Freelunch2013年、24冊目。小川一水『フリーランチの時代』



SF短編集。





フリーランチの時代



火星越年隊の橿原三奈は船外事故で生死の境を彷徨うなか、エイリアンから問われる。



「生きる?それとも死ぬ?」



生を選んだ三奈の身体は・・・。





Live me Me.



女子大を卒業し、間もなく就職という私は交通事故に遭遇し、大怪我。脳幹に大穴があき、脳死と判断されかねない状態だったが、生きていた。



機械につながれたまま回復の見込みがゼロという私だったが・・・。





Slowlife in Starship



月面基地隊員の互助組織、月面滞在者横断連絡会議に端を発するスピノールが太陽系開発を進め、人類社会に大きな発言力を持つにいたった未来。



新興勢力である小惑星帯に住むベルターの躍進の前に、スピノールは危機感を募らせていた。



人嫌いの一匹狼のなんでも屋、カール・ルンドマルカ・十軒原にもスカウトの声がかかるが、十軒原はハウスキーパー型ロボットであるミヨと自由な仕事に満足していた。



そんなある日、向かった仕事先で出会ったのは、かつて宇宙開拓時代に打ち上げられた惑星探査機ハヤブサのターゲットマーカーを探す男だったが・・・。





千歳の坂も



病気を克服し、実質不老不死が実現した未来の日本。国は厚生勤労省健康維持局を設け、全国民に法定延命措置を施していた。



健康維持局の羽島は、延命措置を受けず、その罰金にも応じない安瀬眉子に会って説得を行うが・・・。





アルワラの潮の音



ポナペの浜へ戻った戦士たちが告げたのは、ホンアブレの反乱。



同盟国であったホンアブレに対し、アルワラ(族)は討伐の兵を出す。



未だ戦士ではないク・プッサだったが、親友であり有力な戦士カカプアに促され、ともに討伐の船に乗る。



しかし、ホンアブレで彼らを迎えたのは、奇怪な生物と兵器だった。



次々と僚友を失っていくなか、ク・プッサは・・・。





オーソドックスなSF短編集で、なぜだか懐かしい感じ。



そう言えば、いかにもなSFって、あまり読んでいなかったことに気付かされた。



各話ともそれぞれにSF(テイスト)ではあるもの、それぞれ持ち味は異なる。



冒頭の表題作「フリーランチの時代」は実は重いテーマであるにも関わらず、かなり楽観的に軽く描かれ、微笑ましさすら感じる。



「Live me Me」は一番SF色の強い作品。SFもしくはロボット物のテーマとしても扱われる人間の定義に類する考察を絡めた作品で、かなり硬派。



「Slowlife in Starship」は一つの未来世界を提示し、その日常にハヤブサの偉業を絡めた作品。はやぶさの帰還を記念して創作された印象の作品だ。



「千歳の坂も」は、やや哲学的な色彩を帯びる作品か。逆転の発想で、健康で長生きすることの善悪をコミカルに役人と規則違反者の対峙で示す。



「アルワラの潮の音」は、よくある未開種族もの。個人的にはやや見下すような神の視点がそこはかとなくうかがわれるため、あまり好きではない。



様々なタイプの作品で構成され、最後まで飽きさせられなかった。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆