野毛の横浜にぎわい座にて、「万作、萬斎の会」を拝見しました。


母の介護中は、もう萬斎さんの狂言を拝見できる日は来ないだろうと思っていましたが、まさかまさか横浜にぎわい座で野村家親子3代の狂言を拝見することができるとは。

僥倖なり。


最近ドラマ「アンチヒーロー」で、まだ正体はよく分からないけど何やら不気味で怖ーい役を演じていらっしゃる萬斎さん。本当にお久しぶりの生狂言を拝見しました。



客席に座ると私が知っているにぎわい座とは全く違うピリリと緊張感漂う雰囲気にドキドキ。


私は2階席でしたが見下ろすと高座に座布団が敷いてあるではありませんか。


どうしてかしらと思っていたらなんとなんとお囃子の音が!


上手から萬斎さんご登場。

座布団の上に座り落語家のように扇子を前に客席に向かってお辞儀をした時、大きな拍手の中で一瞬にして客席の緊張が溶けてゆくのを感じました。

本当に萬斎さんらしい粋な演出だなと思いました。


「普段、寄席をやっているところでは、やっぱり座布団に座って話してみたいという、ね。」

ということで客席爆笑でした。


本日の狂言の曲の説明と、落語(落語は三遊亭竜楽さんがなさいました)とのコラボに至るまでの解説のあと、なんとなんと萬斎さんの「素狂言」という名の「狂言落語?」をご披露してくださいました。

演目は「柑士」。


「落語と狂言は似たところがあると思うんですよ」という萬斎さんのお言葉通り、あれはもう完全に落語でしたね。


座布団一枚の上の一人芝居。

素晴らしかったです。


萬斎さんのご著書に、「古典ばかりにとらわれていては古典のまま終わってしまう。

それなら博物館にしまっておけばいい」というようなことをお書きになっておられます。

私も本当にその通りだと思います。


手を変え品を変え、いろんな風に変えながら今に伝わる伝統芸能を見せて頂きたいとおもいます。



狂言「鏡男」

にぎわい座の下手を橋掛かりに見立てて厳かに始まりました。


鏡を知らない女房が鏡に映った女を旦那さんの浮気相手と思い込むというおはなし。

お久しぶりの石田さん。

とても楽しい曲でした。


落語「松山鏡」三遊亭竜楽

竜楽師匠のことは私は存じませんでした。ごめんなさい。


竜楽師匠は万作さんや萬斎さんに狂言を教わっているのだそうです。

「前座の噺が良かったからどうしようかと思ったけれど、切りよく上げて下さいました。さすが萬斎さん」というように仰っていました。


「松山鏡」という落語は、正直者で親孝行の男のことをお上が知り褒美をあげよう。というおはなし。

男は何もいらないから、どうか亡き父にもう一度会わせてほしいとお上に頼みます。

お上は鏡を男にあげます。

鏡を知らない男は鏡に映る自分を父親と思い泣きながら喜びます。

私はこのシーンでもう涙が流れてきました。

このお噺も人情噺と滑稽噺のコラボと言う感じのおはなしでした。サゲが面白かった。

楽しませて頂きました。

有難うございました。


〜お仲入り〜


狂言「縄ない」

万作さん、萬斎さん、裕基さん、親子3代の狂言を横浜にぎわい座で拝見できる日が来るなんて!


伝統芸能を拝見していて一家の伝統が脈々と伝えられていくさまを見られることほど嬉しいことはありません。

お猿さんの面をつけて「それ月を見て」という万作さんの声に小さいお手々を月に向かって上げていた3歳の裕基さん(随分前にNHKで拝見しました)。ご立派になられて。

裕基さんが3歳の頃、お父上の萬斎さんはアンチヒーローの検事みたいに怖かったですね←いえ、違うふうに怖かった。



「縄ない」は、タイムリーにもギャンブルで負けた男のはなし。

萬斎さんも思わずタイムリーな御人の話をなさって客席を盛り上げてくださいました。


万作さんの、嘘をつく長い一人芝居が素晴らしく、ずっと聞いていたかったです。

万作さん、お元気そうで良かった。



一時期「鏡」にこだわっていた萬斎さん。


ハムレットの例をとり「人生は鏡のようなもの」と今日もおっしゃっていました。


狂言「鏡男」の中でも「鏡は人の影を映すのだ」という台詞がありました。


「横浜 万作、萬斎の会」は午後四時半からの部もあるようです。

チケットがあるかどうかはわかりませんが…


他とは異なる萬斎さんの狂言と落語のコラボの世界を是非観ていただきたいと思います。


今日は、信じられないこと尽くしの楽しい演出の野村家一門の狂言と竜楽さんの落語を拝見することができました。


幸せなひとときをどうも有難うございました。






5月4日の母の一回忌の法要を待つのみになりました。