ヒトの定命



 「八代亜紀は…100歳まで元気で歌うって…言ってたのにねぇ〜」

「死んじゃったねえ!」

 「田部井淳子は山登りで、誰よりキレイな空気吸ってきたハズなのに…ガンに罹って」

「死んじゃったねえ…」

 「有名になるって、目に見えない苦労がいっぱいあったのかしら…ネ」

「定命だよ…ヒトは生まれつきに何歳位デシヌルって決まっているんだょ」



 ワタシは唖然とした…。

 でも、

 それを聴いて、なぜだか

 胸のもやもや感が

 少し薄まった気がした…


 何時もなら

 …ソンナ勝手なこと、

 決めつけないでよ!

 と、いってしまいがちなのだが…

 その時は不思議と

 腑に落ちたのだった。


 ヒトには定命がある!と

 いったその人は…

 近場の温泉で…

 初めてあった人。

 雲一つない澄み切った睦月の空のもと、

 私達二人、

 貸切状態の露天風呂での会話であった。

 

 歯がかけて…

 女ひふみん?!と言ったらいいのか…

 笑うと柔和で、

 押し付けがましくない

 安心感があった。


 この説得力は

 其処から来ているのだろうか…?!

 ジタバタ足掻いてみても

 どうしょうもナイ!

 微妙に揺れ動く心を

 鎮めてくれる

 定命という概念…

 言う人によって受けとり方が

 こうも違うものなのか… 

 その人に言われて

 初めて

 納得させられた気がした

 ワタシ…だった。