若者の就労支援団体が、思いっきりゲームができる環境を作ってみたワケ | 若者と社会をつなぐ支援NPO/ 育て上げネット理事長工藤啓のBlog

若者の就労支援団体が、思いっきりゲームができる環境を作ってみたワケ

 

人生で最も時間を使ったゲームがウイニングイレブンの工藤です。

 

事務所に空間を作って、若者や子どもたちがeSports(など)のゲームを本気でやれる場所を作ろう、と考えました。もともと多くの「居場所」事業などでは、ゲームがあって、それを好きにやってもいいし、やらなくてもいい、というのはありました。

 

育て上げネットの #ジョブトレ フロアにもテレビとゲームはありますが、それはテレビを見ながら、みんなで語らうためのもの。主に関係づくりやコミュニケーションの発生手段の位置づけです。

 

今回、僕らが写真のような環境(「ガチですね」というコメントもいただきましたが)を作ったのは、これまでのゲームの意味を踏襲しながらも、新しい就労の可能性を模索するためでもあります。

 

1. 手段の目的化

 

就労支援は、そのひとにあった「働く」を一緒に考え、伴走していく行為です。そこには就職支援もひとつの手法として含まれます。就職支援は突き詰めると「雇われる」ための支援ですが、就労支援はもう少し幅の広い支援です。仕事のが変化し、働き方や稼ぎ方も変わっていくなかで、ある若者にとってはいますぐ取り組むことは就職支援ではなく、もう少しそのひとに合った働き方を獲得することではないか。

 

本人の希望が一番ですが、就職支援しかできない場合は、本人に支持されないか、または、就職支援に入ってもらうしか選択肢かなくなってしまいます。少なからず支援者にはそこに疑問を持っていることはあります。

 

今回の環境作りは、一直線に就職や就労を目指すというよりは、「手段の目的化」と僕は位置付けています。若者や子どもに提示されることの多くは、仕事に就くか、勉強するか、が多いです。公的事業は特にそれが目的で設計されていますね。

 

ただ、仕事や勉強に目的がない若者や子どもにとっては、足を運ぶインセンティブや気持ちにはなりません。そのため本来は手段のひとつである「ゲームができる環境」を目的に置き換えることで、若者との出会いを作りたいと思っています。

 

ここらへんは(一部の子ども食堂や子ども宅食)コンセプトに似ています。提供しているのは「食事」かもしれませんが、本当の目的がつながりの創出や、そこからのソーシャルワークが本旨であるものです。

 

その意味で、就労支援団体が提供する機会の目的は就労ですが、手段であるゲームを若者にとっての目的にしてもらって、出会える機会の創出を目指しています。

 

2. 思い切って環境作りに取り組んだ理由

 

育て上げネットの財務諸表を観ていただくとわかりますが、非常にキャッシュフローが弱い組織です。専門家からもよく指摘を受けます。今回の環境作りは、それなりにパワーのあるパソコンや、ゲーム用の机や椅子、そして十分なネット回線の確保のための工事と、コスト面でとても迷うことがありました。

 

しかし、多くの方からお預かりしている寄付も活用させていただき、思い切って作ってみようという考えに至ったのは伏線があります。それは、昨年から月に一回など頻度は少ないですが、LAN PARTYというゲームデイを作っていました。プレステやSitchを持ち寄って、みんなで集まってゲームをやる日。もちろん、やらなくてもよいです。

 

そこには若者や子どもたち、スタッフがさまざまなゲームをできる一日ですが、地域の教育関係者や、若者、子どもたちを支援する多様な関係者から、続々と若者や子どもたちがつながってきたことです。就労や学習であれば難しくても「ゲーム」となれば、若者や子どもたちにかかわる関係者も、「一度いってみない?こんなのあるよ?」といいやすい。

 

彼、彼女がゲームを好きなことを知っているわけですから、当然いいやすい。そして、それを聞いた本人も「ゲームなら」と足を運んでくれました。本当にこれまでネットワークや連携という言葉でつながりのあった組織や施設、関係者から、続々と。

 

その後、コロナの影響が出て開催が難しくなりましたが、その間も、さまざまな取り組みの中にゲームを入れていきながら、「ゲーム」という手段を目的にすることの価値に理解が深まりました。

 

新しい若者、子どもの「居場所」作り。どうぶつの森、Switch、YouTubeを組み合わせて

 

認定NPO法人育て上げネット「GW消化計画 24時間ゲーム実況」をします!

 

3. 実現はこれからですが

 

ここ数年、個人や企業のビジネスパーソンから若者や子どもたちの役に立ちたいというお話をいただきます。もちろん、多様な形でお力をお借りしているのですが、移動制限や集合が難しくなるなかで、できることがやはり限定的です。

 

いま、複数の企業さまで(オンラインで)社内研修・社内セミナーをさせていただくのですが(ご依頼ありがとうございます)、そこでのひとつのかかわりとして、ビジネスパーソンとしてよりも、「ゲームが好き」「結構得意」であれば、個人または企業単位でチームを作って対戦してもられませんか?と話しています。

 

興味深いのは、そこでは質問や賛同はないのですが、研修セミナー終了後に設計担当者のとこに、「やりたい」の声が集まり「あの場では言いづらかった」という話があるそうです。

 

まだ工事が途中ではあるのですが、これから少しずつ就労支援にゲームを取り入れていくチャレンジをします。育て上げネットeSportsチームを作って大会に出たり、世界中のひとたちと対戦を通じたコミュニケーションをしたりと、ひとりで自宅でゲームではなく、みんなで本気でゲームをすること、を手段ではなく目的としてやってみようと思います。

 

Tシャツとか作りたいので、スポンサーしてもいいよとか、私(たち)のチームと対戦しましょう、というお話、大歓迎です!