犬の門脈シャント(PSS) | 草村動物病院 「動物の診察室から」

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新潟市の草村動物病院のブログです。
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 12月10日、1頭のマルチーズが連れてこられました。その子の名前は「メルモちゃん」ちょうど1年前に生まれその日が誕生日でした。

 門脈シャントの疑いがあるとのことで、もし門脈シャントなら手術をしてほしいとのことでした。

 門脈シャントのことを少し説明します。

 消化管からくる静脈のことを門脈といい、門脈の血液には腸から発生するアンモニアなどの体に撮とっては有害の物質が含まれています。

 しかし、消化管からの門脈は1つに集まって肝臓に入ります。そして、肝臓は門脈が運んできたアンモニアなどの有害物質をきれいにします。きれいになった血液は肝静脈に入りるのです。

 門脈シャントは、門脈から分枝した普通はない血管が肝臓を通過せずに、直接静脈につながってしまうのです。その異常な血管をシャント血管と言います。

 門脈シャントは先天性の疾患です。症状は、他の犬に比べ発育が悪い。食が細く食べた後に元気ななくなる。よく胃腸障害を起こすなどです。

 肝臓に行く血液が少なくなるので、肝臓が小さくなり、血中アンモニアの値が高くなるとふらふらしてケイレン発作を起こします。

 診断は、食後の血中アンモニアと総胆汁酸の値を調べます。この値が高い場合には門脈シャントを疑います。

 そして、エコーの検査でシャント血管があるかを調べ、造影CT検査でシャント血管を確定するのです。

 治療は手術で、シャント血管を何らかの方法で遮断します。

 メルモちゃんの血液を調べると、アンモニアが250(正常は60以下)、総胆汁酸は140以上(正常は30以下)でした。

 レントゲンでも肝臓が小さくなっていました。

 そして、昨日CT検査を行い、門脈~後大静脈シャントが確認されたのです。メルモちゃんは検査後麻酔が覚醒してもふらふらしていました。

 アンモニアを下げる点滴で、今日は普通になっていますが手術が必要です。

 飼い主様はなるべく早くに手術を希望されていますので、16日(火)が手術予定です。

 メルモちゃん、頑張りましょうね。








可愛いメルモちゃんです。