●ジェームス・リプトン死去~テレビ番組『アクターズ・スタジオ・インタヴュー』創始者・司会者 | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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●ジェームス・リプトン死去~テレビ番組『アクターズ・スタジオ・インタヴュー』創始者・司会者

 

【James Lipton Dies At 93】

 

訃報。

 

日本でもNHKで放映されていた『アクターズ・スタジオ・インタヴュー』の企画立案・司会者でもあったジェームス・リプトンが2020年3月2日、ニューヨークの自宅で死去した。93歳。膀胱がんを患っていた。

 

俳優から出発し、ラジオのホスト(DJ)、イヴェント企画などをするうちに、演劇学校の授業の一環で始めようということだった俳優にインタヴューする講座をテレビ番組にして、これがヒット。20年を超える長寿番組となった。

 

ジェームス・リプトン

 

評伝。

 

ジェームス・リプトンは1926年(大正15年)9月19日、ミシガン州デトロイト生まれ。作家、俳優、教授、司会者。母ベティー、父ローレンスの元に一人っ子として生まれた。父ローレンス・リプトンはビート・ジェネレーションの作家、ジャーナリスト、グラフィック・デザイナーなどもこなした。だが、ジェームスが6歳の時両親は離婚、以後、ジェームスは母親に育てられる。

 

当初はニューヨークで弁護士になるべく勉強をしていたが、その後デトロイトのラジオ局でラジオ・ドラマに出演したり、テレビ・ドラマの脚本を書いたり、演劇や映画に出演したり、エンタテインメントの世界で活躍し始める。その頃の作品には1953年の『ザ・ビッグ・ブレイク』などがある。また、1967年ブロードウェイ・ミュージカル『シェリー!』にもかかわった。1968年には自身で書いた著作『アン・エグザルテーション・オブ・ラークスAn Exaltation of Larks』を出版。1983年には小説『ミラーズ』を出版。

 

1994年から、ニューヨークの演劇学校「アクターズ・スタジオ」にかかわるようになり、その授業の一環で有名俳優を招き、インタヴュー形式で授業を行う企画を立てた。ただ、受講料無料などで出演者、スタッフなどがノーギャラになるため、ここにテレビ局をつけ、番組として成立させた。それが、『インサイド・ジ・アクターズ・スタジオ』(日本での放映時の邦題『アクターズ・スタジオ・インタヴュー』)となり、1994年6月12日、初回ゲストにポール・ニューマンを迎え第一回目が放送された。以後、アレック・ボールドウィン、シドニー・ルメット、ニール・サイモン、デニス・ホッパーなどそうそうたるメンバーが登場。1994年からシーズン23になる2019年~2020年まで277回放送されている。

 

番組は、その登壇者のキャリアをインタヴュー形式で時系列で語ってもらうという大変シンプルなもの。番組最後に10の定番質問が登壇者に投げられる。その最後の質問は、「あなたが天国の入り口に来たら、神様になんていってほしいか」というもの。270人以上の俳優、女優、映画関係者らが登場。それぞれおもしろい答えを見せている。

 

ジェームス・リプトンはエグゼクティヴ・プロデューサーと司会を担当、司会は2018年まで担当。2019年シリーズは、いろいろな司会者が持ち回りで担当した。現在はニューヨークのペース大学内のマイケル・シメル・センターで収録されている。

 

多くの中でおもしろいのは、ジェームス・リプトンがゲストとして登場した2008年11月10日放送の第213回。このときは司会役をデイヴ・チャペルが担当し、リプトンにインタヴューした。

 

このとき、定番10の質問の最後の「天国の入り口でなんと言われたいか」と聞かれ、次のように答えた。

 

リプトンの答えは「You see, Jim, you were wrong. I exist. But you may come in anyway. いいか、ジム、君は間違ってたよ。私(神)は存在するんだ。だが、いいよ、こちらにいらっしゃい」 

 

270人以上迎えたゲストの中で、もっとも印象的(お気に入り)だったのは誰か。

 

https://bit.ly/2TxnYnZ 

 

それは自分の教え子でもあるブラッドリー・クーパーが登場した回だそう。自分の教え子がここに登壇するとはリプトンも感慨深かった。もっとも別のインタヴューでは、ほかの出演者の気を損ねてもまずいので、一人は選べない、とも答えている。

 

また、ブラッドリー・クーパーは、ショーン・ペンがゲストとして登壇したときに、最後の質疑応答のところで最前列で、ペンに質問をなげかけている。

 

Inside The Actor's Studio, 1999年1月17日放送回。ゲスト・ショーン・ペン

https://www.dailymotion.com/video/xxm54x

 

このとき、クーパーは1975年1月5日生まれの演技を勉強する24歳。そして、この放送から12年後、2011年3月14日、『インサイド・ジ・アクターズ・スタジオ』にゲストとして登場する。

 

番組登場の紹介からリプトンもちょっと感無量だ。そして、登場したクーパーも両親を前に、泣いている。感動的なエピソードになった。この中で、ショーン・ペン、ロバート・デニーロ、スティーヴン・スピルバーグに直接質問しているシーンも映し出される。

An Interview with Bradley Cooper 2011年3月14日放送 (約44分、番組フルエピソード)

 

 

https://www.youtube.com/watch?v=GIWpaXhjgLw

 

両親が最前列に座って紹介されるが、この父は、この2011年収録の後、亡くなった。(命日は不明)

 

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定番の10の質問はこうだ。

 

10 questions to Guest speaker

 

好きな言葉はなんですか(What is your favorite word?)

 

嫌いな言葉はなんですか(What is your least Favorite word?)

 

気持ちを高揚させるものは(What turns you on creatively, spiritually or emotionally?)

 

うんざりすることは(What turn you off?)

 

好きな音は(What sound or noise do you love?)

 

嫌いな音は(What sound or noise do you hate?)

 

好きな悪態は(What is your favorite curse word?)

 

今の職業以外でやってみたい職業は(What profession other than your own would you like to attempt?)

 

絶対にやりたくない職業は(What profession would you not like to attempt?)

 

もし天国が存在するなら、そこの入り口に着いたとき、神になんと言われたいか(If Heaven exists,what would you like to hear God say when you arrive at the Pearly Gates?)

 

リプトンはこれをフランスのジャーナリスト、ベルナルド・ピヴォットが自身の番組で定番質問(十数問)をしていたのをヒントに、自分で10の質問に仕立てた。これはオリジナルでは「ゴッド」神が存在しているなら、だったが、リプトンがそれを「天国が存在するなら」に、少しマイルドな表現に変えていた。

 

ご冥福をお祈りします。

 

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ラウンジ。

 

「ソウル・サーチン・ラウンジ」においでいただいた方はごぞんじだと思うが、その日のゲスト登壇者に最後に10の質問を投げているが、これはこのリプトンのもののパクリである。毎回ゲストが答えに窮しているところを見るのも楽しいし、ワンワードですぐに答えられる方もおもしろい。複数回ゲストで出た方の答えが前回と違うのを聴くのもおもしろい。いつか、それぞれのゲストの答えをここにまとめてみたいと思う。

 

そのアクターズ・スタジオに通った日本人、恵比寿のソウル・バー「ブラウンシュガー」の白川さんのお話→

https://amba.to/2vq9qie 

「白川さんは恵比寿のデニーロ」。

 

ジェームス・リプトンのインタヴューのやり方について

 

Samuel L Jackson: He’s Got Rhythm, Soul and Aaaaaction

Posted on 2003/07/30

http://www.soulsearchin.com/blog_archives/?p=526

 

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アクターズ・スタジオ・インタビュー―名司会者が迫る映画人の素顔

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OBITUARY>Lipton, James (September 19, 1929 – March 2, 2020, 93 year old)

 

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