うーむ。小説自体は面白かったから言いたくないけど、帯書のこれは全然違うよ😕

そういうのを期待して買うとガッカリしてしまうと思います。

小説自体はとても良い内容です。それだけに首を傾げてしまいました。



原田ひ香著「母親ウエスタン」光文社文庫より。


ちなみに背表紙側のこれは当たっています。こういうのって一つひとつ書く人が違うのかしら🤔



崩壊寸前の家庭にふらりと入り込んで、いつの間にかその家の主婦役を務めるようになっていく謎の女性「広美」。


普通の女性にはとてもできないほどに献身的に働いて(特に子どもの面倒を丁寧に見て)家庭が立ち直りそうになるとふらりと家を出て放浪の旅に出かけます。

その様はまさに西部劇に出てくるさすらいのガンマンのよう。まさに母親ウエスタンではあります……というのはむしろ男性側の勝手な視点で🫤


行く宛のない女性の必死な行動に、男性側にだけ通用する勝手な理由づけをして、都合よく母親役を押し付けた挙句、不要になればまた追い出してしてしまう……と、こう要約するとまたニュアンスが違ってしまうので難しい問題ですが。


ともかく主人公 広美はさすらいの女性。行き着いた家庭で良くも悪くも理想の母親を演じることで生活の糧を得ています。

去る時には若干の対価を(場合によってはこっそりと)いただいて、また次の町に向かいます。命の恩人として感謝されることもある反面、それは一種の詐欺として見ることもできる危ない所業。

彼女はなぜそんな真似をするのか……。


かつて広美を「母」として慕ったこともあるかつての「子ども」たちが、広美の素性を探ることで物語は複数の視点で推移します。


広美は空虚な女性で、理想の母親像は単なる幻想。

しかし人が生きるためには絶対的にその「幻想」が必要だというのなら、いったい誰が母親役を担うべきなのか。


本作の執筆は2012年。「維新の会」を思わせる政治勢力の伸長を不気味に予言しつつ、広美がささやかな幸せを求めてまた新たな町に旅立つところで本作は幕を閉じました。







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