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前回は、5大栄養素のうち、炭水化物、脂質、タンパク質の重要性について説明しました。今回は、残りの2つの栄養素である「ビタミンとミネラル」について説明したいと思います。前回の内容の炭水化物、脂質、タンパク質は、どれも分解されエネルギーになるのですが、今回のビタミンとミネラルは、どちらもそれ自体は分解されず、酵素の反応に必要であるという共通点があります(補酵素として働く)。

 

まずはじめにビタミンの話です。ビタミンという言葉はどこかで何度も聞かれたことがあると思いますが、色んな種類が多く、良く分からないのではないでしょうか。まずビタミンの種類をまとめてみます。

 

ビタミンには脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンがあります。脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類があります。水溶性ビタミンは、ビタミンCと、8種類のビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)の計9種類があります。

 

脂溶性ビタミン

ビタミンA 視力や皮膚、粘膜を維持。レバー、卵黄、にんじん、うなぎなど

ビタミンD カルシウム吸収、骨の健康、免疫調整。イワシ、カツオ、鮭など

ビタミンE 抗酸化作用や血行促進作用。玉子、アーモンド、オリーブオイルなど

ビタミンK 血液凝固、骨の健康。ブロッコリー、ほうれん草、納豆など

 

水溶性ビタミン

ビタミンC コラーゲン合成、抗酸化作用、免疫機能。ブロッコリー、レモン、いちごなど

ビタミンB1(チアミン) 糖質代謝、神経機能。豚肉、赤身肉、穀物、ナッツ、大豆など

ビタミンB2(リボフラビン) 脂質代謝、皮膚・粘膜の維持。レバー、うなぎ、玉子など

ビタミンB6(ピリドキシン) タンパク質代謝や免疫機能。赤身肉、豚肉、マグロなど

ビタミンB12(コバラミン) 赤血球の産生、神経機能など。レバー、アサリ、シジミなど

ナイアシン(ビタミンB3) エネルギー産生、神経伝達物質合成など。鶏肉、カツオなど

パントテン酸(ビタミンB5) エネルギー代謝、抗ストレス作用。レバー、鶏肉など

葉酸(ビタミンB9) DNAや赤血球の生産。胎児の成長。レバー、ブロッコリーなど

ビオチン(ビタミンB7) 脂質、糖質、タンパク質代謝。抗炎症。レバー、卵黄など

 

脂溶性ビタミンは、体に蓄積されるので、過剰に摂取しないように注意が必要になります。逆に水溶性ビタミンは、汗や尿で失われてしまうため、毎食、バランス良く摂る必要があります。ビタミンDは紫外線(日光)を浴びることで体内で合成することができます。またビタミンB2、B6とナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンKは、腸内細菌によって十分ではありませんが合成することが可能になります。逆にビタミンCとビタミンB12は体内で完全に合成することができず、食事からの摂取が必須になります。

 

ビタミンBが、なぜ何種類もあるかですが、これは代謝に関わる水溶性ビタミンとして発見された際、複合体として見付かり、1つのビタミンだけでなく共同してお互いに助け合って働くことが分かったため「ビタミンB群」という呼び方をされるようになりました。またビタミンBは、番号が飛び飛びになっていますが、例えば、ビタミンB4はコリン、ビタミンB8はイノシトール、ビタミンB10はパラアミノ安息香酸(PABA)、ビタミンB11はビタミンB9(葉酸)の類似物質を指していたそうですが、現在ではこの4つはビタミンの性質ではないことが分かり、欠番となっています。

 

ビタミンB群は、糖質、脂質、タンパク質の代謝や神経伝達物質の合成、神経機能、免疫の調整などに関わり、またビタミンAは制御性T細胞の誘導や粘液の生成を通して、腸内でのIgA抗体の産生に必須であることが分かっています。またビタミンDも、抗炎症作用や抗菌ペプチドを合成することから、今回解説している免疫や脳腸相関の中ではとても重要なビタミンだと言えます。ビタミンB群は、玉子、肉、魚に多く含まれますが、ビタミンA、D、B群を総合的に摂ることを考えると、レバー、マグロ、鮭、卵黄、鶏肉、たらこ、ナッツ類、きのこなどが候補として考えられます。ビタミンB群を多く含む食品は、ほぼタンパク質が多く含まれるため、タンパク質が不足している方は、ほぼビタミンB群も不足していると言われています。ベジタリアンや、発達特性で食べ物の偏食が激しい方は、これらのビタミンが摂れずに、かなり健康状態に支障が出てしまうと考えてください。ビタミンB群は、8種類が全て入ったサプリとして、1ヶ月250円ほどで販売されていますので、タンパク質があまり摂れていないと感じる方は、特に検討ください。

 

続いては、ミネラルについての解説です。人体を構成する元素の中で、炭素、酸素、窒素、水素を除いた元素をミネラルと言います。ミネラルの中には、ナトリウムやカリウム、塩素、リン、カルシウム、硫黄など様々な元素があります。今回は、その中でも鉄、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウムの5つについて解説したいと思います。ミネラルはビタミンと同様、それ自体は分解されず、補酵素として酵素のサポートをする物が多いです。そして体内で作り出すことができないため、食事から摂取しなければいけません。

 

まず鉄です。鉄と言えば、貧血というくらい有名な元素です。赤血球の本体であるヘモグロビンの主成分は鉄であり、鉄が足りない貧血を鉄欠乏性貧血と言いますが、赤い血液の細胞である赤血球が、鉄が足りないことで少なくなったり、色素が薄くなったりする状態です。この状態では、倦怠感や動悸、息切れ、呼吸苦などが強くなり、かなり体調不良になります。

 

鉄は、血液中では、トランスフェリンというタンパク質に結合して存在していますが、いわゆるこの「血清鉄」という検査値は、炎症などがあると変動しやすいのが特徴です。血清鉄が血液中に存在する鉄分で、それとは別に、肝臓や脾臓などに貯蔵した鉄分の指標として、「フェリチン」という検査値があります。鉄が不足しているかどうかを調べるには、実は、血清鉄ではなく、フェリチンの方が重要になってきます。鉄は良く、お金に例えられるのですが、財布のお金を血清鉄、銀行の口座にある預金をフェリチンと考えてください。いくら財布に沢山お金が入っていても、銀行の口座に預金が無ければ、余裕があるとは言えませんし、逆に、財布にお金が少なくても、銀行の口座にしっかり預金があれば安心ということになります。

 

鉄分が不足すると、フェリチン→血清鉄→ヘモグロビン(赤血球の中の色素)の順に下がっていきます。つまり、鉄欠乏性貧血のように、とても鉄分が少ない状態だと、最後のヘモグロビンまで下がった状態になり分かりやすいということになるのですが、問題は、フェリチンは低いけど、血清鉄やヘモグロビンまでは下がっていないということが良くあるのです。医療機関で血液検査をする場合は、ヘモグロビンはほとんどの場合検査をされ、血清鉄もそれなりの医療機関で調べると思います。ところが、フェリチンまで調べる施設は少なく、本当はフェリチンが下がっているのに調べていないため、血清鉄もヘモグロビンも正常だから健康ですね、と言われることが多いのです。

 

こういう、貧血はないのに、フェリチンが下がった状態を「隠れ貧血(潜在性貧血)」と言います。貧血症状までは出ないのですが、疲労感や眠気などの症状が出るのです。

 

そしてフェリチンの話をする際に、もう1つ厄介な話があります。それは検査会社によるフェリチンの基準値なのです。男子のフェリチンの基準値は、大体、40〜340ng/mLくらいとされます。しかし女子では、4〜120ng/mLくらいとされています。では、女子でフェリチンが20ng/mLだった場合は、「隠れ貧血ではない」のか?ということになるのですが、これはやはり女子も男子と同様、40ng/mLくらいはないといけないと考えるべきで、基準値では異常はないけど、隠れ貧血があり、鉄剤を内服した方が良いですねと判断するべきなのです。

 

ではなぜ女子は男子より基準値が低く設定されているかなのですが、これは検査会社に聞いたことがあります。基準値を設定する際に、沢山の人数の血液を集め、そこから標準サンプルを作るのですが、女性は生理があるため、出血のためほとんどの人が鉄分が少ないはずなのです。ところがそのような人も、貧血と診断されていないため、「正常」と評価されてしまい、結果として、女性の基準値がこんなに低く設定されることとなってしまいました。外国では、女性も男性と同じ基準値を使っているとされ、日本の基準値はおかしいと考えられます。日本の医師や研究者も、女性のフェリチンの基準値は男性と同じ基準で(むしろ高く設定すべきという人もいます)考えないといけないと言われています。外来でも採血前に、まぶたの裏をチェックして、まぶたが白くなってないか評価するのですが、フェリチンが下がっている子は、血清鉄やヘモグロビンが正常でも、まぶたの裏は白く見えるので、臨床的にも、この低く見積もった基準値はおかしいと考えられます。

 

当院では、フェリチンが40ng/mLを下回った子に対して、鉄剤の内服を行っています。起立性調節障害の初診時に行う検査で、およそ60%の子にフェリチンの低下が見られました。改めてまとめてみますと、とても多い数と思いました。フェリチンが下がった子に対し、大体3ヶ月を目安に内服を続け、再度、血液検査でフェリチンが増えたかを再評価しました。ほとんどの子はそれで回復するのですが、ほとんど増加が見られない子がいたり、一度、回復した後、またすぐに低下してしまう子がいました。鼻血や生理の出血が極端に多い場合はそれが原因の可能性がありますが、そうでない子は、リーキーガットをはじめとする慢性炎症が遷延しているか、タンパク質が極端に少ない可能性があるかも知れません。腸の状態を良くしたり、遷延している慢性炎症を治療したり、タンパク質をしっかり摂取する。そして前回説明したように、鉄の吸収を高めるためにビタミンCをしっかり摂取することが改善に繋がります。

 

またフェリチン鉄が下がると、腸バリア機能が悪くなるとともに、分泌型IgA抗体が低下するため、体内で炎症が悪化することになります。炎症が悪化すると、鉄の消費が増え、腸からの吸収が減ってしまうため、更に分泌型IgA抗体が減ってしまい、どんどん悪循環となってしまいます。そこで、鉄を補給するだけでなく、慢性炎症を治し、腸の状態を良くする、そして抗体の産生を増やすためにタンパク質の摂取をしっかり行うという、全てのことが大切になります(この内容がこの全10回のブログの一番大事な内容になります)。

 

しかし鉄の補給に関して注意点があります。フェリチンの低下を血液検査で確認せず、自己判断で鉄のサプリを内服される方がいます。そんなに多量ではないため、大きな問題にはならないかも知れませんが、ダラダラと長期的に内服するのは良くありません。そしてSIFOがある場合は、鉄剤の内服をすると、鉄が真菌(カビ)の餌になってしまい、逆にSIFOを悪化させる可能性があるため、慎重に内服を行うべきです。また鉄剤やサプリは、コーヒーや紅茶、お茶に含まれるタンニンにより吸収が悪くなりますので、これらの飲み物と一緒に飲まないようにしましょう。

 

鉄を食事で摂る場合は、レバー、あさり、しじみ、ほうれん草、ひじきなどが挙げられます。なかなか食事として毎日摂りにくい物ばかりですが、なるべく意識するようにしてください。

 

これまでは鉄の説明をしましたが、次に亜鉛の説明に移ります。

 

亜鉛と、この後に説明するマグネシウムは、体の様々な機能を行う酵素の補酵素として最も多く使われるミネラルです。亜鉛は、細胞分裂やDNA、タンパク質の合成、免疫機能の調整、味覚や嗅覚の維持、生殖機能のサポートなど体の成長と維持に不可欠なミネラルになり、不足すると、成長障害や味覚障害、免疫力低下など、様々な症状が出ます。腸の粘膜を修復するためにも重要な役割を持ちます。

 

鉄はヘモグロビンの主成分と説明しましたが、亜鉛は赤血球の増殖に関わり、亜鉛が不足している状態でいくら鉄を補給しても鉄不足は改善しない場合もあります。また亜鉛を過剰摂取すると、鉄や銅の吸収が妨げられ。逆に鉄を過剰摂取すると、亜鉛の利用を阻害するため、鉄と亜鉛はバランス良く摂ることが重要になります。

 

亜鉛も血液検査で低下を確認し、低下がある場合に、亜鉛の内服薬やサプリメントを内服することになります。食品では、牡蠣、レバー、赤身肉、煮干し、卵黄などが多く含まれるため、これらの摂取を心掛けてください。

 

次は銅についてです。銅も酵素の補酵素として働きますが、鉄の代謝をサポートすることで貧血を予防するとともに、コラーゲンを作って骨や血管を強化し、活性酸素の除去や免疫力を向上させるなどの役割があります、一般的に遺伝的に問題なければ、後天的に銅が欠乏することは稀であり、銅の内服薬を飲むということはほぼないと思われます。銅を多く含む食品としては、あまり意識はしなくて良いと思われますが、レバー、牡蠣、イカやタコ、ナッツ類、大豆製品が挙げられます。

 

4番目はカルシウムです。カルシウムはご存知の通り、99%が骨や歯の成分です。不足すると骨や歯が弱くなり、将来、骨粗鬆症のリスクが高くなります。普段からカルシウムをしっかり摂るとともに、日光をしっかり浴び、骨を作るビタミンDを多く体内で作るように心掛けてください。残りの!%は、血液や筋肉に存在し、神経細胞間の情報伝達を助け、イライラや興奮を抑える効果があります。また筋肉の動きや血液の凝固などにも関わるため、とても重要なミネラルと言えます。カルシウムを補給しようとすると、牛乳を沢山飲むことをまず思い付くと思います。しかし牛乳を過度に飲むと、鉄分の吸収が阻害され鉄不足になったり、カルシウムのサプリメントは、マグネシウムのバランスを崩すと言われています。カルシウムの補給には、小魚の煮干しや干しエビを粉砕し、料理に使うのが効果的と言われています。

 

最後はマグネシウムです。マグネシウムは、カルシウムと同様に、骨や歯を構成する成分として重要なのですが、亜鉛とともに、体内の補酵素で最も多く使われるミネラルの1つです。筋肉の運動やエネルギー産生、神経伝達の調整、血圧の安定化などに関わります。マグネシウムやカルシウムが少なくなると、こむら返りの原因にもなります。通常は、医療機関での血液検査で、マグネシウムまで検査されることは稀なので、減少しているかを気付くことは滅多にありません。こむら返りやまぶたが痙攣する、肩こり、疲労、不眠、不安、イライラが強い場合は、一度、マグネシウムの測定をするのも良いかも知れません。低下していた場合は、ピーナッツ、ほうれん草、豆類などの摂取が良いです。

 

逆にマグネシウムが成分の薬としては、酸化マグネシウムやマグミットという便秘薬があります。これらの薬を長期的に内服すると、高マグネシウム血症となり、筋力低下や口が渇く、血圧が下がる、眠気や倦怠感が強くなるなどの症状が見られるため、便秘薬を長期的に常用している場合は注意が必要です。

 

今回、前回のブログで、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルの重要性を説明しました。どれかに偏るのは良くなく、必要な物をしっかり摂り、バランスが重要となります。ちなみに、バランス栄養食で有名なカ◯リーメイトは、確かにほとんど全ての栄養素がバランス良く配合されているそうです。しかしタンパク質、食物繊維、鉄分などのミネラルが不足し、カロリーも十分でないため、筋肉量が低下し、基礎代謝が落ち、結果的に太りやすい体質になるため、危険ですので、そのようなことはしないようにしてください(!?)。次回は、全10回のブログのいよいよ最後になります。これまでの内容を総合し、起立性調節障害をはじめとする病気の治療にどのようなことをすれば良いのかをまとめたいと思います。よろしくお願いします!