのだろう。
ことほどさように、フランスの家族関係というのは嫌らしいところがあるようだ。
日本でも、芸能界で有名な人たちの家族関係は同様かも知れないが。