もうすぐで70回…こんなに連載のように続くとは(笑)

質問を受付しておりますが、ご注意ください。重複した質問には重複した回答になりますので

「え?質問に答えてくれない…」

と嘆かないで下さいね(笑)その場合は

コンクールに向けて」のブログに全部目を通して下さい。回答が書いてありますから。

では69回目の「コンクールに向けて」

どうぞ!

<Q>

初めまして。いつもブログを楽しみに拝読しております。

コンクールの選曲について、ずっと疑問に思っていることがあります。
過去記事を全て読み返したつもりですが、今回の質問と少し内容が違うように思いますので、お答えいただければ幸いです。

色々なコンクールの上位入賞者の選曲を調べてみました。
タンバリンのエスメラルダ、オーロラ、パキータエトワール、スワニルダ、アレルキナーダ が他に比べてとても多く踊られており、中でもエスメラルダは特に群を抜いて多いように感じました。
(年齢区分にも寄ると思いますので、自分の娘と同じ中学生の部門で調べました。)

単純に、なぜこのように偏るのか?を知りたいです。スタジオ内外でも、上手な子はエスメラルダに挑戦する子が多いように思います。
これらのバリエーションは、時間が長く難易度も高いように思うので、ある程度踊りの経験がある子が挑戦したくなるのでしょうか。

私の拙い情報の中で思ったことはもう一つあり、エスメラルダのバリエーションは、他国のコンクールでは日本国内ほど踊られていないように感じました。
日本で人気の割に、ローザンヌの課題曲になった記憶がないのですが、合ってますでしょうか。
様々な年齢で人気のアレルキナーダも、同様に感じます。

以前の記事、コンクールPart46のご質問とお答えを何度も読み返し、ご回答の中の
「基礎力がベースにあっての、内面も含めたトータルな美しさ」
が、上位入賞の鍵になるのであれば、テクニックをたくさん盛り込んだ、見せ場の多い派手なバリエーションを選択した入賞者が多いのはなぜなのでしょう?
審査員が判断できる項目が多いからなのか、印象の強さを考えての選曲なのか。
観客としてみていても、タンバリンの音に思わず目が行ってしまう時があります。

比較的簡単な、短い曲の、あまり踊られていないバリエーションをコンクールで踊った場合は不利になるのか。
そのような事はないとは思いますが、あまりに同じ曲の入賞者が多いので、今後の娘の選曲の参考にしたく、質問送らせていただきました。

どうぞよろしくお願いいたします。

<A>

まず…

海外でも「エスメラルダ」は多いです。そしてレパートリーの偏りに危惧する審査員もいれば、そうではない審査員もおります。


Part 46を読まれて

見せ場の多い派手なバリエーションを選択した入賞者が多いのはなぜなのでしょう?」

ということですが、お答えしますね。

「派手な…」という「派手」の意味が、どのように捉えていらっしゃるかわかりませんが、少なくとも一般の方が考える「派手さ」のみを評価して得点を高く入れるつもりは(私は、ですが)ないです。ただし、以前にもお話したとおり、審査員が満場一致で出した結果が全てではない、ということですし、私1人の意見で結果が決まるわけではないですから…

「どのヴァリエーションが…」が大事ではなく

「どのヴァリエーションを選択して、それが参加者本人がどこまで理解できているか」

が大事だ、と私は思います。

「タンバリンの音…」

ということですが、タンバリンをきちんと叩けない場合、音楽性に欠けてる、ということで、むしろ不利なケースもありますよ。音楽性を重視していない審査員のコンクールなら別ですが(笑)

結果をきちんとリサーチされて、私に質問されてきたくらいですから、疑問に思われるのは当然ですよね。

それでは、私から質問させて下さいね。

偏りが気になりますか?
ヴァリエーションを派手なものにしなくてはいけない、とお考えですか?
そして「短い曲の、あまり踊られていないバリエーションをコンクールで踊った場合は不利になる」(そんなことないですよ 笑)という不安があるから、このような質問をされましたか?

もし「NO!」であれば、偏りを気になさらないで、信念を貫いて下さい!

偏ることはありますし、偏りを審査員が修正するわけにはいかない。なぜなら参加者は課題曲が指定されない限り、自分の好きな作品を踊るわけですから。

もし、それが

「上位入賞するために、審査員が好みそうなヴァリエーションに変えてみよう」

なんて考え方になったとしたら、それは非常に悲しいです。

エスメラルダでも、黒鳥でも、フロリナ王女でも、役の解釈と、難しいテクニックを駆使できるだけの基礎力、品格、音楽性、コーディネーション、そして何よりもクラシックバレエに最も大事なターンアウト(ただ、脚がひらいてます!ではないですからね)が、あれば、どのヴァリエーションでも関係ない。たまたま参加者が持つ本来の基礎レベルが高くて、その人たちが選んだ演目が同じだっただけの話です。

コンクールの結果しかご覧にならないと

「あれ?偏りが…」

と思われますよね。

しかし…コンクールなんかまだ良いほうで、バレエ団はもっとありますよ、偏りが!

皆さん、スターが出演している公演か、そうでない公演。「白鳥の湖」のような非常にわかりやすい演目か、上演されてない無名の振付家の新作。どちらのほうがチケット売れるか、わかりますよね?

その偏りは、バレエの世界にいたらずっと続きます。

しかし、そこで信念を貫けるか、流されるか…

審査基準も変わってきています。審査員も年々、世代交代してきています。

信じられない話かもしれませんが、昭和時代は小学生が「黒鳥」「グラン・パ・クラシック」などを踊ることに、何の疑問も抱かれなかったんですよ。トウシューズで踊らせること自体が今では大問題ですし、YAGPのプリコンベティティブ部門では、課題曲から削除されています。それもつい最近改定されたルールですから、数年前とも違う。

ちなみにコンクールで有名な「エスメラルダ」の振付は、当時のヒューストンバレエにいたベン・スティーブンソンのオリジナルだ、と生前の薄井憲二先生が仰っていましたし、本来のエスメラルダは決して「派手」ではないです。

コンクールと全く関係ない舞台をぜひ見に行ってください。全然違うことがわかりますから。

「コンクールで作られたイメージって怖い」

と感じるはずです。

バレエにおける「コンクール」は本当に一部分の世界に過ぎませんし、あくまでも

「バレエという世界をちょっと覗いてみました」

程度だ、と思ってもらえたら嬉しいです!

何度も言いますが

「コンクールの結果が全てではない」

しかし

「コンクールにエントリーすることで、改めてバレエを勉強できたり、人との繋がりが出来るのは確か」

ですから。

お嬢様のヴァリエーションの選択を、派手か、そうではないか、で揺るがないように、いま、何が大事かを考えてあげて下さいね。

左右木健一