お世話になっている動物病院に、怪我をした猫が運ばれてきました。
怪我....
怪我というには、その状態はあまりにひどく、居合わせたド素人の私でさえ、お手伝いをすべき状況でした。
誰でも気軽に動物病院にかかれるようにと、安価で、まるでブラックジャックのような驚く程の腕前を持った先生が、ひとりでなさっているものですから、度々こんな場面に出くわします。
それにしても、直視できない程、酷い状態で、若い男性のウインドブレーカーに包まれた茶色の猫は、交通事故にあってしまったようでした。
か細い息。
先生の懸命な処置。
私は先生の指示に必死に従うのですが、それでも上手くは立ち回れず、先生は苛立っていました。
3時間の手術でしたが、私にはもっと長く感じました。
フーっと大きく息を吐いて
「終わりました」って先生が言って
私の体はカチンコチンで
時計を見たら4時でした。
午後の診察の時間です。
ブルーの手術着から白い診察着に着替えて、先生は病院の待合室の電気を付けました。
次々と、病気や怪我をおった動物を抱えた人が入ってきます。
私は自分の用事を済ませ、そっと病院を出ました。
体痛い。
お腹すいた。
だけどすごかったな。
なんだか満ち足りた気持ちでした。
茶色の猫はガッツ君と命名され、長く入院していましたが、保護した男性が連れて帰りました。
ガッツ君はとても人慣れしているので、彼が預かりながら、里親さんを探すこととなったのです。
先生も病院のブログに載せてくださいました。
そして私たちも、仲間や知り合いに連絡をし、ガッツ君の幸せの為に動き出そうとした頃です。
先生のブログに、ガッツ君を保護した男性からコメントが入りました。
以下コメント全文です。
《3本足になってしまった猫を預かっている者です。
閉鎖された工場跡地で暮らしている猫、数匹に毎日餌をやっています。
○○動物病院さん(先生の病院)で保護方法をご指導いただいて、避妊去勢手術を始めたころ、この子がいないことに気付きました。
心配していた5日めのある夜、ヨタヨタのボロボロになって、這うように、僕のそばまで来ました。足が折れて骨が出て、内蔵も尋常でないことが一目でわかる程ひどく、それでも僕の足元まで這ってきました。
そのまま○○動物病院さんに運んだ時はもうだめだと思いましたが、そんな中でもゴロゴロ言って僕の手の中で生きようとする力を感じたのを覚えています。
この5日間どんな思いで耐えてたんだろと思うと切ないです。
○○動物病院さんでは献身的に良心的に良くしていただき、2度の大手術にこの子は良く耐えたと聞きました。
先生のお陰で生還できました。ありがとうございました。
また工場跡地へ戻すことはできないのでうちへ連れて帰りましたが、三本足で歩き、トイレもきちんとやり、食事をして、嬉しそうに僕を見る姿に感動しました。
生きたい生きたいと頑張ってきたんだと思います。
だからこの子は、家族とも相談した結果、僕が自宅で面倒みることに決めました。
○○先生、ブログに載せてくれてありがとうございました。
我が家に来て一夜明け、今朝は良く頑張ったなと撫でてやり、この子に見送られて職場に向かいました。
工場跡地には置き去りにされたと思われる猫がまだ数匹います。
生き物が置きざりにされることの危険性と恐怖と心細さを思うといたたまれず、毎日、どんな日も通っています。これからも365日通うつもりです。
避妊去勢手術もまだ全部終わっていません。
懐いているのだから里親をつけてあげたい子もいます。
どうか力を貸してください。
いつも弱いものが犠牲になりますが、置きざりにされたり、捨てられたり、こんな猫が全国他にもまだまだいることに、心が苦しいです。
先生、命を救ってくださりありがとうございました》
里親探しを一時中断して、私たちは考えました。
人と動物と時代とまた人と、
繋がりってこんなことをいうんだろうなって。
関わらせてもらえたことが自分の肉となったことを実感して、ひどく嬉しく思いました。
先生、ガッツ君、保護してくださった小林さん、本当にありがとうございました。
でもさ、あの日手術のお手伝いをした時、うまく立ち回れなかった私(ド素人)にさ、先生(ブラックジャック)が、手術の手袋(ちょっと血みどろ)叩きつけなかったっけ?
よけたけど...。
『もういい!
自分でやる!』
とか言って!!!!!!!
あれ気のせい?
まあ、今回は許して差し上げてもよくってよ