ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資

世界一の投資家ウォーレン・バフェットの投資哲学、人生論、さらに経済や会計の知識がこのブログ一本で「あっ」と驚くほど簡単に習得できます!特にこれから米国株投資を始める初心者や投資入門者向けの情報が充実しています。


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ベリサインのワイドモートは将来的に崩れることがあるのか?

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    新バフェット銘柄「ベリサイン」の研究
  1. ベリサインが「新」バフェット銘柄である理由とは!?
  2. 債務超過に陥っているベリサインがバフェット銘柄だと見なせる理由
  3. ベリサインのワイドモートは将来的に崩れることがあるのか?

東条雅彦です。前回からの続きになります。バークシャーはベリサイン株を2012年から保有していて、もうかれこれ5年が経過します。その5年間で株価は35ドル(2012/12/14)から113ドル(2017/12/14)まで上昇しています。なんと3.2倍に増えて、大成功しています。しかし、なぜかほとんど話題には挙げられていません。

私はベリサインの投資については今までと違った財務的なアプローチがあった点において、大いに注目しています。

ROEの分母を無視して、分子だけで評価する


高ROEが続いているというのは消費者独占型企業かどうかを判定するのに、とてもわかりやすい指標でした。ただし、ベリサインのように、大量に自社株買いを行っている企業については、ROEがマイナスであることをむしろ、高く評価していかなければいけません。

財務的にチェックする場合は、1株あたり純利益(EPS)や1株あたり営業CFが上昇しているかどうかがポイントになります。ROEの分母である純資産は無視して、分子の利益のみを確認すると、次のように推移しています。

<ベリサイン 1株あたり営業CF・純利益(2007年~2016年)>

1株あたり
営業CF
増減率1株あたり
純利益
増減率
2007年2.129.1%-0.66-142.3%
2008年2.5318.9%-2.04209.9%
2009年2.16-14.7%1.36-166.7%
2010年1.25-42.2%4.83255.0%
2011年2.1169.1%0.90-81.4%
2012年3.5066.3%2.09132.8%
2013年4.3323.6%4.0795.1%
2014年5.0717.1%3.00-26.3%
2015年5.9216.7%3.4113.7%
2016年6.489.5%4.2725.4%
(単位:ドル)

ベリサインの営業CF、純利益とも上昇傾向です。特に成長株の場合、純利益よりも営業CFを中心に確認した方がより本業の実態が掴めます。

過去10年間の実績ではベリサインの1株あたり営業CFは年利13.21%のペースで上昇しています。もちろん、これは過去の話であって、未来は不明ですが、何らかの競争優位性があると考えられます。

突出しているキャッシュフローは何があったか確認しよう


ベリサインの営業CF、投資CF、財務CFの3つの流れを確認すると、以下の2つが突出した動きを示しています。

(1)2008年:財務CFの支出が急激に増えている
(2)2012年:投資CFの支出が急激に増えている

<ベリサイン 各キャッシュフローの推移(2006年~2016年)>

純利益営業CF投資CF財務CF現金
同等物
2007年-146,507473,537209,009188,6711,376,722
2008年-390,260484,03476,764-1,164,027789,068
2009年249,239395,191484,455-197,9941,477,166
2010年833,854215,206603,090-745,2741,559,628
2011年142,891335,901273,242-852,1981,313,349
2012年320,032537,630-1,442,353-277,752130,736
2013年544,450579,397-11,062-357,333339,223
2014年355,260600,949112,688-859,752191,608
2015年375,236651,482-496,899-117,778228,659
2016年440,645667,949-40,399-623,763231,945
(単位:1,000ドル)


(1)については、「自社株買い」が原因でした。そのため、特に気にすることはありません。次の(2)については今から確認します。

2012年に何があったのか?


2012年の投資CFがマイナス14.4億ドルに達しています。他の年に比べて、2012年の投資CFだけ金額の桁が1つも2つも違っており、明らかに異質です。こういう所は決算書を確認して、どの項目がいくら動いたのかを調べてみる必要があります。

<ベリサイン 投資CFの推移(2011年~2013年)>

2011年2012年2013年
有価証券の満期および
売却による収入
546,0061,234,1563,508,569
有価証券の購入-78,975-2,622,898-3,450,068
固定資産の購入-192,660-53,023-65,594
その他の投資活動-1,129-588-3,969
(合計)投資CF273,242-1,442,353-11,062
(単位:1,000ドル)

26億ドルも有価証券の購入で使っています。アニュアルレポートには「2012年に、当社は26億ドルの有価証券を購入した」と書かれているだけで、どの銘柄を購入したかは不明です。現在まで投資CFが大幅にプラスになっていないことから、他社の有価証券を長期保有している模様です。

投資CFには自社の事業に投資するパターンと他社の事業に投資するパターンの2種類がありますが、2012年の投資CFの拡大は後者でした。そして、ベリサインの投資CFを見てみると、プラスになっている年もあり、実はあまり自社の事業に対しては投資していません。

ベリサインの投資CFはちょっと変?


全ての企業は「本業の利益」を増やすために活動しています。キャッシュフロー計算書では、「本業の利益」は営業CFに表れます。本業の利益を伸ばすためには「投資」が必要です。そのため、多くの企業では「投資CFがマイナスになって営業CFがプラスになる」という状況になっています。

そして、営業CFと投資CFの合計(=「フリーキャッシュフロー」と呼ぶ)がプラスだった場合、株主還元を行って、財務CFがマイナスになります。

キャッシュフローの基本的な型は次のようになっています。

・営業CF プラス
・投資CF マイナス
・財務CF マイナス


ベリサインの投資CFの動きを見ていると、少し特殊です。プラスになっている年が多くて、マイナスになっていたとしても、2012年以外の年ではそれ程、大きくマイナスになっていません。比較的、動きの大きい2010年と2015年の詳細を念のために確認します。

<ベリサイン 投資CFの推移(2006年~2016年)>

投資CF
2007年209,009
2008年76,764
2009年484,455
2010年603,090
2011年273,242
2012年-1,442,353
2013年-11,062
2014年112,688
2015年-496,899
2016年-40,399
(単位:1,000ドル)

<2010年 ベリサイン投資CF(詳細)>

2010年
事業売却益1,162,306
有価証券の満期および
売却による収入
313,817
有価証券の購入-787,718
固定資産の購入-80,527
その他の投資活動-4,788
(合計)投資CF603,090
(単位:1,000ドル)

<2015年 ベリサイン投資CF(詳細)>

2015年
有価証券の満期
および売却による収入
2,767,027
有価証券の購入-3,219,329
固定資産の購入-40,656
その他の投資活動-3,941
(合計)投資CF-496,899
(単位:1,000ドル)

2010年は有価証券を購入するために、7.8億ドルを支出する一方で、事業売却益で11.6億ドルを得ています。それらを合計して、投資CFがプラス6億ドルになっています。

2015年は有価証券を購入するために、32.1億ドルを支出する一方で、有価証券の売却益で27.6億ドルを得ています。

それらを合計して、投資CFがマイナス4.9億ドルになっています。2012年の投資CFを確認していても、「有価証券の購入」の影響が大きく、ベリサインの投資CFはかなり特殊な動きになっています。

決算書の詳細項目は会社毎に異なっている


そもそも決算書の項目は会社毎によって異なっています。例えば、IBMの投資CFの項目は次のようになっています。

<IBM:投資CF(2016年)>

2016年
固定資産の取得による支出-3,567
固定資産の売却による収入424
ソフトウェアへの投資-583
投資有価証券の取得による支出-5,917
投資有価証券の売却による収入5,692
営業外収益-891
事業の取得-5,679
事業の譲渡-454
(合計)投資CF-10,976
(単位:百万ドル)

IBMはベリサインと違って、「支出」と「収入」を分けて記載しているため、その分、項目が多くなっています。また、「ソフトウェアへの投資」という項目があり、IBMらしさが出ています。

ベリサインの投資CFの項目と見比べると、両社の違いは歴然です。

<ベリサイン:投資CF(2016年)>

2016年
有価証券の満期
および売却による収入
3,817,899
有価証券の購入-3,691,057
固定資産の購入-26,574
無形資産の購入-143,000
その他の投資活動2,333
(合計)投資CF-40,399
(単位:1,000ドル)

2015年では「無形資産の購入」という項目はありませんでしたが、2016年には無形資産の購入で1.4億ドルを支出したため、この項目が追加されています。つまり、同じ会社であっても、決算書の項目はその年の動きによっても変化します。

ベリサインの2016年の投資CFを確認すると、相変わらず「有価証券の購入」に大半の金額を投入しています。ベリサインは固定資産や無形資産に対する投資が極端に少ない会社であることが伺えます。通常、自社の事業を強化する場合、固定資産や無形資産に資金を投入していき、来期以降の収益を増やそうとするはずです。

ベリサインはワイドモートを持っている可能性が高い!


ベリサインは投資資金を固定資産や無形資産にほとんど充てていません。

<ベリサイン 投資CFの推移(2014年~2016年)>

2014年2015年2016年
有価証券の満期
および売却による収入
3,428,6592,767,0273,817,899
有価証券の購入-3,277,096-3,219,329-3,691,057
固定資産の購入-39,327-40,656-26,574
無形資産の購入00-143,000
その他の投資活動452-3,9412,333
(合計)投資CF112,688-496,899-40,399
(単位:1,000ドル)

このことを裏返すと、自社のビジネスにはそれ程、投資しなくても利益を出せる仕組みを持っていると推測できます。ベリサインはバフェット流投資でよく耳にする、いわゆる「ワイドモート」を持っているのでしょう。

ワイドモート(Wide Moat)とは「経済的な堀」や「競争上の優位性」を意味します。

<参考>

Wide
「幅の広い、幅広の、幅が…の、(面積が)広い、広大な、広々とした、(範囲の)広い、広汎な、多方面の、大きく開いた」

Moat
「(都市・城壁の周囲に掘られた)堀」

ベリサインのコアビジネスは、ネーミングサービス部門です。同社はインターネットの最も重要なトップレベルドメインの2つ、.comと.netのドメインを管理、運用しています。

ざっくりとした言い方をすると、インターネットに接続する端末が増えて、「.com」や「.net」のサイトが増えれば増える程、ベリサインの収益は上向いていくという流れになっているのです。これはかなり堀の深い事業だと思います。

ベリサインのワイドモートが崩れるリスクはないのか?


ベリサインの株価が2014年初頭に大きく下落したことがありました。

<ベリサイン 株価(2013年1月1日~2014年12月31日)>


2014年3月18日に、モーニングスター社がこのベリサインの株価下落について報じています。

米ベリサイン、投資判断引き下げで株価急落(2014/03/18-モーニングスター社)

米電子認証サービス大手ベリサインは米電気通信情報局(NTIA)が先週末、主要なインターネットのドメイン名機能の監督権限を15年9月までに放棄すると発表したのを受けて、米投資会社のコーワン・アンド・カンパニーがベリサインの投資判断を「アウトパフォーム」から「マーケットパフォーム」(中立)へ引き下げ、また、予想適正株価も63ドルから49ドルに引き下げた。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチが17日に伝えた。

コーワンは、政府のドメイン監視がなくなれば、「.com」や「.net」のドメイン名を独占的に管理しているベリサインは、今後、これら2つのドメイン名の使用を従来と同じ条件で更新することが困難になり、収益に悪影響が及ぶリスクを投資判断の引き下げの理由に挙げている。

ベリサインの株価は17日、5.78%安の51.68ドルと、急落している。

このニュースを読むと、一見、ベリサインの独占性に影響が出るような気がしますが、結果的に業績への影響はありませんでした。記事には2015年9月までにドメイン名の管理権限を放棄すると書かれていますが、実際には1年延長されて、2016年9月に米国政府はインターネットのドメイン名機能の監督権限を破棄しています。2016年10月以降はインターネットの監督権限が米国政府ではなく「マルチステークホルダー体制」に移管しています。

上記のモーニングスター社のニュースでは、「これら2つのドメイン名の使用を従来と同じ条件で更新することが困難になる」という可能性が指摘されていますが、結局、杞憂に終わっています。インターネットの監督体制が変わっても以前と同じ条件で契約が更新され、ベリサインの業績には何の影響もありませんでした。

ベリサインはDDoS攻撃を防ぐセキュリティー技術も高く評価されており、おそらく今後もルートサーバーの管理者としての地位を維持していくでしょう。

<ルートサーバー>
頭文字IPv4アドレス管理者
A198.41.0.4アメリカ合衆国 VeriSign
B199.9.14.201アメリカ合衆国 南カリフォルニア大学情報科学研究所
C192.33.4.12アメリカ合衆国 Cogent Communications
D199.7.91.13アメリカ合衆国 メリーランド大学カレッジパーク校
E192.203.230.10アメリカ合衆国 アメリカ航空宇宙局
F192.5.5.241アメリカ合衆国 Internet Systems Consortium
G192.112.36.4アメリカ合衆国 アメリカ国防情報システム局
H198.97.190.53アメリカ合衆国 アメリカ陸軍研究所
I192.36.148.17スウェーデンAutonomica
J192.58.128.30アメリカ合衆国 VeriSign
K193.0.14.129オランダ RIPE NCC
L199.7.83.42アメリカ合衆国 ICANN
M202.12.27.33日本 WIDEプロジェクト

本稿のまとめ


ベリサインは本業への投資がほとんど必要がなく、インターネットの普及度合いによって安定的に業績が伸びていく企業です。世界に13台しかないルートサーバーのうちの2台がベリサインが管理しており、その地位はゆるぎないものになっています。

しかしながら、インターネットの管理体制や監督体制に変化が生じたり、インターネットの根本的な仕組みが変わったりすると、ベリサインの業績に影響が出る可能性はあります。ここをどう捉えるかが投資判断の分かれ目だと思います。

おそらくコームズ(またはウェシュラー)はインターネットの根幹的な仕組みや技術的な部分も理解した上で長期保有を継続しているものと思われます。ほとんど話題にはならず、世間的にも注目されていませんが、ベリサインは隠れたバフェット銘柄だと言えるでしょう。

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