人生を舐めると見えないパンチが
クロスカウンターになって突き刺さる
気が付いた時はへなへなとダウンしている
今年は強烈なパンチを浴びちまったなあ
いっときは二度と立てないと思ったけど
カウントナインでやっとこさロープにすがっただけ
目も良く見えないし足もガクガクさ
心臓はパンクしそうにバクバク言っている
今年は見事にやられちまった
病院で看護婦にチンポをつかまれた時
試合終了のゴングが除夜の鐘になって響いた
煩悩の数は108個どころじゃなかったってわけだ
もう煩悩は数えきれないくらいあるから
チンポをつかまれたくらいで消えはしない
一回地獄の底まで堕ちきらないと
煩悩の海にまるごと呑み込まれてしまう
2019年はやられっぱなしだった
2019年は負けっぱなしだった
ハイリゲンシュッタトの遺書は書かなかったけれど
第九の第一楽章の霧のように下降する音程に
そこから無限に始まっていくきっかけを
つかみ損ねてフラフラと酔っぱらった寅さんみたいに
マトモな物は一つとしてまとまらず
柴又帝釈天の境内でひっくり返っていた
通り過ぎる春の空
じりじり焼き尽くす夏の空
浮気心の秋の空
母ちゃんも倒れる冬の空
すべてに見放されたような呆けた心境で
あの空に昇るんだ!と
神さまの恩寵はまだ降りてくるぞという呼び声も
聞こえなくなった耳には響いてこなかったなあ
さあ、歌おう!このような歌ではなく
来年はとてつもなくいいことがあって
この流刑地からおさらばできるかと
失われた時を求めてを読みながら思いを巡らす
失われた時はたぶん鮮明にくっきりと
真っ白なキャンバスに描かれるセルリアンブルーの形態のように
見知らぬ繊細で重たいパンチになって
僕の全身をもう一度染め直してくれるだろう