バレエを習い始めたばかりの人たち(特に大人の初心者の方から)は昔から


「両手バーばかりではなく、はやく真ん中で踊りたい」


「トウシューズで早く舞台に立ちたい」


と言う言葉を耳にします。


今日は「ではなぜ、両手バーが必要か?」をお話しましょう。


バレエで一番最初に習うのは「両手バー」です。いきなり「片手バー」にはなりませんし、いきなりトウシューズなど論外です。


もちろん上級者になれば、限られたレッスンの中ですと「両手バー」のウォームアップを省くクラスもあったりします。


しかし、どんなプロであっても、バレエ団のクラスは両手バーのウォームアップから始める場合がほとんどだと思います。


当たり前の「両手バー」プロでも、です!



年齢に関係なく



男の子だろうが



生徒だろうが



とにかく「両手バー」



理由は明確です。


バーと言う「真っ直ぐ」な目安に対して対面すると言う時点で、身体が整いますし、両手でバーを持っているので、動きが制限されていくのでブレやすい骨盤も正しい位置に戻しやすくなりますし、ついつい平行感覚がズレる肩もズレなくなります。良い事ばかりです。


片手バーですと、このように「バーを持っていない側」の手足はどこまでも動きますから、それに負けないだけの「軸」が必要であり、そのためにも必ず「どれだけ動いたとしても、常に真っ直ぐに戻る筋力と知識」が必要になります。



その筋力と知識があって、はじめてセンターで踊れるわけです。



よくよく考えてみてください。


ガソリンが入っていない車で、遠出しますか?


部品が足りない車で、走りますか?


ガソリンスタンドもなく、助けも呼べない場所で車が止まったら…どうしますか?


バレエを始めたばかりの大人の方たちから良く聞く言葉


「私達には残された時間がないから、形だけでもいいからトウシューズを履きたいんです」


と言う気持ちは、わからなくないです。


しかし、ふだんから500mも歩かないような人が


「残された時間がないから42.195km走ります!フルマラソン憧れてますから!」


となりますか?


バレエも同じです。


センターで踊るためには、それなりの筋力と知識が必要であり、だからこそ、原点でもある「両手バー」から少しずつウォームアップを始めていき、徐々に激しい動きに移行していくのです。


焦る気持ちはわかります。しかし以前にも話しましたが、いくら「大人の自己責任」とは言え、大好きなバレエで骨折したり、日々の生活に支障をきたすような無理なレッスンをした場合、会社を長期お休みしたら首でしょうし、日常生活も不自由でしょうし、なによりも


「その怪我の痛みは、同情されたとしても、だれも代わってはくれない」


のです。


「両手バーばかりで、つまんない」

「早く真ん中で踊りたい」


と思われた場合、ぜひこの言葉を思い出して下さい。


「焦りは禁物」


焦って良いことなど、何ひとつありませんし、結果的に焦らずコツコツと頑張った人のほうが、真ん中で「怪我のリスクが少なく!」踊れるようになるのです。


「プロのバレエダンサーのように踊りたい!」


と言って、プロダンサーの真似をすると言うのは


「プロのマラソン選手と肩を並べて、選手と同じスピードで42.295km走ります」


と言うのと同じです。そんな無茶なこと、冷静に考えたら普通はしないでしょう?


「両手バー」ぜひ大事にしてくださいね。


結果はあとからついてきます!


左右木健一