11:アレス〜爪のない女〜 第11章【長編小説】 | 林瀬那 文庫 〜あなたへの物語の世界〜

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「 アレス ~爪のない女 ~」 

   ◇◇ 第11章 ◇◇ 

 

「アレス~爪のない女~」第10章の続き

 

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新宿歌舞伎町での聞き込みは、

数珠つなぎで知り合いから知り合いを

紹介してもらい、

いろんなお店に聞き込みをして廻った。

 

怖い場所だと思っていた歌舞伎町の昼間は

案外普通の繁華街と変わらなく、

多くの観光客の観光メッカになっており、

街で記念写真を撮る外国人観光客が

見受けられ、平和そのものの風景だった。

 



なかなかその目当てのバーは見つからず、

数少ない手がかりをもとに

高瀬さんと池山さんは探してくれた。

 

情報収集の拠点は、

高瀬探偵事務所の楓さんで統一され、

高瀬さんからはしつこく

「お前になんかあったら、

直人から怒られるからな」

と言われ、

私は必ず高瀬さんと一緒に行動した。

 

お店によっては夕方からや

夜しかやってない所ばかりで、

夜はさすがに危険だからと、

私が一緒に行くことはなかった。

 

 

 

「とんでもないとこに手を出しちゃったね、

俺はよく知らないけど、

この街は深入りしない方が身の為だよ」

 

「広いようにみえて小さい街だからね。

きっとすぐ見つかるよ」

色んな人から、

様々なことを行く先々で言われた。

 

一見ガラの悪そうな強面の人も、

事情を話すといい人ばかりで

みんな快く協力してくれた。

 

 


 

父は確かに私が幼い頃に、

仕事でよく東京に行っていた。

それはよく考えると不自然な程に頻繁で。

 

そのたびに、母に歌舞伎町の

行きつけのバーの話しをしていた。

バーのママは

父よりもかなり年上だったはずなので、

もしまだ現役でお店をやっていたら、

結構年配の人なんだと思われた。

 

父があまりにもそのバーによく行くので、

子供ながらに、父は浮気をしているの

ではないかと思ったぐらいで、

浮気を疑われたくないから、わざと母に

いちいち報告しているのではないかとすら

思ったことがあり、

1度だけ母に聞いてみたことがあったが、

「そういうんじゃないのよ」

と笑ってすまされたので、

それ以来私は考えないようにしていた。

 

 

 

しかし

連日のように歌舞伎町に行き、

バーを尋ねまわっている間に

バーのママさんが父の愛人だったのかも

しれないと、ますます余計なことを

考えるようになってきていた。

 

私はバーを探しているうちに

真実が怖くなり、

できれば見つけたくないという、

矛盾した気持ちにもなってきていた。

 


そしてそのことを、

高瀬さんはじめみんなには、

恥ずかしくて言い出せなかった。

 

張り切って探してくれているみんなに

申し訳ない気持ちになりながらも、

本当の気持ちを隠したまま、

日にちは経っていった。

 


もしも、私の勘の通り、

バーのママが父の浮気相手の愛人だったら

知りたくない過去を

私は知ろうとしているのかと思うと、

とても怖くなった。

 

私は、いても経ってもいられなくなり、

来なくていいと言われているのに

何度も高瀬さんについて行き、

一緒に聞き込みをした。

 

 

 

 

 

そして、ある店で

いつものように聞き込みをしていた時に、

「それ、ルビーさんの店じゃないかなぁ?」

とふいに言われた。

 

「え?」

「ルビーさん。探してるママって、

ルビーさんのことでしょ?」

 

 

私はその言葉を聞いた瞬間、

思い出した。

 

遠い昔、父から聞いた

その宝石のような美しい響きの名前を!

 

「そうです!!そう!!

ルビーです。ルビー!!」

 

そばに居た高瀬さんも思わず

「本当か?思い出したのか?」

と大きな声を上げた。

 

ルビーさんについてしつこく聞き返すと、

他の人も

「それなら、あのロックバーでしょ」

と答えてくれた。

 

「確かにママの名前は、ずっとルビーを

名乗ってるから、間違いないよ。

歌舞伎町1の悪女がいるバー」

と口々に言われ、

やっとそのバーのママを

突き止めることができた。

 

 


 

とんとん拍子で店の場所も分かり、

その人を介して、

バーのママであるルビーさんに、

すぐに連絡を取ってもらった。

 

ところがちょうど、彼女は旅行中で

お店を臨時休業していたので、

彼女が旅行から戻ってきてから、

高瀬さんと池山さんと3人で

そのバーに行くことになった。

 



それと同時のタイミングで

私の田舎で有益な情報を得たので、

高瀬さんはすぐに私の田舎に行き

調査をすることになった。

 

おそらく数日かかるかもしれないので、

バーには高瀬さんが戻ってきてから、

来週に行くことになった。

 

 


私は、

単独行動をとらないように

きつく言われていたけれど、

バーのママがご健在なら

そのルビーさんという年配の女性が、

父の愛人だったのではないかという

疑念がどうしても拭えず、

 

高瀬さんが東京にいない間に、

誰にも内緒で1人で

そのロックバーの

ママであるルビーさんに

会いに行くことにした。

 

 




 

 

 

「アレス~爪のない女~」第12章へ続く