ジャスト寸法ゲージの製作 | 京都暮らしの日々雑感

ジャスト寸法ゲージの製作

新規製作の注文書が寄せられて、

その中に、ゲージの測定部の製作公差として、

+1㎛/0と指定されているものがあった。

 

そもそも、現行JIS二先立つ旧JISが制定された際に、

その最も厳しいIT5級の規定では、

そこでの製作公差は±1.2㎛であったから、

その当時でさえ、この公差をクリアできるゲージ屋が何人いるかが話題となっていた。

現行JISが制定された際に、

このIT5級の公差規定を定めても、

それに対応できるゲージ屋が存在しているとは考えがたいと、

IT5級の公差規定をJISの下では制定せず、

また、いっそう厳しい製作公差を求めるべき検査用ハサミゲージの規定を外してしまっていたのである。

しかしながら、現行JISの規定の下にあっても、

IT5級に該当するハサミゲージの需要は依然として継続し、

対応できるゲージ屋は対応できるように努めてきたのである。

 

さて、ゲージの寸法というものは何ぞや?という問題なのである。

抽象的・一般的にゲージの寸法が存在しているのではなくて、

ハサミゲージの測定部の寸法というものは、

その平面度と平行度、及び面粗度という3つの要件に基づいて構成されているものである。

寸法というものは、この3の要件に基づいて実現されるものの上澄み部分であるという言い方ができる。

これに対して、JIS規定等で定められている寸法値というものは、

ゲージの摩耗しろ及び本来の製作許容差を合算したものなのである。

従って、ゲージ素材の耐摩耗性が異なってくれば、

また、ゲージ製作に際しての製作許容寸法差を更に絞り込めることができたなら、

ゲージの一般的な製作公差規定というものも変わってくると考えるのは容易なのである。

 

以上のような考慮から、

ハサミゲージの材質としてダイス鋼を採用すべきことが直ちに決まる。

また、求めるべきゲージ仕立て上げ寸法値が±0.2㎛の曖昧さの範囲内に収めるべしということになるから、

それに見合った面粗度で仕立て上げられないといけない。

±0.2㎛の曖昧さというのは、

JISの規定によるブロックゲージの寸法精度の曖昧さを反映するもので、

つまりは、ジャスト寸法ゲージのジャスト寸法というものは。

JIS2級ブロックゲージ並の精度条件を備えるべしということを意味する。

 

ハンドラップ技法というものは、

そこまでの精度実現が可能な技法なのである。

 

従って、ジャスト寸法ゲージというものは、

ハンドラップ技法で可能な精度実現を目指したものであると言い替えることができる。