この本を知ったのはこちらのブログ様👇から。
中国魏晋南北朝時代の帝王詩人・曹家三代のアンソロジーです。出典を 文選 から多く取っており、こちらの記事とも関連が深いといえそう。
と、いうわけで川合康三編訳「曹操・曹丕・曹植詩文集」岩波文庫より、です。
詩文を嗜む帝王はいても、詩人として名を残した帝王はごくわずか。その数少ないうちの二名が三国志で有名な、のちの魏の武帝こと曹操と、その後を継いだ文帝こと曹丕。
そして帝位にはつかないながらも曹丕の弟にして曹操から深く愛され、のちに曹丕とは反目し不遇に人生を終える悲劇の詩人・曹植によるアンソロジーです。
三国志では悪役に回されがちな魏ですが、詩文の世界にはしっかりと名を残すことに成功しています。とはいえちゃっかり諸葛孔明の「出師の表」も本書に収録されているのですが😅
詩を味わうという読み方もさることながら、詩文を通じて三国志の英雄たちの素顔をあれこれ想像するのが楽しいかも🦆
知識人にして叩き上げの英雄ながらちょっとナルシストが入ってる曹操。
わりとお坊ちゃん気質で時に臣下に向けて力自慢をしたがる稚気溢れた曹丕。
なんといっても不覊奔放な自由人、才気に溢れた一匹狼の曹植。
まあ、わたしの勝手な脳内イメージではありますが😅
600頁近くある本書のかなりの部分が曹植の詩で占められています。やはり群を抜いた詩人でありましたのでしょう🥲
編訳者はコロナ禍で本書をまとめつつ、時に三国時代の彼らに対して、現代人に感じるそれと同等以上のシンパシーを感じたと。
千里を駆ける戦国の武将と、ステイホームの現代人とでは真逆のような気がしますが、もしシンパシーがあったのならそれは命に関する切迫さということになるのかも。
明日どうなるか分からない中で、それでも後世に何かを残したいという欲求は時代や国を問わないのかもしれません🥲
曹植が疫病に苦しむ庶民を見て、貧しい人たちにその禍が多くのしかかり、富めるものは禍を多く逃れることへの矛盾を嘆じる詩があります。
現在の政治家の言葉にそれに比肩するものがあるかどうか甚だ心許ない気がしました。
神仙に憧れる詩が少なくないのは後の南北朝時代の詩文につながる系譜を感じさせますが、健康的な瑞々しさをまだ保っていること、魏の頃はまだ庶民の逞しさが王朝にも脈打っていたのだなと感じさせます。

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