Maoyu32013年、59冊目。橙乃ままれ 『まおゆう魔王勇者 ③聖鍵遠征軍』



シリーズ3作目。



魔王廃位・暗殺の企てを経て孤立化する蒼魔族の百夜国への侵攻と、それを迎え撃つ南部諸王国を背後から襲う第三次聖鍵遠征軍という大きく物語が動く巻。





忽鄰塔の大会議で魔王廃位の評決が行われる。



賛成に、蒼魔族、獣牙族、巨人族、機怪族、



反対に、妖精族、鬼呼族、



棄権に、人魔族。



反対に火竜族が与しても廃位賛成の過半数は覆らないかと思われたが、火竜大公は呼び寄せた東の砦将を衛門族の長として紹介し、賛成の過半数を阻止する。



安堵する魔王を狙撃の弓矢が襲い、魔王は倒れる。



魔王が死んだとの報にほくそ笑む蒼魔王のもとに、魔王たるべき印、刻印をその両目に持つ王子”刻印の蒼魔王子”が到着する。



魔王になることを確信する刻印王子は、父親である蒼魔王を弑し、新王”刻印王”となる。



忽鄰塔で行われた新魔王の選出により、刻印王が新たな魔王に選出されるが、その最中、冬の国の執事により魔王暗殺犯が暴かれる。



暗殺者が蒼魔の家臣(ただし、蛇蠱族=獣牙族)であることを非難する面々に、魔王となった刻印王は動じない。



魔王廃位のための忽鄰塔は魔王でなければ開催できないからだ。刻印王には忽鄰塔を開催するつもりなどない。



そこに現れたのは死んだとされた魔王。



形勢逆転のなか、黒騎士は刻印王と対するが、その実力は互角。



そのなかで蒼魔族は撤退する。



怪我の癒えない魔王は火竜大公ら他の族長に、今後のことを委ねる。



火竜大公のもと、蒼魔族への対抗措置および蒼魔族制裁の落とし前が検討される。





一方、聖王国では王弟元帥によりもたらされたマスケット銃により軍の再編がなされる。



飢える開拓民や農奴らを”光の子”として教会の尖兵としてマスケット銃を担う軍として組織するのだった。



また、蒼魔族とも通じた聖王国は、弱体化した百夜国を蒼魔族に狙わせる。



これに応じた蒼魔族は、魔族間の抗争を避け、白夜国を急襲し、陥落させる。



突然の事態に震撼する南部諸王国だったが、一方で魔族にも蒼魔族の動きは驚きを与える。



魔族の会議では蒼魔族の追討が決し、人間界への侵攻の意図がないことを人間に伝える役割を妖精女王が担う。



黒騎士の仲介で冬寂王らに面会した妖精女王はその意を伝えるが、魔族の言うことを簡単に信用できるはずもない。



しかし、そのうちにも白夜国からの蒼魔族の侵攻は始まり、女騎士、軍人子弟らにより防衛線が張られる。



白夜国で捕虜となった兵士を前面に出す蒼魔族のやりくちに手こずる女騎士らだったが、なんとか戦線を維持する。



妖精女王の交渉を待てないまま、獣牙族らは蒼魔族の側面をつき、蒼魔族を慌てさせる。



後方から現れたのは、王弟元帥の指揮する”光の子”のマスケット銃部隊による聖鍵遠征軍だった。蒼魔族、獣牙族、南部三国連合軍かまわず、攻撃する聖鍵遠征軍の前に戦場は大混乱となる。



その混戦のさなか、勇者と刻印王は一対一で魔力での勝負となっていた。



背後に街を背負い、なかば人質として取ることで勇者を牽制する刻印王に苦戦する勇者だったが、あらためて実力を発揮することで刻印王を押し返す。



白夜国の上空で戦う二人を突然の集団法術が襲う。



身体の自由を奪われ、墜落する刻印王と勇者をマスケット銃が更に襲う。



全て、親征してきた大主教の指示によるものだった。



鉄国の作戦により湿地帯へ流し込んだ油により火炎がめぐったことで、戦いは終結のときを迎える。



聖鍵遠征軍は白夜国を奪還し、その偉業を誇るとともに、更に魔族から聖骸を奪還することに気炎をあげる。



一方、南部諸王国も国が護られたことを喜ぶとともに、聖光教会の無差別虐殺に非をならす。更に、他国との連携をもって、(三国通商同盟を解散し)南部連合の樹立を宣言する。



瀕死の執事の手により辛うじて救われた勇者の一方、刻印王は斬首され、その両目を大主教に捧げることとなった。



魔王はマスケット銃に係る己の不手際を悔やみ、旅に出て奏楽子弟と知り合ったメイド姉は光の精霊の真実を追いながら己の無力さをかみしめていた。





いろいろな学術的な基盤を使って展開する物語のなかに、やや学芸会的な要素が入り込むのがご愛嬌だが、今回はそういった学芸会的なエンターテインメント要素を大きく取り入れたような展開。



物語自体は大きく動いているものの、細分化された各主要登場人物たち其々の物語はそれほど進んでいるようには見られない。



強いて言えば、光の精霊を巡る根源的な謎への序章がみられたというところが一番の進展か。



また、不気味な聖光教会の大主教の初登場が、更なる渾沌を予感させるのか。



前巻と同様に、危機・苦難を予感させながら次巻へ引っ張るラストです。



お奨め度:★★★☆☆



再読推奨:★★☆☆☆