裁判官と弁護士は同じ法律家ですから、基本的には同じような資質が必要です。法の深く正確な理解、事実認定能力、正義感などですね。
ただ、裁判官は最終的な判断権者であるのに対し、弁護士は当事者の代弁者ですから、やや異なった能力が要求されます。
その一つが筋読み力です。
弁護士は基本的に結論がどうなるか分からない中で受任(受忍?)します。したがって、乏しい判断材料の中で、事件の基本構造がどのようなもので、どのような解決が見込まれる(あるいは望ましい)かを速やかに判断する必要に迫られるのです。
その上で、事件解決の戦略を組み立てていくことになるのですが、最初の筋読みを誤ってしまうと、最悪。後で大変苦労することになります…。
瀬木比呂志判事が、「弁護士の中には、主張立証は必ずしもそれほど緻密ではないけれども事件の選別にかけては抜群というタイプの方がある。このような人は筋のよい事件をうまく選別するので、訴訟活動は若い弁護士におおむねお任せでも、なお勝訴率が高い。反対に、緻密な訴訟活動を行うけれども右のような見通しについてはあまり感覚がよくなく、時として到底勝てない事案で強硬な主張をされる弁護士もいる」(『民事訴訟実務と制度の焦点―実務家、研究者、法科大学院生と市民のために』(判例タイムズ社、平成18年))とおっしゃっているのも同じ趣旨だと思います。
煎じ詰めれば、「健全な常識・良識に即して事件の顔を見分けられるかどうか」に尽きるのですが、これがなかなかムツカシイ…。文字どおり、言うは易く行うは難し、です。
さて、このような筋読み力を身に付けるにはもちろん経験も重要ですが、天性の部分が大きいように思います。
私の元ボスのT先生は私の知る限り最も筋読みの上手い弁護士でした。事件の顔を瞬時に把握し、明快な判断を下す。そして、その判断は大抵「当たり」なのです。
随分と勉強させてもらいましたが、不肖の弟子はなお道半ばです。
これからも日々精進です。