自伝で紹介されていたルル・ハーストの「怪力術」の8つの技の内の4つを、前後編二回に分けて考察する。

●ルル・ハースト「怪力術」前編=NO.2&3

◎NO.2 男性がビリヤードのキューの先端を地面に着けようとするのを、右手で軽くキューに触れただけで阻止する技

※原本・英文の解説文章ではなく、私個人の見解を記すことにします。

①術者はキューに軽く右手を触れているだけ(B)の様に見えるが、実は、右腕上腕でキューを押し(A)、AとBでシッカリとキューを抑えている。

②この状態から、更に、右腕上腕に自身の体重を男の方へ預けると、男の身体は右に捻じれる(C)。

③身体が右に捻じれると右足が浮き、男は左足一本で全体重を支えている状態になる。

④キューの先端を地面に着ける為には、男は左膝を更に曲げなくてはならないのだが、自身の体重を支えきれなくなるので、それが出来ない。

〇武術との共通性=体重を前後左右に偏らせて不安定な状態に置くと、本来の力が発揮出来なくなる。又、不安定な態勢のままだと、外からのわずかな力の作用で容易に倒されてしまう。
 力を無力化し、わずかな力の作用で敵を制する為には、先ず、敵の態勢を崩すことが肝要。

◎NO.3 椅子に座った3人の男性を椅子ごと投げ飛ばす

※原本・英文の解説文章ではなく、私個人の見解を記すことにします。

①椅子の背もたれを引けば、写真の様に椅子は傾き、男性たちは不安定な状態になる。
 (長い背もたれの椅子を用いれば、梃子の原理によって、更に少ない力で椅子を傾けることが出来る)

②男性Aのおかげで3人の人塊の重心が高くなっているので、この状態のまま椅子を左右に傾けることは容易。バランスを崩した男性たちは一気に椅子から転げ落ちる。

③男性たちが椅子から転げ落ちるのとほぼ同時に、術者は椅子を持ち上げる。すると、あたかも「術者が椅子を持ち上げて3人の男性を投げ飛ばした」ように見える。

〇武術との共通性=高い位置に重心があって、接地面積の小さい物体は倒れやすい。
 合気上げで、敵の上体を仰け反らせ、つま先立ちにさせるのも、「重心を高く、接地面積を小さく」して、敵を不安定な体勢にするのが目的。