「Cry Me a River」

 

ジュリー・ロンドン  Julie London (1926-2000) のメガヒット曲。

カリフォルニア州北部のサンタローザ生まれ。ご両親もショービジネス系で、家族で引っ越した先のロサンゼルスでエレベーターガールとして働いていた15歳の高校生少女がスカウトされて女優に。

そして「美人は歌が下手」という当時の共通認識に反して、なんと歌もうまかった!


お母さんもジュリーも、ビリー・ホリデイが好きだったそうです。

スカウト前は、その年齢では出入りできないクラブで歌っていた経歴もあるとか。

 

1947年、21歳で俳優・プロデューサーのジャック・ウェブ Jack Webbと結婚、子供二人。

当時のマリリン・モンローと対照的な、家庭的な大人女性のイメージ。第二次世界大戦ごろのフェミニズム運動の反動もあって、家庭を守る女性像が再び見直された頃の白人女性女優の代表格だったとのこと。

エンタメ業と家庭の両立は大変だったようで、20代後半でいったん女優業を諦め家庭を繋ぎ止めるべく主婦に専念するけど、結婚は破局にむかっていた様子・・。

 

まだ結婚当時の1953年、ジャック・ウェブ  が、「ピート・ケリーズ・ブルース」Pete Kelly's Blues という映画を作っていて、そこに特別出演するエラ・フィッツジェラルドに歌わせる曲を作曲するようにジュリーの高校の同級生(当時の彼氏とのこと)の作曲家アーサー・ハミルトン Authur Hamilton に依頼して、仕上がったのが、「クライ・ミー・ア・リバー」 だそうです。

ジャック・ウェブとは翌年に離婚。

 

 

結局、Cry Me a River は映画には使われず。

なぜか?

歌詞のサビにでてくる plebeian という言葉が、黒人歌手エラに相応しくなかったから。

・・・だそうです。

何回か書き直したけど結局ダメだった、とアーサー・ハミルトンご自身はインタビューで答えています。

この映画に他2曲を作曲して、それらは採用されました("Sing a Rainbow" と "He Needs Me")
 

 

なんせ、映画には使われず、その後ピアニスト&作曲家のボビー・トゥループ Bobby Troup (「Route 66」を作曲した人)がジュリー・ロンドンに「クライ・ミー・ア・リバー」を録音するよう説得して、プレゼンテーションとしてハリウッドのナイト・クラブで歌わせたら大当たり、観客にいた リバティ・レコード Liberty Recordsのオーナーがすぐさま気に入り、録音に至ったとのこと。1955年、ジュリー・ロンドン29歳。

 

Cry Me a River を1曲目に据えたデビューアルバム 

"Julie is Her Name"    1955年
'


1    "Cry Me a River"    Arthur Hamilton    
2    "I Should Care"    Paul Weston, Axel Stordahl, Sammy Cahn    
3    "I'm in the Mood for Love"    Jimmy McHugh, Dorothy Fields 
4    "I'm Glad There Is You"    Jimmy Dorsey, Paul Madeira    
5    "Can't Help Lovin' That Man"    Jerome Kern, Oscar Hammerstein II    
6    "I Love You"    Cole Porter    
7    "Say It Isn't So"    Irving Berlin    
8    "It Never Entered My Mind"    Richard Rodgers, Lorenz Hart    
9    "Easy Street"    Alan Rankin Jones, Bud Carlton    
10    "'S Wonderful"    George Gershwin, Ira Gershwin    
11    "No Moon at All"    Dave Mann, Redd Evans   
12    "Laura"    David Raksin, Johnny Mercer    
13    "Gone with the Wind"  Allie Wrubel, Herbert Magidson

 

Julie London - vocal

Barney Kessel - guitar 

Ray Leatherwood - bass

 

 

今日はこれをフルアルバムで聴いているところ。著名曲のメロディがストレートに歌われているので、ジャズボーカルを始めたばかりのかたがスタンダード曲を覚えるのにも良さそう。これで13曲覚えられますね音符

It Never Entered My Mind なんて、いい選曲
Lauraは難しい曲ですが、リバーブがいっぱいかかってミステリアスな曲想が表現されています。



Cry Me a Riverは、翌年1956年の「The Girl Can't Help It」というロックコメディ映画に使用されました。タイトル曲たる「The Girl Can't Help It」を始め、この映画の楽曲はボビー・トゥループ作曲。

 

1957年にボビー・トゥループと再婚。子供3人。

 

 

60年代に優秀なアルバムをたくさん吹き込みました。

ハリウッドの豪邸で録音された Julie at Home (1960)

 

 

1964年に日本で撮影された、ジュリーのヒットソングを綴った1時間のテレビ番組 The Julie London Showも有名。バックはもちろんボビー・トゥループ率いるグループ。


おばあちゃん姿のカバージャケットは見たことありません。それは、1969年のスタジオアルバムを最後に歌うことをやめて女優活動に専念したため。女優としてテレビや映画で大活躍を続けました。70年代にアメリカで大ヒットした NBCテレビの Emergency! という医療関係ドラマシリーズに夫婦で出演。プロデューサーは、前の旦那さんのジャック・ウェブ。離婚後も仕事仲間として交流が続いていた、ハリウッドってひとつの大きな家族みたいなものなのでしょうね。

 

 

とあるアメリカのテレビ番組で「どうしてもう歌わないの?」と聞かれ、「もう上手くないから」と答えたのですが、頼まれてほんの一節だけぼそっと歌ったのの、素敵だったこと。

 

1999年に旦那さんを見送った後、翌年74歳で亡くなりました。

 

 

↓イギリスBBC制作のドキュメンタリー

 
 
1926年生まれといえば、マイルスもコルトレーンも。
この世代が活躍する50〜60年代て、アメリカ音楽がとても豊かな時期。
 
 
 

さて、Cry Me a River の歌詞について。
 
ザ・報復! REVENGE! 
私が泣いたのと同じくらいあなたも泣けばいい。
私の痛みがこれでわかったでしょう。
 
基本線はそうです。
 
ただ、
ジュリー・ロンドンの物憂な歌唱、
ギターとベースだけのシンプルな録音は、
泣いてスッキリして報復に回ったのではなく、
いまだに痛みを引きずっている
あなたも同じくらい泣いたら私は許すかもしれない、
ほんとは戻ってきてほしい、といったような、
歌詞が語りきらない、想像にお任せする領域が広い。
それも、当時のアメリカの人の心をつかみ大ヒットとなった所以かなと思います。
めちゃくちゃ美人なのも、もちろんセールスポイントですが!

 
 
映画に採用されなかった理由とされている plebeian という言葉を、この曲以外で聞いたことは私はないです。
アーサー・ハミルトンの言葉チョイスのすごいところ。
古代ローマの「平民」を表す言葉で、つまり、「平凡な・質素な、つまらない」という意味になります。
 
 
 

 
Cry Me a River という言葉自体、慣用句としてはそれまで存在せず、この曲で広まったそうです。
クリエイティビティ、すごし。
 
歌う人それぞれ、自分なりに解釈してStory Telling につとめたいですね。

 
 
黒田和良さんと Cry Me A River の歌詞ついて話しあっている動画がこちら↓のチャンネルにまもなくアップされますのでお楽しみに〜♪

 

 

 

 

 

 

Cry Me a River 
  Composer:  Arthur Hamilton
  Year: 1953


Now you say you're lonely
You cry the whole night through
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

  今さら、寂しいと 
 一晩中泣いてると言われても
 川ができるほど泣けばいい
 私はあなたを想って川をつくったわ



Now you say you're sorry
For being so untrue
Well, you can cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

    今さら、ごめんと 
 誠実でなくて悪かったと言われても
 川ができるほど泣けばいい
 私はあなたを想って川をつくったわ



You drove me, nearly drove me out of my head
While you never shed a tear
Remember, I remember all that you said
Told me love was too plebeian
Told me you were through with me

 頭がおかしくなりそうだった
 あなたは涙ひとつ流さなかったけど
 覚えてる?
 私は全部覚えてる、あなたが言ったこと
 恋愛なんて平凡すぎると
 私との関係は終わったと



And now you say you love me
Well, just to prove you do
Come on and cry me a river
Cry me a river
I cried a river over you

 今さら、愛してるだなんて
 それなら証明してみせて 
 さあ、川ができるほど泣けばいい
 私はあなたを想って川をつくったわ





深尾多恵子

Songbird TAEKO

 

=UPCOMING SHOWS=

2月4日(日)京都・祇園 ボンズ・ロザリー 深尾多恵子(Vo)、 栗田洋輔(Sax) x 祖田修(Pf)

 

 

2月11日(日)名古屋 ジャズ・イン・ラブリー  深尾多恵子(Vo)、黒田和良(Dr)、後藤浩二(Pf)、島田剛(Bs )

 

 

3月9日(土)京都・木屋町三条 RAG  TAEKO's Kyoto Women Jazz Band