意識って、
あまり気にしないでいましたけど、
具体的にどんな仕組みになっているのかを
2人の著名な神経科学者が意見を戦わせながら
紹介してくれていました。
(長いので8分割しています)

クリストフ・コッホ
スーザン・グリーンフィールドの
お2人による仮説を紹介した記事です。

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●私たちが主観的に世界を経験するとき

 脳では何が起こっているのか




脳内のニューロン(神経細胞)の活動と、
私たちの意識とは、
どのような関係があるのだろうか?

ニューロンの活動は、
客観的に外部から観察して
電気化学反応として記述できる。

一方、
意識は、主観的で、
他人に中身を伝達することすら困難だ。

いったい、科学は、
意識がどのように
物質である脳から生まれるのかを
明らかにできるのだろうか?




たしかに、
これまで科学は、
ビッグバンが起きてから
宇宙で何が起こってきたかに説明を与えてきたし、
脳科学においても目覚ましい理解が進み、
脳内で起きている生化学反応の詳細も
明らかになってきた。

だが、
主観的な意識という経験が
どのように脳から生まれてくるのかについては、
答えがあるのかすら定かではない。


私たち2人は、
神経科学者として生涯をかけ、
この意識の問題を解こうと試みている。

私たちの説にはさまざまな共通点がある。

一口に「意識の問題」という時でも、
私たちは「どの」意識の問題について話すのかを
はっきりとさせるべきだ、
という点で特に意見が一致している。

少なくとも、
以下の3つの問題は明確に区別をつけるべきだ。




1つ目は、
自分で自分に意識があるということに
気づくというのはいったいどういうことなのか、
なぜそのようなことが可能なのか、
という「自意識」の問題。

2つ目は、
人に意識がある時、
いま現在、
いったいその人の意識には
何がのぼっているのか、
その意識の内容は
どのような脳の活動から生まれてくるのか、
という「意識の内容」の問題。

3つ目は、
「意識と無意識の問題」。
昏睡状態、深い睡眠、麻酔下では
意識が「ない」が、
起きている時には意識が「ある」。
この覚醒状態は
どのような脳のプロセスによって
支えられているのか。




他にもあるさまざまな意識にまつわる現象は
それぞれ非常に難しい問題で、

将来的に脳科学が答えていくべきことである。


これらの意識の問題を解くための糸口は
みつかっているのだろうか?

神経科学者たちによる脳の研究は
まだまだ日が浅く、
ニューロンの電気化学的活動から
意識が「どのように」生まれるかを
説明できるまでにはほど遠い。

そういう状況ではあるものの、
意識の内容の問題に関しては、
実際に進歩がみられる
実践的で期待の持てるアプローチがある。

それは、ある特定の意識の内容が
変化するにつれて
それとともに変化するような神経活動、
すなわち
「Neural Correlates of Consciousness(NCC)」を
見つけることに的を絞るという研究である。

例えば、
私たちが犬を見て、
それが意識にのぼるときには、
どの脳部位にあるどのニューロンが
活動しているのか?

突然悲しい気持ちに襲われたとき、
脳内では何が起こっているのか?

私たち2人は、
主観的な意識と対応して変化する
NCCを見つけようというアプローチを
とっているという点では一致しているが、
実際の研究手法と考え方は
大きく異なっている。


2006年夏、
オックスフォード大学で、
マインド・サイエンス財団の後援により
私たちは討論会を行った。

そこで激論を交わしていくうちに、
NCCに関しての考えに、
私たちの間で
どれだけズレがあるかが
どんどんと明らかになっていった。

その討論会以来、
私たちはお互いの主張を深く掘り下げ、
磨いてきた。

その結果が今回のこの原稿となった。


意見が対立しているとはいっても、

私たちは神経科学者であり、
これら意見は単なる哲学的な思索を
もとにした推測ではない。

大量の神経科学的データ、
臨床データ、
そして心理学的なデータをもとにして、
厳格に科学的考察を重ねてきた上で、
お互いの結論に至っていることに
注意していただきたい。



クリストフ・コッホ
Christof Koch

視覚注意力と意識のニューロン基礎の研究を行ってきた。
趣味はハイキングやロッククライミング



■コッホの理論:
ある特定の意識経験が生じるためには、
特定の脳領域にのみ見つかる特殊なニューロン集団が、
特定の方式で発火しなければならない



スーザン・グリーンフィールド
Susan Greenfield

脳と意識の関係以外にも、
脳の老化現象にかかわる
メカニズムなども研究している。
趣味はスカッシュとダンス。



■グリーンフィールドの理論:
ある特定の意識験が変化するときには、
脳全体に位置しているニューロンが
同期して発火した時に、
アセンブリ(協調的なニューロン集合体)に
取り込まれていく。

そのアセンブリの寿命は短く、
つくられては消えていき、
さまざまなニューロンがアセンブリに
取り込まれては消えていく。

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哲学的になりがちな問題を
科学的アプローチで
どのように説明されるのか
興味深いです。