「コンクールダンサーになってはいけない」

よく言われる言葉です。どういう意味か…

バレエ団に入団するとします。いきなり主役ではないですから、コールドバレエからのスタート。

協調性が問われますし、1人で踊れる身分ではない。

しかし小さな頃からコンクールで1人で踊ることに慣れてしまうと、バレエ=1人で踊る、が身についてしまい、いざ舞台で24人や32人で踊る、となった場合、踊れない…

それが「コンクールダンサー」と言われるパターンです。

ですから発表会をはじめ、全体でひとつの作品を創る作業が大事になるわけです。

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今の時代、コンクールがどんどん増えていき、1人で踊れる価値が、どんどん下がってきている感じがします。

昔だったら、大舞台でたったの1人で踊れる、なんて言ったら、それこそ大抜擢でしたから、それだけで嬉しかった。しかし、いまはそんな感動はなく、むしろ「別に普通」の感覚。大人から始めた方も、1人で踊る機会は増えました。

そのような時代の流れのなか、いかにコンクールと向き合うべきか…バレエとは何か…

バレエ団でコールドバレエのような下積み生活を何も経験しないまま、過ごしてしまうと、やはり1人で踊れる有り難みを知らないで成長してしまいます。

指導者が正しく導いてあげること、そして

「あなたは、いつでも主役ではない」
「あなたの代わりはいくらでもいます」

と、主役級になったとしても、ディレクターから通達されるバレエ界の現実を教える必要があると思います。

その現実を知っていれば

「1人で踊れるなんて…なんて貴重な時間!」

となりますし、自分だけに注目を浴びるなんて、大人になったら滅多にない現実を知らないから

「コンクール…練習するのも、舞台で踊るのも辛かった」

になる。

1人で踊れないほうが…体力的、精神的に辛いです。

「白鳥の湖」コールドバレエが舞台に登場して、袖にハケるまでの時間は、主役のオデットよりも長いことを知っていますか?

主役は踊ったら袖に引っ込んで、汗拭いたりお水飲んだり出来ます。足がつりそうになったら、いざとなったら振付をちょっとごまかしたりできる。

しかし24名が同時に踊った場合

「ちょっと足が攣ったから、私だけ軸足かえます」

なんて言えません(笑)

ですから指導者の先生が下積み経験がないよりはあるほうが、この現実を指導するには説得力があります。主役ばかり踊っていた人ではなく、バレエ団の全ての階級を経験した先生でしたら、もう説得力ありですよね?

もし1人で踊ることに感謝が持てない場合は、そのような下積み時代を経た先生に相談してみると良いと思いますよ。きっと

「1人で踊れるうちが華」
「コンクールにエントリー出来てるうちが華」
「そのうち、あなたに注目など集まらない日が来る」

という言葉が返ってくるはずです。

自分が主役になれる時なんて、長い人生でそんなに頻繁にはありませんから…

Part 21に続く

左右木健一