5か月遅れの追悼~マリー=クレール・アラン | The world of imagination

5か月遅れの追悼~マリー=クレール・アラン

人の多くは、その音楽の好みや大半の知識については社会人になる迄に完成していると、おもいます。


これは僕だけでなくて、

例えば以前、会社に入って数年目の若い後輩が「もう最近は流行の歌がわかんないんですぅ~」と言っていたのとも、符合します。

好きな音楽をのんびり聴いたり、新しいアーティストを探したりする時間は、社会人になったらほとんど無いからだと思います。


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僕にとっての、オルガニストもそうでした。僕にとっては、ずっと、高校生の頃よく聞いていたマリー=クレール・アランは、そのころから今までずっと、最高のオルガニストでした。


昨日、タワーレコードでいつものようにぶらぶらしていたら、マリーの三回目のバッハ・オルガン全集を、わずか5990円で売っていました。


そして、こう書かれていました、「マリー=クレール・アラン、追悼版完全限定生産」と。


彼女が、この2月に大往生されたことを、タワレコで、5か月遅れで、知ったわけです。


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僕は、初恋の人が吹奏楽部のトランペッターで、セカンドラブな人がこれまた吹奏楽部のクラリネット奏者でコンサートマスターで、

その彼女が神経性拒食症で入院した時に、聞きたい曲は?とお見舞いで聞いたときに彼女が聞きたいと言ったのが、モーツァルトの弦楽四重奏「ひばり」、、、というぐあいで、

別に堅物では有りません(同時に、当時ハシリだった電子音楽(*1)も好きでしたから)がクラシックは身近だったのです。


特に、バッハは特別で、そのオルガン曲と言えば、当代最高の演奏者といえばマリー=クレール・アランでしょ!というのが、15歳の少年にとっての常識でした。


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子供の頃の憧れの人は、いわば神であって、ずっと居てくれるような気が、何故か、する。

けれど、

自分が壮年になるころには、ひとり、またひとりと亡くなり、彼らもひとりの人間だったと、識る。
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やっぱり、街をぶらぶらするのは大切。家の中で自分が選んだ情報だけで生きていたら、彼女の死も、知ることは無かっただろう。


僕は、バッハのオルガン全集については、既にサイモン・プレストン版は持っていましたが、まよわず、この、マリー=<クレール・アラン版も、買いました。
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まず今日は、14枚在るCDの最後の一枚、「CD14 時代を超えた天才、バッハ」を聞きました。「6声のリチェルカーレ」なんて、もう、絶唱でしたよ。


哀悼の意を表すると共に、これからも、彼女の音楽は、僕と共に在ることを、ここに記すものです。




*1:世間とはズレてはいましたが。ジャン=ミッシェル・ジャール、ヴァンゲリス、クラフトワーク、タンジェン・ドリーム、スザンヌ・チャーニー、ブライアン・イーノ、ロジャー・イーノといったデジタルアーティスト達が好みでした。