2013年、88冊目。橙乃ままれ 『ログ・ホライズン 2 キャメロットの騎士たち』
シリーズ2作目。
アキバの街の無軌道ぶりに業を煮やしたシロエが円卓会議を組成するべく謀るという話。
セララとにゃん太を連れ、アキバの街に帰り着いたシロエたち一行。
彼らの帰還は、にゃん太による「おいしい料理をつくる秘法」とともに、三日月同盟に大歓迎される。
その歓迎に圧倒されつつも、シロエはマリエールの語るアキバの街の変化を聞き、不快なものを感じていた。
シロエが大災害の直前に指導していた初心者プレーヤーであるトウヤとミノリは悪質なギルド「ハーメルン」に拘束されていた。
初心者がゲームに馴染めるように提供される「EXPポット」(攻撃力・防御力アップ、経験値アップ)を搾取するために、ハーメルンは初心者らを集めていたのだ。
あらためてギルドの在り方等を考える過程で、シロエは自らも世界に責任を持って関与すべく自身のギルド「記録の地平線(ログ・ホライズン)」を立ち上げる。
メンバーはシロエのほか、直継、アカツキ、にゃん太だ。
早速、シロエはアキバの街を変えるべく、三日月同盟に協力を求める。
逡巡するマリエールらだったが、シロエの言には一理も二理もあり、メンバーの賛同を得て協力を約束する。
まず、手がけたのは、にゃん太のもたらした料理の秘法を活用し、アキバの店に「軽食販売クレセントムーン」。
味気ない食事に嫌気のさしていた人々にとって、美味な料理は少々の値段には変えられないものだった。クチコミでクレセントムーンの評判は一気に広がり、アキバの街を席巻する。
しかし、材料を自家調達するにも限界があり、次のステップとしてヘンリエッタは、生産系ギルド第三位<第8商店街>のカラシンを呼ぶと、材料の調達を依頼する。
合わせて、同じく生産系ギルド1位の<海洋機構>総支配人ミチタカ、同第二位の<ロデリック商会>のロデリックも合わせて、今後のプロジェクトに向けて、多額の出資を求める。
その額は金貨500万枚。
あまりの巨額のことに驚く三人だが、クレセントムーンの示す可能性の裏にある秘密の利を慮った三人は、出資することを約束する。
これで準備は揃った。
マリエールはシロエと連盟で、アキバの主要ギルドに会議の招待状を送付する。
<黒剣騎士団>総団長アイザック
<ホネスティ>ギルドマスター、アインス
<D.D.D.>クラスティ
<シルバーソード>リーダー、ウィリアム
<西風の旅団>ギルドマスター、ソウジロウ
<海洋機構>総支配人ミチタカ
<ロデリック商会>ギルドマスター、ロデリック
<第8商店街>カラシン
<三日月同盟>ギルドマスター、マリエール
<グランデール>ウッドストック
<RADIOマーケット>茜屋=一文字の介
<記録の地平線>シロエ
集まったメンバーらを前に、シロエはアキバの現状の課題を指摘し、円卓会議の創設を提案する。
早々に<シルバーソード>が退場してしまうが、出席する誰もが同じ思いだった。
結局のところ、治安を守るのは戦闘系ギルドにならざるを得ず、利害が異なるなかで纏まるはずがないこともわかっているのだ。
しかし、そこにシロエは爆弾を落とす。
アキバの中心であり、各種サービスの源となっているギルド会館というゾーンを買い取ったというのだ。
ゾーンへの入退室は所有者、即ちシロエによって制約を受けるのだ。
これは強力な強制力となりうる。
出席したメンバーはその実効性を理解するとともに、脅迫ともとれる提案をするシロエを非難するが、シロエはアキバの現状そのものが大手ギルドの脅迫であると主張し、論破する。
このギルド会館購入にあたっての資金は生産系三ギルドの出資した金貨500万枚。
騙されたことになる三人だったが、既に、クレセントムーンの有する料理の秘法を開示され、そのことが更に各種の生産にも活かせることを知り、わだかまりなどなくなっていた。
むしろ、この秘法の更なる可能性に目が向けられていた。
既に蒸気機関まで開発されるに至っていたのだ。
その可能性を語り、シロエの提案に賛同する生産系ギルドらの言葉に戦闘系ギルドも、その実効性をあらためて評価し、円卓会議を持つことに賛同するのだった。
一方、会議と並行して、シロエは三日月同盟と協調して、<ハーメルン>の撲滅作戦を実行していた。
ミノリとの念話を通じて作戦を指示し、脱出するミノリやトウヤらの初心者プレイヤーを直継やアカツキ、三日月同盟の小竜らが救出するのだった。
ギルド会館の所有者としてシロエは、<ハーメルン>メンバーのギルド会館への進入を不可としたため、結果として何もできなくなった<ハーメルン>は解散を余儀なくされる。
救出された初心者たちの多くは、救出を手がけた小竜の侠気に惹かれ三日月同盟に参入するが、その他のギルドにあらためて加入する者もあった。
トウヤとミノリは<記録の地平線>への加入を申し出るのだった。
中身は必ずしも厚くはないが、軽いエンターテインメント作品として安心して読める作品。
物語の秩序って、比較的所与のものとして与えられていることが多いので、そういった側面に目を向けるところが作者らしいか。
とはいえ、秩序というベースのところにまで手を突っ込むのだとすれば、その先に構築していかなければいけない物語というのは、一体どこまで精緻なものになっていくのか。
そのあたりが楽しみだ。
お薦め度:★★★☆☆
再読推奨:★★☆☆☆