空の飛び方 | 夢から醒めない翼

夢から醒めない翼

日々のささやかな暮らしを綴っています。

あの時 私は道に迷っていた



晴天の霹靂

突然 背中に生えた翼をもがれて

細く長く

先も見えない道の端っこで



右も左もわからず

どうすることもできず

泣くことさえできず

うずくまっていた



世界中の闇という闇を

すべてつめこんだような

深く暗い闇の中で

ヒカリというものが存在する事すら忘れかけ



それでも手探りで 

見えない目をこすりながら

永遠の闇には落ちまいと

這いつくばっていた時



真っ暗な空が突然開け

あなたが現れた



あなたは泥にまみれた私の手を取り

自分の胸に刺さった矢で血にまみれた私の髪を撫で

そっと 私の背中に羽を授けた




『自分の胸に刺さった矢は、自分で抜くんだ。

 俺が授けたこの羽も、今はまだ飛べない。

 お前はこれから、飛び方を探すんだ。

 俺はいつも、お前を見ている。

 お前は、必ずもう一度飛べる。』



あなたの背中には 光輪が見えた




そして月日は流れ

私は今 立っている



胸に刺さった矢を抜き

その傷の手当てをし

血にまみれた髪と身体を洗い

服を着替え

道の泥を洗って



しっかりと

自分の足で立っている



後ろを振り返れば

闇に沈んでいた日々は遥か遠く



1日1日 私が磨き上げた道だけが

轍を残している



傷跡はまだ少し痛むけれど

背中の羽は飛びたいと

叫んでいる



あなたは一足先に

天高く翔けて

明日への夢を描いてる



私を振り返って

あなたは笑顔でこう言う





『さあ、もうここまで一人で来れるだろ』





私は足に力を入れて

手を天高く上げた



私の背中の羽が舞い

私は空に浮かんだ








あなたの背中を見上げ

今日まで来た



これからは

あなたと一緒に飛べるんだ



永遠に終わることのない希望の中

進む途は分かれども



ずっと一緒に飛べるんだ



空は一つに繋がっている



あなたの背中が教えてくれた

空の飛び方



あなたがくれた勇気



私はもう 何も恐れない



私の背中の羽だけが知っている

あなたと出会った日

私の中の

全ての闇が明ける気配がしたこと



そして

私はもう一人で飛べる



嵐の中も

凍える冬の吹雪の中も



私は一人で飛んで行ける



どこまでも自由に

どこまでも望むまま



それでも迷いそうになる時

あなたの背中の羽は

太陽の光にキラキラと光って

私の道標となってくれる



楽園は自分の心の中にある

自分の立つこの世界にあるんだ



私はもう 大切なものを

決して見失ったりしない




『俺が授けたように見えた翼は

 実際は俺が授けたものじゃない。

 お前には見えなかっただけで

 お前が、自分で持っていたものだ。』



あなたは私の羽を見てそう言った



ずっと

見守っていてくれたあなたに

私が出来ることがあるとするなら

自分の航海を良きものにすること



溢れるあなたへの感謝と共に

私は飛び立つよ

あなたの笑顔を胸に

未来に駆ける翼で




新しい今日へ




新しい夜明けへ