中学生の頃、怖い男子が居た。

その中学では一番のワルらしく、姿が見えると緊張したものだ。

彼の周りには10人くらいの仲間がいつもいて、特殊な格好をしてたむろしていた。夏休みや、冬休みが終わって新しい学期になると、その仲間が一人二人と学校に来なくなる。

来られなくなってしまうのだ。

その怖い男子が、処分をしてしまう、そいういうわさが出まわった。うわさはうわさで終わり、でも、休んでいた子達は最後まで戻ってこなかった。

派手なやんちゃではなく、静かに進む恐怖の統治(ブルブル)
彼の母親が、私の母親が知り合いで、行き来があったらしい。怖い男子は、母同士のつながりを知っていて、私にはおっかないことはしなかった。

私は母つながりで守られている安心感はまったくなく、その使い分けが怖かった。

彼は、「自分の母は大切にしている、実はいい子」なわけではない。

彼が母にも反抗的で、学校にも世間にも反抗して、あばれているほうがまだ分かりやすい。母には、適当に合わせて、いい子でいて、学校でも彼はぎりぎりの格好で咎められることなく、ちゃんと学校に来て普通に卒業しちゃったのだ。どうして彼が恐怖政治をしたのかが、よく分からなくて、それが怖かった。

その恐怖が、悪役をやる浅野忠信の目を見るとよみがる。