そこで
この様な電話の内容が本当に
事実だったのかを確かめる為に
さっそく、友人の蒲田の家へ
電話を掛けてみたのでした。

「もしもし…?
…あ…サーコかぁ?
なんだ…私も今、そっちに電話
掛けるところだったんだ、
丁度良かったワ!」

「へえ、そうだったの…?
あのさ~、ところで…
もしかして…蒲ちゃんトコにも
学校から何か連絡が来た?
丁度、私が出掛けててサ…
だから直接その電話に
出たワケじゃ無いから…
なんか本当なんだかどうか、
よく分から無かったから…
蒲ちゃんに電話したんだ…」

「うん、勿論こっちにも
学校からの連絡有ったわヨ!
ホント、ビックリょね…
なんてったって、突然の事だしサ…
しかも…イキナリ、明日でしょ…!?
…舞島先生の葬儀って…」

「ぅ…う…ん…なんか、
そうらしいんだケド…
でもサ、それって…本当に…
ホントの事なのかなぁ…?
まさか…イタズラ電話って…
ワケじゃぁ無いょね…?
だって…ほら、昔さ〜
中学生の時だったかなぁ?
私達の学校に…確か爆弾だか何か
仕掛けたって電話が入って、
それで休校にするって云う
緊急連絡が来たじゃない?
あの時はホント、皆んなが驚いて
大騒ぎになったモンね〜 !?」

「あぁ…そう云えば、確かに
そんな事も有ったわよネ〜!
…で…今回も何かサ…
連絡の内容が内容ダケに…
ホント、信じられ無いじゃん !?
だから…実は私もサーコから
電話が来るチョット前まで、
高校ん時のクラスメートや
他の人とかにも電話してたんだ…
何かもっと詳しい事が分かるかも
知れないと思ってサ!」

「ふ〜ん…そうだったんだ…
で?…どうだったの…蒲ちゃん?
…なんか分かった?」

「うん、なんか…それがサ…
皆んなも、あんまり詳しい事は、
誰もよく知らないらしいって、
言ってたんだけどね…でも、
やっぱり、明日の舞島先生の葬儀は、
どうやら本当の事だって…
だからサ、一緒に行こうと思って、
丁度、サーコに電話しようと
したってワケなんだ…」

「ぅ〜ん…そうかぁ…
それじゃぁ…やっぱり、
あの電話連絡は、
本当の本物だったんだ…」

こうして
遂にこの様な
余りにも突然の『舞島先生の死』
と云った、それこそ私達には
全く思いも寄らなかった様な
出来事が、まさしく確実な事と
なったのでした。

そして
これは私や蒲田にとっては
勿論の事、また舞島先生を知る
母校の卒業生達や教師達に
とっても、全く本当に驚きを
隠せない程の衝撃的な事だったのは
間違い有りませんでした。

そうして
私と蒲田は暫くの間
電話で明日の葬儀の件に就いて
色々と話した後、待ち合わせや
着て行く服装などに就いても
相談し合って居たのでした。

そして
翌日となり、いよいよ
葬儀に向かう午後には
小雨となって居たので
私としては、正直言って
その葬儀の事よりも、必要以上に
自分の髪の毛の事の方が
気になって来ました。

と云うのも
強風も去ることながら
雨降りと云う天候自体が
この私の頭の後頭部に有る
円形脱毛には都合が悪く
つまり、雨が降ると濡れたり
する事で髪の毛自体が
フワッとせずに、くっ付いてしまい
その為、分かれ易くなるからです。

そこで
丁度、髪の毛の分かれ目に
円形脱毛が有ると、その回りの
髪の毛の暗さと頭皮の地肌の
白さとのコントラストが際立ち
どうしたって、この私のハゲが
哀れにも髪の毛の間から完全に
見えてしまうのでした。

そうして
この日の私自身は
表面的にはいつもの様に
振る舞って居ましたが、しかし
内心は、それとは全く裏腹で
その葬儀で久々に会う母校の
大勢の生徒達や教師達に
このハゲが見えてしまうのでは
ないか…それこそ、皆んなの前で
醜態を曝す様な事にでも
なりはしないか…と云った
なんとも言い難い憂鬱な
気持ちで一杯でした。

しかし
そんな私の些か暗い雰囲気は
まさに、この日の『葬儀』と云う
シチュエーションにはピッタリで
それこそ、さも亡くなった先生を
思って沈んで居る様にしか見えず
たがって、私のこの様な気持ちは
誰にも気にされる事は
有りませんでした。

そして
蒲田と待ち合わせると
さっそく、そこから2人で
葬儀が行なわれる寺に
向かいました。

しかし
その寺の付近に到着しても
既にお寺の門が見えない程
物凄い数の弔問客が複数列で
寺の回りを囲む様に並んで居て
その様子は、まるでテレビで
よく目にする様な有名人や
芸能人の葬儀の様でした。

さすがに
私も蒲田もこの余りの
混雑振りに驚きを隠せず、暫く
茫然としてしまいましたが、しかし
その参列に加わりながらも

「さすがに舞島先生の
人気は本物だわ…」

「本当に、こんなに大勢の
人達から慕われて居たんだものね…」

と云った様な話し声が
並んでる列のアチラコチラから
聞こえて来るのでした。

そしてまた
私達2人が列に並んで居ると
それ迄は知り得なかった様な
色々な情報も耳に入って
来たのでした。

例えば
数ヶ月前から舞島先生が
入院して居た事や、また
入院した時には既に手の施し様の
無い末期癌だった事…そして
舞島先生の入院中は、旦那さんの
卯月先生がずっと献身的に
看病を続けながら『絶対に回復する』
と舞島先生を励まして居た事など…
それこそ、この2人の素晴らしい
夫婦の強い絆を彷彿とさせる様な
内容ばかりで、その様な話しには
側耳を立てて聞いて居た
私と蒲田も本当に心を動かされ
それだけに、舞島先生のこの様な
早すぎる死が、なんとも哀れに
思えて来たのでした。

この様にして
参列して居た皆んなは
それぞれがしんみりとした面持ちで
所々から漏れ聞こえて来る
すすり泣きの小雨の中を
焼香の順番を待ちながら
少しずつ歩みを進めて
行ったのでした。

そして
私と蒲田が参列に加わってから
約1時間程して、やっとの事で
その寺の門をぐぐり敷地内に入る
事が出来ましたが、しかし
なんと目の前には、それこそ
優に千は超えると云う程の
まさに大群の様な人達が、またもや
そこでも並んで居り、やはり
ここから焼香までは、まだまだ
遠い道のりで有る事を再確認
させられたのでした。

こうして
私達2人が他の人達と同じ様に
列に並んで居ると、暫くして
なんだか突然、回りがざわ付き出し
しかも、なにやら不穏な空気まで
漂い始めたのでした。

しかし
それ迄は、皆が故人を
偲びながらも、それこそ
粛々と列に連なって居た筈なのに
何故かここに来て、イキナリ
その様子が一変したかの様に
厳かだった参列者の中からは
それぞれが口々に何かを
伝える様な囁く声が、まるで
さざ波の様にザワザワとして
聞こえ出したのでした。

ところが
それがどうやら
尋常な事では無いらしく
そこで、私も蒲田もテッキリ
この列が余りの長蛇だった為に
参列者の中の誰かが具合いでも
悪くなって倒れたとか、また
或いは何かの事故か何かが
起こったのかも知れないと思い
心配になって回りの人達に
聞いてみたのでした。

「あの…なんだか、皆んなが
少し騒いでるみたいだけど…
一体、どうしたの?
なんか有ったの?」

「ぅ…う…ん…それがねぇ…
なんだか…どうやらココに、
卯月先生の『彼女』が来てる
らしいんだって…!?」

「へ?…か、彼女?…ソレって
ホントに…卯月先生の彼女って事 !?」

「えーッ!…ま、まさかぁ―!?
…だって…卯月先生には、
ちゃんと舞島先生って云う
奥さんが居たじゃない!」

「ソレって…もしかして…
卯月先生が…浮気してたって事なの?
…まさかぁ〜…あの卯月先生に限って、
そんな事、絶対に有り得ないわよ…!
ねぇ、サーコ?」

「うん、私もそう思うヮ…蒲ちゃん!
それにサ、もしそれが…
本当の事なら…それじゃぁ…
卯月先生は舞島先生が病気に
なってから彼女が出来たの?
そしたら、もしかして…
舞島先生もその事は知ってて…
公認って事なのかなぁ…?
だから、その彼女自身も
堂々とこの葬儀に来れる…
って事なんだろか?
それとも…病気になる前から
彼女が居たのかなぁ?」

「そんな詳しい事までは
知らないけど…でも…だけど、
皆んながそう言ってるのよ…
卯月先生の『彼女』だって…
しかも…こんな騒ぎにもなる
くらいだからネ…
それに、大体、…
『火のないところに煙は立たない』
って、昔から言うじゃない…
案外、本当の事かも知れないわよ !?」

「ん~~…でもなぁ…そんなの…
やっぱ信じられ無いなぁ…ってか、
なんか信じたく無いなぁ…私は…
ねぇ、サーコ?」

「ぅ…ん…まぁね…
でもサ、さっきの
『火のないところに煙は立たない』
ってのは、理屈としては、
筋が通ってる話しだけどね…
まぁでも…それにしてもサ、
もしその彼女が本当に
ココに居るんなら…その人って…
一体、どんな人なの?」

「ぅ〜ん、それがね…
なんか噂では、どうやら、
私達の学校の卒業生なんだって!?
…ホント、驚きよね―ッ!?」

「エーッ !?…う、うそォ〜!
それホントなの !?」

「へ〜ッ…!そうか、だから皆んな、
こんなにも、ざわ付いてるんだ!
…それで?…その彼女…いや…
その卒業生ってのは、一体、
誰の事なの?名前は?
まぁ…でもなぁ…私達よりも
ずっと上の先輩だと、いくら名前を
言われたって、分から無いしなぁ…?」

「それがね…名前までは
聞いて無いんだけど…
多分、二十歳ぐらいだって…
年齢的には私達と同じくらいで…
殆ど余り変わらないんじゃない?」

「ふ〜ん…そうなんだ…結構、
細かいところまで分かってるんだ…
でもサ、名前が分かっても、
クラスや学年が違うと、全く、
知らない生徒も多いからなぁ…」

「な〜んだ…せっかく、
その卯月先生の彼女を
見れるかも知れなかったのにな…
なんか、残念だなぁ〜」

「ホントょね…蒲ちゃん!
…でもサ、その彼女って、
一体、誰なんだろう…?
もしかして…
私達の知ってる人かなぁ…?
だとしたら…
ホント、誰なんだろうねッ!?」

こうして
些かこの長蛇の列に
並んで居る事自体にも
退屈を覚えて居た私と蒲田は
勿論、突如として現れた
このまるでテレビドラマの様な
驚きの内容に就いては、それこそ
私達2人と共に並んで居た
回りの人達と一緒になって…
場所が場所ダケに…多少は
興奮を抑え気味にしながらも
この噂話に花を咲かせて
居たのでした。





続く…




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