◆アクターズ・スタジオに学んだ恵比寿ブラウン・シュガーの白川さん

◆アクターズ・スタジオに学んだ恵比寿ブラウン・シュガーの白川さん

【Shunsuke Shirakawa Learned At Actor’s Studio】

アクターズ。

先日の「ソウル還暦の会」で、記録ビデオ用とプロフィール紹介用に、イヴェント司会者の藤本さん（やきとり処・月忠）が7人それぞれに簡単な経歴をインタヴューしていた。

それを横で聞いていたところ、恵比寿のソウル・バー「ブラウン・シュガー」の白川さんが、かつて俳優志望で、なんとニューヨークのアクターズ・スタジオで演技を学んだことがあるという話が聞こえてきた。

アクターズ・スタジオと言えばNHKでも不定期に放送されているインタヴュー番組『インサイド・ジ・アクターズ・スタジオ』で知られる。これは全米ではケーブル・テレビで1994年からスタート、現在21シーズン目に入っている長寿番組。ジェームス・リプトンという司会者が、有名俳優にインタヴューするというシンプルな構成の番組だが、俳優たちの会話がおもしろく、演技に興味にある人たちには大変な人気になっている。

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俳優志望。

白川さんは1955年7月31日宮崎生まれ。高校を出て1973年に東京にやってきた。俳優志望で、アルバイトをしながら俳優を目指した。そうした中でニューヨークに「アクターズ・スタジオ」というのがあり、そこで演技を勉強することがいいらしいとききつけ、1979年、意を決して単身ニューヨークへ。マンハッタンで1日5ドル程度、一週間単位で安く泊まれる宿を見つけ、そこに居を構えた。

アクターズ出身俳優と言えば、マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ポール・ニューマン、スティーヴ・マックイーン、ロバート・デュヴァル、ダスティン・ホフマン、メリル・ストリープなどそうそうたる人たちが大勢いる。

一足先にこのアクターズ・スタジオでアジア人として唯一正式メンバーになっていたゼン・ヒラノ（平野善三郎＝1934年生まれ）さんを頼り、面接を受けた。2－3日後、入学を許可され、以来週に2回44丁目のマンハッタン西（9スと10ス・アヴェニューの間）にあるスタジオに通うことになった。授業料はなし。みな寄付で運営していたらしい。

ただ正式なメンバー（生徒）は、めったに取らず、白川さんは授業を見ることを許される生徒、いわば見学者だった。スタジオは元教会で１階と２階が吹き抜けになっていて、普通の見学者は生徒たちが１階で行っていることを2階から見学する。

そのような見学者が20名ほどいた。下では、エチュード（短いシーンのお芝居）をたいがい二人の生徒がやっていて、それを先生がアドヴァイス、指導をしている。そこで使われるエチュードは古典が多いので、なんとなくストーリーや登場人物がどういうことをやっているか、シーンなどはわかっていたので、なんとなく雰囲気はつかめた。それでも英語は得意ではなかったので、わからないと隣の英語ができそうな人に聞いたりしていた。

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メソッド・アクティング。

ここのアクターズで教えていた方法は、「メソッド・アクティング（メソッド演技法）」というもの。一言で言えば、俳優が自己の感情・経験を生かして演じる役柄になりきろうとする演技手法。ロシアで開発されたものを現代風にアレンジしていた。たとえば、キャラクターの作り方などに特徴があり、徹底してそのキャラクターを作りこむ方法を教えるという。

白川さんが言う。「そのひとつに、アニマル・エクソサイズというのがあって、いろいろな動物の動きを研究するんです。たとえば、ゴリラの動きを徹底して研究するんです。そしてそのいろんな動きのひとつだけをピックアップして、それを演技に取り入れる。『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドのしぐさにこういうのがあるでしょう。（といって、ブランド風に体を揺らし右手をテーブルにたたく）。これがゴリラの動きからその一部だけを取ってるわけです」

なるほど。「ブランドは口の中に綿をいれてるんだけど、口の動かし方はこう」と言ってそれもやってくれた。白川さんが一瞬にしてマーロン・ブランドになった。

そうすると、声の出し方、しゃべり方なんかも細かく教えてくれるのですか、と訊くと、「そういうことは教えない。発声練習とかそういう基本的なことはほかでやってきてから、こっちに来いという感じ」だという。

ほかにも「アフェクティヴ・メモリー」（燃え上がる記憶）という手法などもあるという。

ここには演技を学びたい人、ディレクションを学びたい人などが集まってきている。10時から15時くらいまで、みっちり通い詰めた。ちょうどこの頃ここに通っていた俳優に、アル・パチーノなどがいる。白川さんは、つまり、アル・パチーノなんかと同窓生といってもいいわけだ。

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帰国。

そして、約4か月ここで勉強し、帰国。東京で飲食業の仕事をしながら、俳優を目指した。主な舞台、セゾン劇場、サンシャイン劇場、博品館などには全部出たという。いくつかの映画などにも出演した。

そうして数年経った1985年、白川さんは、飲食の経験を元に意を決してソウル・バー「ブラウン・シュガー」を池袋にオープンする。30歳での独立だった。

結局この池袋店は2000年まで15年続け、そこから恵比寿の現在の店舗に引っ越し、現在15年。ちょうど2015年は30周年になる。

「本当は30周年を六本木のSSBでやろうと思ってたんですが、SSBがなくなっちゃったでしょう。だから、まあ、この店で2－3日、小規模に30周年パーティーでもやろうかな、って考えているところです」という。

映画が大好きで、「好きな俳優は、デニーロが一番かな、それからダスティン・ホフマン」だという。「デニーロの『タクシー・ドライヴァー』は最高だ」ともいう。

ということで、僕はこれから白川さんを「恵比寿のデニーロ」と呼んで尊敬することに決めた。

ちなみに、大宮ディープの藤澤さんは、「大宮のチャック・ブラウン」だ。

（白川さんのイタリア製靴。恵比寿のデニーロにふさわしい豪華靴だ）

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ENT>MOVIE>Actor’s Studio
SOULBAR>Brown Sugar

デニーロ＝「タクシー・ドライヴァー」