2013年、55冊目。山本弘 『MM9 -destruction-』
シリーズ3作目。ヒメにまつわる物語の完結編。
案野一騎、その母案野悠里、同級生かつ恋人(?)の酒井田亜紀子は秘かに警視庁警備課の手によって隔離される。
情報が内部より漏れている懸念が高いなか、隔離先は秘匿される。
ヒメもまた別途同じ場所に隔離されることとなる。
集合したのは茨城県東海村。
一行が辿り着いた神社で待ち受けていたのは、御星ひかる。一騎好みの少女だ。
ひかるには、かつて(大正時代に)現在ヒメに憑依しているジェミーが憑依していたのだという。
同行した気象大学校の怪獣史の権威稲本昭彦の推理・解説により、神社が祀る神々が語られる。
神社の狛犬に相当する場所に置かれたものは、牛頭天王とカガミ。
祀られる神々は世の変遷のなかで変化してきたものの、元は怪獣であったと稲本は語る。
そして、ひかるはカガミに対する人身御供・巫女として差し出され、それ以降、歳をとらなくなったのだという。
更に、ひかるは、17年前の阪神地区での怪獣災害にもカガミが関わっていたこと、そして大正時代の怪獣大災害はゴズ(牛頭天王)の仕業であることを語る。
廃仏毀釈によりゴズ(牛頭)を抑えるカガミの力が弱くなったことで、ゴズが暴れたことを鑑みた政府により神社が再興されるとともに、ひかるの存在は機密事項として伝えられてきたのだった。
隔離され、連絡をとることの出来ない一騎は、一人、稲本の紹介した伴野英世著作を読み進める。
一方、韓国では透明の吸血怪獣が現れ、騒然となる。
間もなく、日本にも飛び火した透明怪獣騒ぎのなか、気象庁特異生物対策部の久里浜に連絡をとってきたのは公安調査庁の校倉太一。伊豆野幹生を保護した校倉は久里浜に敵対宇宙人の思惑を語った。
ターゲットはヒメだ。
稲本に憑依したチルゾギーニャ星人は稲本の記憶を読むと、ヒメの潜伏先を知る。
各地に現れた透明怪獣は、一途、ヒメのもとを目指して、飛び立つ。
しかし、ヒメの潜伏先を知らない久里浜ら気特対は、またしても東京が狙われると見て、東京に怪獣警報を出す。
直前になり、怪獣の目指す先が茨城県の東海村であることを知った久里浜らは原発の存在に思い至り、青ざめる。
神社を襲った各種のUFOが浴びせるビームにより人々はチルゾギーニャ星人に憑依されていく。
憑依された人々に追われる一騎、ヒメ、ひかる、亜紀子は、亜紀子の運転する四駆で逃走をはかるが、多くのUFOに遮られ、逃げることはできない。
合体してロボット状になった金属怪獣(怪獣8号”ゴウキング”)の登場に、自身の敗北を予言し、一騎に別れを告げたヒメは巨大化して立ちふさがる。
一騎やひかるもロケット砲を用いて援護するが、透明吸血怪獣(怪獣7号”アブソーラス”)も参戦したことで、ヒメは血を抜かれ動けなくなる。
金属怪獣から分離したUFOが黒い霧をヒメに浴びせると、ヒメは金属状の物質で覆われてしまう。
茫然とする一騎とひかる、亜紀子は突然現れたチルゾギーニャ星人と連携する勢力に拉致されてしまう。
一旦は確保された三人だったが、ヒメから分離したジェミーが亜紀子に憑依し、隙をついて脱出をはかる。スカイツリーから逃げた男、真樹の猛追の前に観念しかけた一騎だったが、彼らを伊豆野と校倉が救う。
伊豆野はチルゾギーニャ星人の背信を知り、敢えて仲間を裏切ったのだ。
過去の地球における神話と同様に、地球の神話体系を乗っ取るべく、怪獣神ギガントは来襲するのだ。
一方、金属化したヒメの自由を確保すべく、案野悠里のもと、ヒメの外殻を撤去する作業が進められるが、なかなか進捗しない。
国営ひたち海浜公園に突如出現したミステリーサークル目指し、地中から戦車状の怪獣(怪獣9号””メカモグラ)、空から蛇型の怪獣(怪獣10号”ガラコブラ”)が現れる。ともにMM8級だ。
その二体に挟まれたミステリーサークルの空間を切り裂いて、MM9級の怪獣神ギガント(怪獣11号)が降臨する。
二体の怪獣を付き従え、ギガントは金属化したヒメのもとへ向かう。
ヒメ(女神)の危機に、現れたゴズ(怪獣12号)とカガミ(怪獣13号)は、それぞれメカモグラとガラコブラに立ち向かう。
居ても立っても居られない一騎もまた、ヒメのもとに向かうが・・・。
面白かったといえば、面白かった。一方で、2作目で期待(渇望)したほどには面白くなかったという印象。
ヒメの正体を巡り、(とんでも)学術の展開部が多く、どうもスピード感に乏しい。
ゴズやカガミといった地球産の怪獣神の解説もやや説明っぽいし、今回はやたらと肩が凝って、頭を使う作品だった。
その意味で、ギガントらの侵攻後こそが本番だが、なんだか呆気なかった。
勿論、その前にも金属怪獣や吸血怪獣らとの戦いもあるが、どうも(結果はともあれ)前座臭がぷんぷんして、面白さはあまりない。
気特対の活躍もあまり見られず、(ヒメ救出の奮戦もあるが、どうも見栄えせず、)ちょっとこの面でも物足りない。
話自体は完結した感があるが、これで終わってしまうのだろうか。
続編があることを期待したい。
お奨め度:★★★☆☆
再読推奨:★★★☆☆