以前に

「審査員席から見える具合と、普通の客席から見える具合は違う」

と説明したことがあったと思うのですが、今日はそれについてお話します。

それは

「メイク」について

例えば、この2人。


小さな舞台で、狭い客席でしたから、この程度に抑えています。

日本人にしてみたら「もっと書かなきゃ」と思うのですが、海外の審査員からしたら、これくらいが丁度いい(むしろまだ濃い!と言われるかも知れません)価値観の違いと、時代の流れもあると思います。昔のロシアバレエのメイクを最近のロシア人はしていませんし、かなりナチュラルだったりします。

コンクールの舞台は照明が普段のゴージャスな照明とは違い、とても質素です。

そしてコンクールによっては、審査員席は最前列で審査をすることはあっても、最後列では審査はしません。

よほど目が悪くない限り、良く見えていますし、極端な話ですが視力の良い審査員は衣裳のほつれた糸ですらしっかりみえていたりします。私は近視、老眼ではないです(笑)なので眼鏡をかけて審査するのですが、やはり細かい部分、ほつれた糸やポアントやバレエシューズのヒモ、髪の毛の後れ毛などまで、バッチリ見えてしまっています。

私自身が審査するときは、メイクの濃さ、薄さ、というよりも

「いかに、その子がより美しくみえているか?」

を基準にはしていますが…海外の先生方はそうではないみたいです。

たとえば、先日のローザンヌ国際バレエコンクールでも、ニーナ・アナニアシヴィリさんが濃いメイクをしたアジア人参加者に対して

「あなたたち、なんでそんなにメイクしてるの?お化けみたい」

と言った話は有名です。なぜ普段の顔が可愛いのに、どうしてメイクで誰だかわからないくらい化けるのか、が理解出来ないらしいです。

海外では白鳥やウィリなど、いわゆる「白モノ」を踊るときは身体は塗りますが、いわゆる「人間の役」のときは身体すら塗らない。私も日本を離れてはじめて

「あ、塗らないんだ!」

と、ビックリしたことがあります。

コンクールの出来栄えよりも、将来性が問われるような審査基準に変化している今だからこそ

「素顔(素のまま、ありのまま)が見たい」

というのは、感じます。

コンクールの衣裳、メイクに関することは、色々な価値観がありますので

「こうでなければ、絶対にいけない」

は、ないとは思うのですが…

少なくとも、オーケストラピットもなく、舞台装置もなく、照明も質素なコンクールの舞台には、そんなにゴージャスなメイクを施す必要はあまりない、と頭に入れておくと、良いかと思われます。

左右木健一