私が初めて法律事務所を訪問したのは、実は相談者としてでした。
当時、私は司法試験に受かった直後のこと。得意の絶頂にある中、いきなり冷や水を浴びせかけられました。親族の経営する会社が倒産してしまったのです。
私の母が消費者金融の保証人になっていました。その額およそ600万円。
試験に受かっているとはいえ実務的な経験は皆無です。震える母を励ましながら法律事務所を訪問したものの、私自身、どうしたらよいか途方に暮れていました。
結局、相談だけで終わったのですが、その時対応してくれた親切で頼りがいのある先生のことは忘れられません。事務の方も落ち着いた気品のある応接で不安を取り除いてくれました。
私への毎月の仕送りもありましたから、家計は決して豊かでありません。文字どおり手に握りしめて持って行った5000円の記念硬貨を相談料に充てました。その先生は笑って受けてくださいました。
この経験がなければ私は弁護士にならず別の選択をしていたかもしれません。
あれから早や14年以上経ちますが、今でも時折思い出す一コマです。
