私が生まれた家は、わらぶき屋根の上に苔や草が生えていた。
家壁は粘土と藁を混ぜたものを全体に塗ってある泥壁であった。
入口から家に入ると土間があり、長い年月で踏み固められた事が分かる。
室に入る登り1段は毎日綺麗に水拭きをしている母の姿が浮かぶ。
もちろん室の中も板の間の室も黒光りして綺麗なのだ。
その室のちょっと左に寄った所に囲炉裏があり、朝はその囲炉裏で麦飯を大きなお釜で炊くのであった。
囲炉裏の中央に祖父が1日ずーと座っているのだ。
煙管でタバコを吸ってはゴホゴホと咳をしているのだ。
時々「お前ら俺のメガネどこさやった」と大声で叫ぶのだ。
私は5才くらいだったが負けずに「ジジの頭にのっている。この前もそうだったよ!」と言い返すのだった。
その頃の楽しみは桑の実やグミ、グスベリー、野イチゴ、秋は山ぶどう、冬はオンコの赤い実を摘んで食べていました。
山菜もよくとれて、セリ、ワラビ、フキ、コゴミなど...
秋は美味しいキノコも沢山ありました。
水は山の湧き水で泉のように湧き上がっていました。
とても綺麗な水で冷たくて、水道水よりも美味しかったです。
風呂は五右衛門風呂でした。
風呂のない家もあり、家族でもらい湯に来ていた人もいました。
決して裕福ではない生活でしたが、両親に愛され育ちました。
私は時々あの頃に戻りたいと思う時があります。
懐かしく幸せだった日々に。
ちっこ
