Koukounyushi2013年、63冊目。湊かなえ『高校入試』



ドラマの小説化。



地元名門進学校の入試を舞台に、過去の受験での採点ミスを巡る因縁が復讐という形で学校を翻弄する話。








県立橘第一高校(通称一高)は地元の住民から進学校として幅広い認知を受け、その卒業生は誇りを持つ一方で、その他は肩身が狭い思いをする。



その一高で翌日の入学試験に向け、準備が進められる。



帰国子女で一高の教師となった春山杏子はその雰囲気に馴染めないが、一高を愛する一高OB・OGの教師らの指示に従い、準備を進める。



しかし、誰も入室できないはずの教室に「入試をぶっつぶす」との張り紙がなされたり、教師の携帯電話が覚えのない場所で発見されたりと、入学試験を前に不穏は空気が漂う。



一方、秘かにインターネット上に立ち上げられた掲示板にも「入試をぶっつぶす」ことが書き込まれる。



始まった入試ではピリピリした雰囲気のもと教師らが監督するが、掲示板には入試問題が書き込まれるなど、学校の知らないなかで問題は大きくなっていく。



最後の英語の試験では、回収したはずの携帯電話が鳴り響く。



携帯を所持したのは県会議員の娘。付き添った母親は学校の非をならし、ルール通りに失格にそようとする学校を牽制する。



これを横暴な同窓会会長沢村も支援し、校長は母親の主張を認めてしまう。沢村は更に携帯電話が鳴ったことで動揺を受けた他生徒の点数積み増しも要求する。



同教室では沢村の息子もまた受験していたのだ。



混乱のなか、採点が始まるが、英語の答案が1枚足らず、1枚白紙の答案用紙が見つかる。安直に白紙=未発見の答案用紙とする教師もいたが、未発見の答案の持ち主は他教科で抜群の成績を示しており白紙で出す意味がない。



そんななか、学校にかけつけた沢村は、失われたはずの答案用紙を見つけたとして持ち込む。



しかし、答案用紙に記された受験番号は、沢村の息子の番号。即ち、沢村の息子の答案が2枚になり、依然として1枚答案用紙がないことになる。



沢村が持ち込んだ答案用紙は満点、かつ筆跡から未発見の答案用紙であることがわかるが、何を言い出すかわからないだけに、沢村にそれを告げることはできない。



そんな学校でのドタバタさえも、掲示板には刻一刻と書き込まれていく。



学校でも、掲示板の存在に気付くが、如何ともし難い。



教師の機転で、学校に潜伏していた在校生を発見するが、彼女もまた詳しい事情を知らず、二股をかける教師への鬱憤を晴らすためだけに協力していただけだった。



この事件の裏には、一人の受験生の姿があった。



兄の一高不合格で、家庭が崩壊したが、その原因となった入試の不合格には学校側の不手際があったことを知った弟は、その復讐のために立ち上がったのだった。



そして・・・。





顔の見えるドラマと違って、これだけの登場人物(教師)が出てくると、名前だけで判断するのは大変。



かつ作者お得意の、それぞれのキャラクターの目線で語られるため、更に混乱をきたす。



もうちょっと少ないと、複数目線での事件深掘りになるんでしょうが、ここまでキレギレになると、断片的過ぎ、かつ情報量が多すぎて消化不良を起こしてしまいそうです。



また、そういったキレギレ感をなくそうとするあまりか、話の流れとして重複する部分が多いため、流れがやや悪いのが気になります。



その意味で、最後まで読むのは本当に疲れました。



お奨め度:★★☆☆☆



再読推奨:★★☆☆☆