依田紀基 著
日本棋院刊
ライターは佐野真
安井仙知の棋譜集。依田さんの解説がされている。
安井仙知は二人いて、区別するために息子の方を中野知得、父親を大仙知と読んだりします。
この日本棋院の古典名局選集は各巻ごとに方針が大きく異なっています。
高木祥一九段の丈和などはかなり詳しく解説がされていますが、
福井正明九段の秀策、秀和などは解説は最小限で、とにかくたくさんの棋譜を紹介する形となっています。
本書、「泰然知得」は220ページ余りに18局と多くの棋譜が収録されていて、
変化図などは最小限に抑えられています。
あまりくどくどとした読みの部分ではなくて、大局的な観点からの解説がされていて読みやすくおもしろいです。
棋譜解説というより依田さんの序盤・中盤講座といった感じに見えます。
明らかな悪手については、理由を添えてバッサリと切り捨てるのが依田流解説
これが実に勉強になります。
棋譜集はなかなか敷居が高いですが割と気軽に読めますし、低段者でも挫折することはなさそうです。
選局のせいなのか棋風のせいなのか、知得が序盤で出遅れて中盤以降盛り返すパターンが多いです。
個人的には布石はむしろ好敵手の元丈の方がのびやかで好きです。
知得は先であるし、元丈が後半薄くなることを見越してあえて手堅すぎるぐらいに打っているのかもしれません。
「日本囲碁大系9 知得」は非常に詳細な解説があり、最後の小ヨセの大きさまで記述されています。
細かい解説を好まれる方はそちらを選ぶとよいかと思います。
ちなみに依田紀基九段の自選解説「勝負の極意」も素晴らしい内容だと思います。
この「泰然知得」と同様、脇道にそれずあっさりとした解説で分かりやすいです。
最近の依田さんの本などちょっと誇大広告っぽくて個人的にあまり好きではありません。
この頃の内容で書いていただきたいと切に願います。
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