Boku2syonen2013年、61冊目。仁木英之 『撲撲少年』



少年時代の友人に挑発されたことをきっかけに総合格闘技に取り組み、葛藤をかかえつつ、友人にリベンジする話。





柳澤勇吾は単位の計算間違いで、大学留年を余儀なくされる。



そんな勇吾に父明は仕送りを止めると通告し、学費や生活費は自分で稼ぐよう突き放す。



そんな勇吾を救ったのは、父の友人でもある登山家の中村茂だった。



山で怪我をした中村は、精神的にも怯み、病院を出ることができないでいた。



退院するまでの間、中村は自身のマンションを勇吾に貸し与えるとともに、バイト先も斡旋する。



バイト先であるカレー屋”メイサイ”もまた山仲間の営む店。



勇吾はオーナー夫人の小山祥子や店員の鵜飼里美にも気に入られ、バイト生活が始まる。



その店の取材に来たのは、転校続きだった少年時代に親しくした数少ない友人の一人、鳥居湊だった。



突然の再開に驚く勇吾に、湊はもう一人の友人岩倉鉄也もまた東京に出てきていることを告げる。



鉄也に会うために勇吾が湊に連れていかれたのは、総合格闘技MMAのジムであるアライズ。



そこに出稽古に来ている鉄也に再会した勇吾は、なぜか鉄也の挑発に乗せられ、”極めっこ”と呼ばれるスパーリングに参加することになってしまう。



手も足も出ないままに、鉄也にいいようにあしらわれた勇吾は、逡巡の後、アライズに入会する。



初心者用のクラスに入った勇吾はそれなりに練習に取り組む一方で、このままでは鉄也には追いつけないことに焦る。



勇吾を見かねた副代表の宮沢孝やプロ選手の功、拓馬らの勧めもあり、勇吾はプロの練習に参加することを許可される。一般のコースとは全く異なる雰囲気に圧倒される勇吾だったが、少しずつ雰囲気にも馴染んでいく。



孝の試合や合宿を経て、勇吾もまた少しずつ総合格闘技にのめり込んでいく。



一方で、勇吾は鉄也が勇吾に示す敵愾心が理解できない。



しかし、合宿に参加した勇吾、鉄也の目の前で、湊が攫われそうになった一件を契機に少年時代の勇吾の一言が鉄也を変えてしまったことに気付かされる。



そして、孝や功の前座で、鉄也との試合が組まれることとなる。



更に研究を重ね、練習に励む勇吾に湊もまた協力する。



DVDを返すことを理由に湊の部屋を訪ねた勇吾は、近くの公園で鉄也と抱き合う湊を見てショックを受ける。



やる気をなくした勇吾だったが、一方で勇吾の試合に励まされようとしている人もあった。



勇吾の試合を観るために、中村はその恐怖を克服し、病院を出ようとしていたのだ。



祥子に背中を押され、大会会場に向かった勇吾を孝や功は手荒く迎え、そして鉄也との試合が始まった・・・。





話がビジュアルで面白い。やや専門色が強いような、思い入れが強いような気もしないではないが、楽しめる作品だった。



登場人物が少ないために、かなり話がぶれずに一直線というのも話がわかりやすい一因か。



ただ、中村や祥子、里美など魅力的なキャラクターの出番がやや少なかったことは残念。



あと、この話の根幹を為すのが、「なぜ鉄也はあそこまで勇吾に敵愾心を示すのか」というところだが、説明はあるものの、やや不足の感は否めない。



きっかけとしては理解可能だが、そこからの成長過程が見えない。



また、その過程での湊の役割や、湊の最後の台詞もわかりにくい。



総じてみれば、総合格闘技道場の活写という面での面白みが立っている一方で、やや小説面での面白みにやや難ありという感じだろうか。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★★☆☆