Local2013年、25冊目。真保裕一 『ローカル線で行こう!』



赤字ローカル線復活に向けたJRアテンダント出身社長の活躍譚。





宮城県の第三セクターの赤字ローカル線、もりはら鉄道に出向となった宮城県庁の鵜沢哲夫は株主総会で副社長に就任する。



しかし、同時に就任した新社長はもりはら鉄道会長であると同時に森中町長五木田陽造がスカウトしてきた女性だった。



東北新幹線でカリスマとよばれたアテンダント篠宮亜佐美。



鵜沢よりも若い女性の社長登用に、県庁や銀行など株主は、存続の危機をむかえるもりはら鉄道の舵取りをまかせることに懸念を示す。



しかし、5カ月で結果を出すと啖呵を切る亜佐美の前に、株主総会は押し切られる。



亜佐美は敢えて素人女社長であることをアピールすることでマスコミを味方につけると、イベント列車に自身も乗り込み、アテンダントとしての腕を如何なく発揮する。



人員削減や赤字・倒産の危機を前に沈みがちとなる社内の空気をかえていくなか、もりなか鉄道は少しずつ変わっていく。



地元出身でもある亜佐美は、地元との共存を目指し、次々と地元を巻き込んだイベントを立ち上げていく。その勢いは地元の信頼も得ていく。



一方、赤字ローカル線に飛ばされて拗ねる一方で、亜佐美のやり方の危なさに懸念を示す鵜沢だったが、徐々に亜佐美のペースに巻き込まれていく。



県庁時代には味わえない充実感に、仕事への熱意を傾ける鵜沢。



しかし、順調そうにみえるローカル線立て直しだったが、不自然な事故等が重なる。



ローカル線立て直しへの妨害工作とも思われる一方、証拠は出てこない。そもそも妨害工作を行う動機が見当たらない。



赤字削減が進むなか、崖崩れによる被害が発生し、大きなダメージをうけるもりはら鉄道。



妨害工作の証拠を見つけようとする鵜沢と亜佐美だったが、五木田にもまた県庁から圧力がかけられていた。五木田の森中町への補助金申請が通らなくなっているのだ。



妨害工作を調査するため、亜佐美はもりはら鉄道にやってくるきっかけともなった元恋人に不本意ながらも協力を求める。鵜沢も出向と同時に距離を置いていた県庁に勤める恋人に調査を依頼する。



見えてきたのは宮城県庁副知事の暗躍。



更に、五木田の過去の因縁から五木田に恨みを持つ人物も現れて・・・。





やや奇をてらった部分はあるものの、エンターテインメント作品としてはきちんと構成されたお話になっている。



ややドラマ性を意識するあまりに、散漫になっている部分もあるが、全体からすればご愛嬌か。



登場人物では主要人物である亜佐美が社長として抜擢するにはやや奇天烈というか、ちょっと慎重さに欠ける部分があるので、やや現実感は薄い。一方で、役人である鵜沢についてもステレオタイプの一面、妙に柔軟さを見せるところが、現実味を損ねている。



勿論、現実的に時間を要する変化であれば話が進行しないのだろうけれど、やや設定が作りもの臭が強くしてしまう弊がある。



亜佐美と鵜沢の恋物語的な側面もあるのかと思いきや、そこは見事に外してくるところはなかなかくすぐるが、ここまでドラマ仕立てにするのなら、いっそお約束で通しても良かったような気もする。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆