わたしを離さないで 映画の感想
恋愛は雑味のするくらいでちょうどいい。 “純愛”なんてものがもし、本当にあったとしたら、それはガラスのように繊細で、胸がしくしく疼くような痛ましいものに映ると思う。
なんか粗筋書くとネタバレになるらしい。個人的には読んだほうが分かりやすいと思うけどなあ。伝わりにくい映画だから。まぁ各人の自由意志にお任せします。読むかどうかはこのブログ読んで判断すりゃ良いです。
臓器提供のための人間クローン技術が合法的な世界、臓器摘出用クローンは外界から隔絶された施設で生まれ、育ち、病院へと送られる。多くのクローンが三回以内の手術で生命を落とす。臓器摘出=『死』を定められた彼らは、施設の中で歓びも哀しみも楽しさえも知らず、まるで囚人のように暮らしているから、老人のように静かで、幼児のようにあどけない。『心から愛し合っているカップルには、数年間の提供猶予が与えられる。』一部のクローンの間でそんな噂が囁かれ始める。同じ施設に生まれ育った三人のクローンは、もう18歳になっていた。
原作は、日本生まれ英国育ちの英国人作家、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。ハリーポッターよろしく、長編小説原作の映画は情報量が多すぎるので、楽しんで観られる作品は稀少だ。筋を追うのが正直、辛い。ノルウェイの森もコケたらしいし、原作は短編くらいが良いのかもしれん。頭悪いせいなのか?(ちなみに純愛系っぽくみえますけど、性描写けっこう生々しいので注意。あとパンフはネタバレしまくりなので読まないように)
残念ながら『私離』も説明が少なく、粗筋っぽくまとめた上の段落ですら正しいのかどうか、自信が持てない。あと題材が重すぎて、軽い恋愛ものと勘違いしたカップルは間違いなく気まずい思いをすることになる。ズドンと一発感動させたり、思わぬドンデン返しに涙腺を炸裂させたり、ムシャクシャして通行人をぶん殴りたくなるような直球の映画ではなく、緩やかなテンポで特に盛り上がるわけでもなく終始静かで、終わった後に情緒が流れるみたいな感じの映画なので、退屈な人には退屈でしかない。たぶん映画でありながら小説読んでるみたいな感覚なのかな。万人受けはしないと思う。
ところで。僕は大学入学以来今まで、周りの人よりもほんのちょっとだけ多く映画を観てきたつもりでいる。五段階評価で五つ星をつけたのは、パーシー・アドロンの『バグダッドカフェ』だけで、星4.5の『ハウルの動く城』とか『オール・アバウト・マイ・マザー』『アイズ ワイド シャット』なんかがそれに次ぐ。星4つまでは映画の脚本、演技、映像、音楽、ストーリー、つまり外側の部分だけで判断できる。残りの星一個分は自分の嗜好だ。映画を構成する全ての要素に惚れ込んでしまうくらいの、圧倒的で訴えかけてくる異様な温度のナニモノか、それがあるかないのか。
例えば、ただの妄想が娯楽になるには相手に伝わらないといけない。娯楽が芸術になるには、伝えるまでもない美しさが流れている必要がある。そして名作と言われる作品には鑑賞あとの、ほんの30秒間でも良い、周囲の景色が今までと全く違うような感覚、つまりは人生に影響を与える力がある。それはそれぞれの持っている人生背景・特質に突き刺さるナニ・モノカだから、偏って当然で、逆に言えば誰もが挙げる『名作映画』なんてものは定義上、無難に選ばれた鈍い作品であると言ってもいい訳だ。デービッド・アンセンが似たようなこと言って古典をこきおろしてたから間違いない。(市民ケーンとか)
さて。『わたしを離さないで』この映画は信じられないほど単純なメッセージを発している。その恥ずかしくなるほど陳腐で、それもたった一言の主題が導くのは、この映画の持つ明確な『目的』だ。その目的は僕らの人生、これから先も、これまでも、今この瞬間ですら、慈しみ守り育てていかねばならない大切な、とても大切なものに直結している。
この映画を観終わって、この映画から解放されたとき、僕の胸の裏側にはこの映画の残した手跡がほんのりと残っていた。この映画は上映している1時間45分の間、そう強くない力で僕の心をずっと、そっと押し続けていたことに気がついた。どういうことかって?
僕はこの映画が好きだ。この映画に、恋してしまったらしい。
☆☆☆☆☆
原作

日の名残り /アンホプ

☆☆☆ カズオ映画第一作
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%AD
カズオ
http://movies.foxjapan.com/watahana/
公式サイト
ワード:私を離さないで 解説 批評 絶賛 評価
なんか粗筋書くとネタバレになるらしい。個人的には読んだほうが分かりやすいと思うけどなあ。伝わりにくい映画だから。まぁ各人の自由意志にお任せします。読むかどうかはこのブログ読んで判断すりゃ良いです。
臓器提供のための人間クローン技術が合法的な世界、臓器摘出用クローンは外界から隔絶された施設で生まれ、育ち、病院へと送られる。多くのクローンが三回以内の手術で生命を落とす。臓器摘出=『死』を定められた彼らは、施設の中で歓びも哀しみも楽しさえも知らず、まるで囚人のように暮らしているから、老人のように静かで、幼児のようにあどけない。『心から愛し合っているカップルには、数年間の提供猶予が与えられる。』一部のクローンの間でそんな噂が囁かれ始める。同じ施設に生まれ育った三人のクローンは、もう18歳になっていた。
原作は、日本生まれ英国育ちの英国人作家、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。ハリーポッターよろしく、長編小説原作の映画は情報量が多すぎるので、楽しんで観られる作品は稀少だ。筋を追うのが正直、辛い。ノルウェイの森もコケたらしいし、原作は短編くらいが良いのかもしれん。頭悪いせいなのか?(ちなみに純愛系っぽくみえますけど、性描写けっこう生々しいので注意。あとパンフはネタバレしまくりなので読まないように)
残念ながら『私離』も説明が少なく、粗筋っぽくまとめた上の段落ですら正しいのかどうか、自信が持てない。あと題材が重すぎて、軽い恋愛ものと勘違いしたカップルは間違いなく気まずい思いをすることになる。ズドンと一発感動させたり、思わぬドンデン返しに涙腺を炸裂させたり、ムシャクシャして通行人をぶん殴りたくなるような直球の映画ではなく、緩やかなテンポで特に盛り上がるわけでもなく終始静かで、終わった後に情緒が流れるみたいな感じの映画なので、退屈な人には退屈でしかない。たぶん映画でありながら小説読んでるみたいな感覚なのかな。万人受けはしないと思う。
ところで。僕は大学入学以来今まで、周りの人よりもほんのちょっとだけ多く映画を観てきたつもりでいる。五段階評価で五つ星をつけたのは、パーシー・アドロンの『バグダッドカフェ』だけで、星4.5の『ハウルの動く城』とか『オール・アバウト・マイ・マザー』『アイズ ワイド シャット』なんかがそれに次ぐ。星4つまでは映画の脚本、演技、映像、音楽、ストーリー、つまり外側の部分だけで判断できる。残りの星一個分は自分の嗜好だ。映画を構成する全ての要素に惚れ込んでしまうくらいの、圧倒的で訴えかけてくる異様な温度のナニモノか、それがあるかないのか。
例えば、ただの妄想が娯楽になるには相手に伝わらないといけない。娯楽が芸術になるには、伝えるまでもない美しさが流れている必要がある。そして名作と言われる作品には鑑賞あとの、ほんの30秒間でも良い、周囲の景色が今までと全く違うような感覚、つまりは人生に影響を与える力がある。それはそれぞれの持っている人生背景・特質に突き刺さるナニ・モノカだから、偏って当然で、逆に言えば誰もが挙げる『名作映画』なんてものは定義上、無難に選ばれた鈍い作品であると言ってもいい訳だ。デービッド・アンセンが似たようなこと言って古典をこきおろしてたから間違いない。(市民ケーンとか)
さて。『わたしを離さないで』この映画は信じられないほど単純なメッセージを発している。その恥ずかしくなるほど陳腐で、それもたった一言の主題が導くのは、この映画の持つ明確な『目的』だ。その目的は僕らの人生、これから先も、これまでも、今この瞬間ですら、慈しみ守り育てていかねばならない大切な、とても大切なものに直結している。
この映画を観終わって、この映画から解放されたとき、僕の胸の裏側にはこの映画の残した手跡がほんのりと残っていた。この映画は上映している1時間45分の間、そう強くない力で僕の心をずっと、そっと押し続けていたことに気がついた。どういうことかって?
僕はこの映画が好きだ。この映画に、恋してしまったらしい。
☆☆☆☆☆
原作
日の名残り /アンホプ
☆☆☆ カズオ映画第一作
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%AD
カズオ
http://movies.foxjapan.com/watahana/
公式サイト
ワード:私を離さないで 解説 批評 絶賛 評価