買ってから気づきましたが、もうすぐ文庫化されるんですね。その「もうすぐ」を我慢するかどうかは読者の判断に任されるのではありましょうけど📕



紀蔚然著 舩山むつみ訳「台北プライベートアイ」文藝春秋より。

ずいぶん分厚くて文字数も多め。文庫化しても読むのは大変かもです😅


プライベートアイとは私立探偵のこと。また、秘密を見抜くもう一つの目という意味合いもありそう👀

主人公 呉誠は、作者の分身という側面もあるのか、元劇作家・大学教授。

まだまだ障害に対して偏見の強い台湾社会において、パニック障害というハンディを抱えながら、強気と毒舌を駆使して弱みを隠し、世間と交わってきました😢


しかしある時、酒に酔った勢いで周囲の制止にも関わらず怒りをぶつけまくり、慰留も聞かずに退職。

台北の路地裏 臥龍街に居を移し、シロウト私立探偵へと転職です🕵️‍♂️


障害を隠して生活することはある意味で洞察力を養うのかも。シロウトながら探偵職はまあまあ順調。

しかし台北で連続殺人事件が発生。近所の話でもありと、好奇心から首を突っ込んだ猟奇殺人事件の容疑者に仕立て上げられてしまいました😱


主人公を嵌めるのも、その容疑を晴らすのも台北に仕掛けられた無数の監視カメラ。

かつての独裁政権の置き土産でもありますが、市民を監視するこのカメラもまた "プライベートアイ" の一つなのでありましょう。


安定した二大政党による政権交代、LGBTフレンドリーな社会、そして大変な「親日国」……。

日本人は割と無邪気に台湾の民主主義を理想的に語りますが、そのデモクラシーはナショナリズムとリベラリズムがせめぎ合うもの。

しかも多くナショナリズムが優位に立つ矛盾は、台湾出身の芥川賞作家 李琴峰 さん👇が既に指摘していました。



そして台湾社会が賞賛されるもう一つの理由、迅速なコロナ対策。

しばしば担当大臣のオードリー・タンの特異なパーソナリティに仮託されがちですが……👇


実はそれも👆独裁政権が遺した民衆の管理システムあってのものだったとか😢

無邪気に称揚される台湾デモクラシーの欺瞞を、優れた作家の目は決して見逃さないということでしょう。本作の真犯人はこの台湾社会の "隠された" 分断といえます。
……とはいえ日本よりははるかにマシでもありますが😩

いや、台湾のリベラル勢力がしばしば日本の保守勢力と野合することも前述の李琴峰さんが指摘しています。東アジアの政治は密接につながっていて一筋縄ではいきません😔

台湾は仏教圏ということになっていますが、その宗教事情もなかなか 複雑 なよう👇


少なくともまじめに教えと向き合う仏教者は希少と見做されてる様子です(ま、この辺りも日本と同じですね😅)。
まじめに宗教と向き合う人もまたマイノリティ。台湾社会の仏教に対する複雑な見方も、わたしにとって興味深い部分でありました🙂






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