●ビル・ウィザース (パート3)~クリエイティヴ・コントロールを巡って対立し引退した匠 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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●ビル・ウィザース (パート3)~クリエイティヴ・コントロールを巡って対立し引退した匠

 

【Bill Withers (Part 3) : Artisan Who Retired After Crashed With Music Industry】

 

人柄。

 

ビル・ウィザースの訃報が日本時間金曜(2020年4月3日)深夜に流れてから、SNSのタイムラインは、ウィザースであふれている。特にアメリカのファンのウィザースに関するコメントは胸を打つものが多い。

 

僕はウィザースには直接会ったことはないのだが、ドキュメンタリー『スティル・ビル』やその他のインタヴュー、彼を知る人からのいろいろな話で垣間見られる彼の人柄、人となりを見ていると、ウィザースと似たタイプの人たちを何人か思い浮かべた。

 

Just As I Am 僕、そのまま

 

まずはクルセイダーズのキーボード奏者、ジョー・サンプルだ。話し方や、考え方、哲学、生き方などがとても似たものを感じる。ウィザースはサンプルが書いた「ソウル・シャドウズ」を歌っているが、きっと、二人は意気投合したことだろう。

 

もう一組、同じアパラチアン山脈の炭鉱夫を父親に持つウーマック兄弟たちだ。ボビー・ウーマックやセシル・ウーマックらだ。

 

彼らの共通点は、普段は地道に仕事をし、浮かれたことはあまりしないということだ。しっかり地に足をつけ、生きている。

 

■作品と商品

 

ウーマックたちも、ウィザースも、サンプルも、みな1980年代のメジャー・レコード会社で、かなり厳しい扱いを受けていた。そして、それに耐えて、結果、インディに生きる道を求めることなる。ウィザースの場合は、白人A&Rマンと対立し、引退してしまう。レコード会社と対立した大きなアーティストといえば、プリンスだ。プリンスもウィザースの曲をカヴァーしている。

 

自分の気持ちを音楽に乗せて人々にいい「作品」を発表したいという欲求と、その音楽を「商品」としてたくさん売らなければならないメジャーのレコード会社ではどうしても、意識や方法がずれていく。

 

これは、今でもある程度同じだと思う。今はかなりアーティスト側が主導権を取って、クリエイティヴ・コントロールを獲得することはあっても、衝突は避けられない。

 

ウィザースは引退という道を選んだが、その後、ロック殿堂や、若手からのリスペクトでトリビュート・コンサートが行われ、再度注目を集めるようになった。

 

ドキュメンタリー『スティル・ビル』の中で、ラウル・ミドンを自宅スタジオに招いて曲を作っていた。あの曲は結局、発表されたのだろうか。同じくそのドキュメンタリーの中で、娘のコキーとともにも曲を作っていた。そのあたりも、未発表作品として御蔵入りになるのだろうか。

 

ウィザースは、音楽業界の中で「負けて」しまったのか。僕はそうは思わない。クレイジーで、数字だけ見るようになった音楽業界に、ウィザースから「さよなら」を言って身を引いたのだ。言ってみれば、音楽業界と僕らリスナーのほうが、ビル・ウィザースの新作を30年以上聞かせてもらえなくなったという意味で、我々の方が「負けた」のである。

 

音楽業界は引退したが、音楽の世界にはずっといて、制作意欲は持ち続けた。ミュージック・ビジネスとミュージック・ワールドという二つの世界。ウィザースは、ミュージック・ビジネスの住人にはなれなかっただけだ。

 

(ビルのA&R問題について、明日以降のブログで)

OBITUARY>Withers, Bill (July 4, 1938 – March 30, 2020, 81 year old)

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